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社会保険の保険料と保険給付には、漏れや誤りが生じやすい年齢がある

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社会保険の保険料と保険給付には、漏れや誤りが生じやすい年齢がある

広い意味での社会保険には、会社員が加入する「労災保険、雇用保険、健康保険、介護保険、厚生年金保険」だけでなく、自営業者やフリーランスなどが加入する「国民健康保険、介護保険、国民年金」も含まれます。


会社員が加入する社会保険のうち、労災保険に関する保険料は、勤務先が全額を負担するため、給与明細の中を見ても、労災保険の欄はありません。


一方で雇用保険(雇用保険二事業の保険料を除く)、健康保険、介護保険、厚生年金保険の保険料は、勤務先と従業員が折半して負担します。


これらの保険料は給与の金額を元にして算出するため、給与の金額に増減があった場合には、保険料の金額が変わる場合が多いのです。

社会保険の保険料と保険給付

給与から控除される保険料の種類が変わるタイミング

また次のようなタイミングでは、給与から控除される保険料の種類が変わるのです。


40歳:介護保険に加入する年齢】

40歳からは介護保険の第2号被保険者になるため、原則として40歳に達した月の翌月以降の給与から、介護保険の保険料が控除されます。

65歳:介護保険の被保険者の区分が変わる年齢】

65歳からは介護保険の保険料が年金から控除される、または納付書を使って自分で納付する、介護保険の第1号被保険者に変わるのです。


そのため原則として65歳に達した月の翌月以降の給与からは、介護保険の保険料は控除されなくなります


70歳:厚生年金保険に加入する年齢の上限】

厚生年金保険に加入する年齢の上限は70歳になるため、原則として70歳に達した月の翌月以降の給与からは、厚生年金保険の保険料は控除されなくなります

75歳:健康保険に加入する年齢の上限】

健康保険に加入する年齢の上限は75歳になるため、原則として75歳の誕生日が属する月の翌月以降の給与からは、健康保険の保険料は控除されなくなります


以上のようになりますが、法律上は誕生日の前日に歳をとるため、40歳、65歳、70歳に達した月とは、誕生日の前日が属する月になるのです。


例えば21日生まれの方は、131日に40歳になるため、介護保険の保険料は3月以降の給与からではなく、2月以降の給与から控除される点に、注意する必要があります。


節目年齢になる時は保険料の控除の誤りに注意する

勤務先が給与計算ソフトを導入しており、かつ従業員の生年月日などを正しく入力している場合、新たに介護保険の対象になった方などを、給与計算ソフトが抽出してくれます。


そのため給与から控除された保険料が本来より多い、または本来より少ないという誤りは起きにくいのですが、給与計算ソフトの抽出機能を使いこなせていない場合があります。


また給与計算ソフトを導入していない小規模の会社では、社会保険事務の担当者が介護保険の対象になった方などを、自力で抽出する必要があるため、注意不足などで見逃してしまう場合があります。


こういった理由があるため、40歳、65歳、70歳、75歳といった節目年齢になる時は、保険料の控除の誤りが生じやすくなるのです。


国民年金の被保険者の種別が変わる時は納付漏れが生じやすい

国民年金の被保険者の種別は3つに分かれており、第1号被保険者に該当する自営業者やフリーランスなどは、自分で保険料を納付します。


一方で厚生年金保険に加入する会社員は、老齢基礎年金の受給資格を満たしている65歳以上の方を除き、第2号被保険者になります。


ただ給与から控除されている厚生年金保険の一部は、国民年金の保険料として使われているため、自分で保険料を納付する必要はありません。


また第2号被保険者の配偶者のうち、年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の方は、所定の届出をすると第3号被保険者になります。


この第3号被保険者の保険料も、厚生年金保険の保険料から賄われているため、自分で保険料を納付する必要はありません。


しかし例えば夫が次のような状態になった時に、妻が60歳未満だった場合、国民年金の被保険者の種別は第3号から第1号に変わるため、これ以降は自分で保険料を納付する必要があるのです。


60歳で定年を迎えて再雇用された後は、勤務日数や労働時間が短くなったので、厚生年金保険に加入しなくなった(これ以降は第2号被保険者でなくなります)


60歳以降も厚生年金保険に加入しているが、65歳からは第2号被保険者でなくなった(厚生年金保険の保険料に変動はありません)


こういった理由があるため、妻が夫よりも年下で、国民年金の被保険者の種別が第3号だった場合、夫が6065歳になったタイミングは、国民年金の保険料の納付漏れが生じやすくなります。

これで間違いが起こりやすくなるのか

制度内容や手続きが複雑な「高年齢雇用継続給付」

60歳以上65歳未満の間に給与が低下し、所定の支給要件を満たした場合、次のいずれかの高年齢雇用継続給付が、雇用保険から支給されます。


(1) 高年齢雇用継続基本給付金

60歳以降も以前と同じ会社で働いている方、または雇用保険の基本手当を受給しないで、すぐに再就職した方を対象にした制度になります。


高年齢雇用継続基本給付金が支給されるのは、60歳以上65歳未満の各月の給与が、60歳に達した時点の給与の月額と比較して、75%未満に低下した場合になります。


また支給要件を満たす場合、最大で各月の給与の15%が、最長で65歳に達する月まで支給されるのです。


ただ高年齢雇用継続基本給付金を受給するには、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上必要になるだけでなく、60歳以降も一般被保険者として、雇用保険に加入していることが求められます。


(2) 高年齢再就職給付金

雇用保険の基本手当を100日以上残して、再就職した方を対象にした制度になります。


高年齢再就職給付金が支給されるのは、60歳以上65歳未満の各月の給与が、基本手当の基準になった賃金日額を30倍した額と比較して、75%未満に低下した場合になります。


また支給要件を満たす場合、最大で各月の給与の15%が、次のような期間に渡って支給されるのです。


【基本手当の支給残日数が100日以上200日未満】

再就職した日の翌日から、1年が経過する日が属する月

【基本手当の支給残日数が200日以上】

再就職した日の翌日から、2年が経過する日が属する月


ただ高年齢再就職給付金を受給するには、基本手当の算定基礎期間が5年以上必要になるだけでなく、60歳以降も一般被保険者として、雇用保険に加入していることや、再就職手当を受給していないことが求められます


以上のようになりますが、いずれの支給申請手続きも、勤務先がやってくれるはずです。


しかし高年齢雇用継続給付は制度内容や手続きが複雑なため、60歳以降に支給要件を満たした従業員を、社会保険事務の担当者が見逃してしまう場合があります。


また社会保険事務の担当者が2か月ごとの支給申請手続きを、忘れてしまう場合があります。


こういった理由があるため、60~65歳は高年齢雇用継続給付の受給漏れに、注意する必要があるのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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