プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会

【イベントレポート】インボイスとやらが話題ですが、何をどうしたらいいのか教えてください

2021年10月28日(木)に、会員の皆様からの要望が多かったインボイス制度をテーマに ランチタイムウェビナーを開催いたしました!
1,000名近い方のお申込みをいただき、フリーランスの皆さんの関心の高さを感じました!

本イベントレポートとは別に、ケーススタディもふまえた分かりやすい解説をフリーランス協会のオウンドメディア「フリパラ」でもご紹介していますので、併せてお読みください。

また、フリーランス協会では、今後もインボイス制度の対策や留意点などを解説するセミナー開催や情報発信を続けてまいります。ぜひ無料会員登録して、最新情報をキャッチアップしてくださいね。

はじめに フリーランス協会/平田麻莉

冒頭は、フリーランス協会代表理事の平田より、「フリーランスの消費税の転嫁の実態や請求業務に関する実態調査」の調査結果を紹介しつつ、次のような話がありました。

「インボイス制度に反対する声もあると思うが、残念ながら軽減税率の導入が決まった際にインボイス制度の導入も決まってしまった。当時からこういった可能性に気づいていれば、軽減税率に反対すれば良かったのかもしれないが、既に導入確定しているインボイス制度導入に反対するのは、時間の針を巻き戻すような難易度。大変残念ながら、私はその力を持ち合わせていない。
しかし、一番の問題は、本来は右から左に受け取って納めるだけであるはずの消費税を納税すると、食べていけなくなるフリーランスが出てくるような低い報酬設定がまかり通ってしまっていること。消費税転嫁拒否や買いたたきを無くし、フリーランスに対する報酬全体の相場を押し上げていくことが、中長期的なフリーランスの地位向上や保護の観点からしても非常に大切。そのために全力を注ぎたいし、政府にもインボイス制度導入でフリーランスが不利益を被らないように力を尽くしてもらいたい」。

そして、フリーランス協会が財務省に提出している「インボイス制度導入によるフリーランスへの影響・不利益を最小限とするための取組み要請」の内容を公開しました。

▼平田の資料はこちら


▼フリーランス協会による政府への申し入れ内容はこちら

【プレスリリース】「インボイス制度導入によるフリーランスへの影響・不利益を最小限とするための取組み要請」を申し入れ

インボイス制度の解説~免税事業者の対応を中心として~ 財務省/佐々木 辰実氏

続いて、財務省主税局税制第二課 課長補佐の佐々木氏より、インボイスの概要について解説がありました。フリーランス向けに特化した説明で、特に免税事業者(売上1000万円以下の事業者中心)の関心ポイントに沿ってお話し頂きました。
消費者が負担して、事業者が分担して国に納税することになっている消費税の仕組みなどについて解説いただきながら、SNSの一部でみられる「免税事業者のままでいると取引をしてもらえないのではないか」といった懸念や「課税事業者になると売上げの10%の納税が必要になる」といった誤解についても解説いただきました。特に後者の解説の中では、課税事業者になれば自身が支払った消費税を控除することが可能であり、簡易課税制度を活用すれば業務委託で働くフリーランスの多くが比較的簡易な方法で、業種に応じた率(例:サービス業50%)の消費税が控除できるようになることや、納税した消費税は「租税公課」として必要経費扱いになり、所得税や住民税の減少になる場合があることが触れられ、「初めてインボイス制度の意味が分かった」、「知らなかった」という感想がチャット欄やSNSを通じて寄せられていました。
また、消費税は事業者の行うサービスなどの取引に課されており、消費税を払わない行為(消費税の転嫁拒否)は下請法違反になる場合があります。取引先から「税込みで」と言われ、仮に「消費税を受け取っていない」との認識を持っている免税事業者であっても、税の仕組み上は内税になっているだけであり、消費税を受け取っていることになっていること(つまり、取引先から消費税相当の値引きをさせられているということ)についても、これまで知らなかったという声が挙がっていました。

▼佐々木氏の資料はこちら


免税事業者or課税事業者?!それぞれのメリデメと備え 税理士宮崎 雅大氏

続いて税理士の宮崎先生から、具体的にフリーランスが取り得るアクションプランの解説がありました。免税事業者のままでいるか、課税事業者になるか、一人ひとりが自身の状況に応じて決めることが大切であり、そのための判断基準についてもタイプ別に説明されました。また、今すぐ決める必要はなく、これから1年かけて、取引先の反応や周りの状況、自分が目指していきたいキャリア像なども踏まえて、ゆっくり検討すれば良いというメッセージもあり、「分かりやすかった」「聞いてよかった」「焦らなくて良いと知ってちょっとホッとした」といった感想が寄せられていました。

▼宮﨑先生の資料はこちら

Q&A 質疑応答

本来1時間のセミナーでしたが、多数のご質問を頂戴したため、先生方にも時間を延長してご回答いただきました!
参加者の皆様も、せっかくご質問いただきましたのにお応えできず申し訳ありませんでした。
以下に質疑の抜粋を記入させていただきます。
(なお、当日において回答が曖昧な表現になっておりました箇所については、補足した上で掲載しております。ご了承ください。)

Q.取引先が自治体や公共団体の場合も同じ考えですか?
A.佐々木氏:
相手先の自治体が一般会計もしくは特別会計のどちらに基づいて発注しているかによっても扱いが変わってきます。例えば、一般会計に基づく発注である場合、その発注した自治体には消費税の申告納税義務がありませんので、インボイスの交付を求められることは想定されませんので、受注者である方はインボイス登録事業者ではなくても影響がないと考えられます。他方で、特別会計の場合には、自治体も申告納税義務を負っている場合もありますので、インボイスの交付を求められることも想定されます。必要に応じて、発注元である自治体にお問い合わせください。

Q.課税事業者になって、また免税事業者に戻ることはできますか?
A.佐々木氏:
インボイスの登録をするために課税事業者となった場合であっても、免税事業者に戻ることは可能です。
なお令和5年の3月31日迄に登録申請していただいた方については課税事業者でなければならない期間(注)が存在せず、インボイス開始の日を含む年・事業年度だけ課税事業者になる事が可能です。
(注)通常は、課税事業者選択届を提出した後、2年間は課税事業者にならなければいけないというルールがあります。

Q.免税事業者に消費税を払わないというクライアントが増えると1割単価が下がる業界もあります。これは消費税転嫁違反ではないですか?
A.
佐々木氏:
転嫁対策特別措置法自体はなくなってしまっていますが、
免税事業者との取引に係る仕入税額を8割控除あるいは5割控除できる経過措置が設けられておりますので、そのことを発注側も踏まえた上で、いきなり10%の価格引き下げはやめましょうということだと思います。
また2%分の引き下げならいいのかといえばそうではなく、下請法や独占禁止法の中で一方的な値下げや、価格交渉に全く応じないということは認められないことになっているので、当事者双方がしっかりと納得できるよう話し合って決めていかないといけないと思っています。
平田:
昨年3月にガイドラインを出していただいて、そのあたりもクリアになっていると思うので
泣き寝入りせず交渉をしましょう。

Q.複数の事業をしていますが、BtoB、BtoC両方と取引があります。
BtoBは外税、BtoCは内税で取引していますが外税にそろえた方が良いのでしょうか。
A.佐々木氏:
消費税法上、BtoC取引は総額表示義務がありますが、価格の表記について揃えなければいけないという事はありません。

Q.直接契約ではなくクラウドソーシング経由の仕事だとどのような変化がありますか?
A.佐々木氏:
発注主が取引先にどういった条件を求めるかによると考えられます。
発注者が取引を行う際に、制度開始後すぐに取引先をインボイス発行事業者に限るということは難しいのではないかと思います。
平田:
仲介事業者を営む事業者の皆さんと意見交換させていただいていますが、
発注者の意向やプラットフォームとしてどう対応するか、まだ検討中の事業者さんが多いように感じます。
この後1年ぐらいかけてどういう対応をするか方針が出されるかと思いますのでプラットフォーム選びの一つの選択肢にしていただければと思います。

Q.インボイス制度はそもそも不要だという税理士さんがいますが、なぜだと思いますか?
A.宮崎先生:
税理士も集計者もすごく手間が増えます。
販売した内容で8%、10%、非課税に加え、相手がインボイスの番号を持っているか確認しなきゃいけないため、
不要というよりは、手間が増える点で心配している税理士さんが多いのではないかと思います。
簡易課税制度を使う事で少し楽になります。

Q.簡易課税制度のみなし税率は業種によって違うと思いますが、自分がどの税率かどうやってわかりますか?
A.宮崎先生:
お仕事一つ一つで税率が変わるため、「あなたは全部このパーセンテージの業種です」とは言えないんです。
エンジニアやクリエイティブな方などフリーランスの方は50%の方が多いのではないかと思いますので、
ベースは50%と考えていただいて、
それ以外の方はインターネットや近くの無料相談税理士さんに相談するのがよいのではないかと思います。

Q.インボイス制度の開始が2023年10月1日からですが、インボイス事業者としての登録の申請は2023年の3月31日まででしょうか。
A.佐々木氏:
2023年10月1日の制度開始と同時に登録事業者になりたい場合には、2023年3月31日までに申請書を提出していただく必要があります。
そのため、登録するのはそれ以降でも問題ないと判断されている場合には、急ぐ必要はありません。
なお、2023年3月31日までに登録申請書を提出することが困難な事情がある場合には、その困難な事情は問わないと国税庁が示しているので、
もし申請書の提出が遅れてしまった場合には税務署にご相談いただくのがよいのではないかと思います。
宮崎先生:
2023年3月31日までに登録が完了したら、簡易課税制度について優遇が受けられる特典があるため、
登録を検討されている場合には、2023年3月31日までに登録することをお勧めします。

Q.インボイス制度開始前でも早めに登録をしたら課税事業者としての帳簿づけが必要でしょうか?
A.宮崎先生:
いきなり8%、10%、非課税での帳簿付けをすることになると大変なので、
今のうちに8%、10%、非課税かというところを意識して帳簿付けされたほうが後々困らないのではないかと思います。

Q.インボイスを請求するクライアントと不要というクライアントがいる場合にはどちらかに合わせなければいけないのでしょうか。
A.宮崎先生:
100社あるうちの一社でもインボイスの請求書をくださいと言われる可能性を考えて、番号取得しておいた方がいいだろうなと考えます。
検討されている場合には、インボイスの番号を取得しておいた方がお仕事は展開しやすいと思います。
番号を取得した場合、インボイスを気にしていないクライアントさんの請求書にも課税事業者番号を書いておく分には問題ありません。

Q.個人事業主として開業もしくは法人成り後2年間は免税事業者であると認識していますが、インボイス制度と関係ありますか?
A.佐々木氏:
一般的に、免税事業者であるかについての判断基準は2年前の売上高が1000万円を超えたかどうかで決まります。
そのため、事業を始めて2年間は、判断すべき2年前の売上高がないことになりますので、原則としては免税事業者でよいということになります。
なお、登録事業者になるという事は、自ら免税事業者から課税事業者を選択していただくということになります。
他方、登録しないということであれば、売上高で1000万円を超えたとしても、原則2年間は免税事業者という事になります。

Q.海外在住のフリーランスが日本の事業者から受注する場合どのような影響がありますか。
A.佐々木氏:
日本の事業者から見れば、国外において行われた役務提供については不課税取引に該当し、また、海外在住のフリーランスから見れば、その国の法令が適用されるため、関係ないのではないかと思います。

Q.取引先がフリーの免税事業者、自分が登録事業者の場合、不都合はありますか?
A.佐々木氏:
資料で説明した(財務省資料P1)ライターとその下請け(文字起こしの外注)のケースを想定する必要。
ライターの立場の方が簡易課税制度を使っていれば影響はありませんが、そうでない場合には、文字起こしの外注の方が免税事業者であればインボイスがもらえないことになるため仕入税額控除ができません。
また、補足ですが、SNS等で、「私は仕入がないから10%丸々納めなきゃダメだ」という声を聞きますが、
簡易課税制度を利用すれば仕入がなかったとしても、仕入税額をみなし仕入率で計算し控除できる制度になっています。
そこを誤解されているのだろうと思いますが、簡易課税制度を正しく理解していただくことで、実際に納付する税額が変わってきますのでご注意ください。

Q.法人化を考えているなら10月中に登録すべきと聞いたのですが、法人化を考えていないのであれば2年後ギリギリの登録でも問題ない、損はないという事でしょうか?
A.宮崎先生:
先程、2年前の売り上げ実績を見て消費税の納税義務が決まるというお話がありましたが、
2021年10月~2022年9月が1期、2022年10月~2023年9月までが2期目という風になると
インボイスの期間で被ってない期間で2期迎えられるという事になるので
2年前の売り上げ実績がないとうことがフルに使えるため、今年10月の登録をアドバイスしている税理士さんが多いのだと思います。
その一方で法人設立すると色々制約があるので、
必ずしも節税のために法人成するのは一度置いておいた方がよいと思います。
法人成されない方は、2023年3月31日の原則の期間までに提出をしたら有利な可能性があるため、
後々「この制度使いたかったのに」とならないように、1年後、1年半後くらいに最終的な判断をされればよいのではないかと思います。

Q.現在免税事業者ですが消費税を上乗せした支払いをうけています。
インボイス制度が開始したら免税事業者を選択し消費税なしで支払いを受ける
もしくは課税事業者になって簡易課税制度を利用するという選択で問題ないでしょうか。
A.佐々木氏:
価格設定について全く現状維持するということであれば、それに近いイメージになるが、制度開始の時点までにおいて、どれくらい価格交渉していくかによって異なると思います。したがって、例えば免税事業者のまま従前どおりの価格で取引を受注していく事も考えられるし、
課税事業者になり、消費税の納税額を踏まえてしっかり値上げしてもらうよう発注者と価格交渉するのも選択肢の一つだと思います。

Q.令和5年10月1日以降、登録番号を持っていないと消費税を請求書に書くことが出来なくなってしまうのでしょうか。
A.佐々木氏:
日本の消費税法制度では、そのような規定はありません。登録番号を持っていない免税事業者でも消費税額を書く事により、その代金を支払ってもらう事は問題ありません。

Q.課税事業者になった場合、免税事業者から物品を仕入れるとその際支払った消費税を差し引けなくなるのでしょうか。
取引先もフリーランスの場合、自分は課税、相手は免税事業者の場合は消費税を支払わなくていいという事でしょうか。
A.佐々木氏:
自身が簡易課税制度を適用しているのであれば仕入に係るインボイスの保存について気にしなくて良いです。そのため、売上げの際にどうやってインボイスを発行すれば良いかという点について気にすれば大丈夫です。
なお、仕入先の相手が免税事業者の場合、一方的に消費税分の代金を引き下げて支払うことは下請法に接触する可能性もありますし相手方としっかりコミュニケーションを取って交渉してください。

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