プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会

企業と個人を紐づけた社会保障制度からの脱却は実現可能か?~政府税制調査会より

こんにちは、ヒラマリです。暑かったり寒かったり、どんな格好をしたら良いか分からない日が続いていましたが、ようやく安心して初夏の気配を感じられるようになってきました。

さて、日経電子版でも報道されていましたが、先週は政府の税制調査会でお話ししました。「働き方の変化」がテーマで、神戸大学の大内伸哉教授からは「これからの労働はどうなるのか」という大局観、JILPTの濱口桂一郎研究所長からは「ジョブ型雇用社会とは」と題した解説、そして私からは「フリーランスの実態」についてフリーランス白書2022のデータに基づきお話し申し上げました。

どんなことをお話ししたのか、ご興味ある方は報告資料(こちら)や議事録(こちら ※6.14公開追記)をご参照いただければと思いますが、サマリーだけ簡単に報告します。

まずは、フリーランスの定義について確認させていただきました。フリーランス協会の会員・フォロワーを見渡すだけでも、職種も、稼働時間も、年収も、経験年数も、居住地も、抱えている課題やニーズも、実にさまざまな方がいらっしゃいます。
フリーランスと一口に言っても非常に多様で、同じ話をしているつもりでも各々の頭の中でイメージしているフリーランス像が全く異なることはままあるので、その多様性を常に念頭に置く必要があるという前提確認をしました。

それから、ギグワーカーについての解説もリクエストいただいていました。
メディアでは、「フリーランスといえばUber」というような報道がされることも多いのですが、フードデリバリー配達員の規模感についてもデータに基づきお話ししました。日本国内でフードデリバリー配達員を専業で行っていると思われる方は、多めに見積もって4~6万人(フリーランス人口全体の0.8~1.2%程度)。街角で突然見かける機会が増えたフードデリバリーサービスへの注目度が高いあまり、この事実はあまり気づかれていないように思います。

また、税制に関する調査会ということでしたので、記帳の頻度と方法や、確定申告の電子化の歓迎度合いや不安に関するデータを報告しました。
意外なことに、回答者の半数が月次レベル以上で記帳しており、尊敬の念しかありません。領収書の電子保存は76%、確定申告情報とマイナンバーの連携は51%が歓迎とのことでした。電子化に対する意識(期待や不安)の自由回答も年代別に紹介しました。30~40代を中心に便利さを歓迎する声の方が多数である一方で、日本政府の情報セキュリティシステムやデジタルリテラシーに対する不安の声もありました。

インボイス制度への対応状況のデータや、制度への不安に関する自由回答も紹介しました。
自由回答では、「内容がよく分からない」「制度を知らなかった」といったインボイス制度の認知・理解度の低さや、「まだ取引先の姿勢が見えない」「様子見」というように自身の対応に関する判断材料が不足している状況が浮き彫りになりました。(なお、フリーランス白書2022の自由回答は全件公開しています。ご興味のあるかたはこちらからご覧ください。)

そして、最後に、フリーランスも会社員と同じ社会保障が受けられる「働き方に中立な社会保障制度」についてお話し申し上げました。私は、「働き方に中立な社会保険制度」の実現のためには、企業と個人を紐づけてその長期的結びつきを優遇する社会保障制度からの脱却が必要だと思っています。大内教授からの発表でも、「労働者,使用者という枠組みは,すでに時代後れ」というお話がありました。(下記の図は税制調査会の資料には入れていませんでしたが、ご参考で掲載しておきます)

人生100年時代と言われる中、女性や高齢者や障がい者も含めて、誰もが幸せに働き続けるためには、ライフイベントやライフステージに応じて最適な働き方を選択できる(働くことを諦めなくてよい)こと、そしてその選択が一方通行ではなく、状況に応じて行ったり来たりできること(雇用形態レベルの流動化)が大切です。

そのためには、社会保障、特に健康や出産介護・年金など全ての人間が等しく背負っているライフリスクのセーフティーネットについては、働き方を変えてもポータブルな社会保険であってほしいです。「被用者」だけがライフリスクに晒されているわけではないので、被用者に限らず、本来は事業者や政治家なども含めてカバーされているべきではないでしょうか。

フリーランスも労働者認定して労働者保護すれば良いじゃないかと考えている人もいるかもしれませんが、雇用の枠組みの中だと働けない方、働きづらさを感じる方もたくさんいるのです。そういう人たちが、自分で働いて収入を得るためにせっかく見つけたフリーランスの働き方を取り上げてはいけないと思います。

少し話がずれましたが、こうした「働き方に中立な社会保障制度」の構築を検討していくためにも、会社員と比べて不透明性が疑われがちな事業者の所得の実態把握に、テクノロジーを活用して、事務作業の手間を軽減しながら高セキュリティで取り組んでいくことが必要なのだろうと考えます。

今回の税制調査会では、出席していた委員の方からも、「そろそろ企業と個人を紐づけた社会保障制度の見直しを検討し始めるべき時が来ているのかもしれない」というような発言がありました。
子供たちの世代以降を含めた中長期的な視点に立って、日本の社会保障制度をサステナブルなものにしていくためにも、国民的な議論が始まることを期待しています。

 

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