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経理職で「働く場所」から自由になるためには2つの軸が必要だった~働き方の挑戦者たち 佐藤慶宏さん

フリーランス・パラレルキャリアの多様な暮らし・働き方を、取材を通してご紹介する「働き方の挑戦者たち」

「経理職」と言えば、ひと昔前は一般的に会社に常駐しているのが当たり前でした。しかし、最近ではリモートや在宅勤務での経理業務も増え始め、働く場所を選ばずフリーランスとして活躍している経理ワーカーも増えてきています。

今回は、会社員として経理業務に従事し、その後アドレスホッパーの生活を経て、現在はオンラインアシスタントサービス「HELP YOU」のディレクターを中心に経理フリーランスとして活動されている佐藤慶宏(さとう よしひろ)さんにお話を伺いました。

仕事風景

佐藤慶宏さん(写真は本人提供)

「自分は経理に向いている」 偶然の配属で出会えた適職

秋田県に生まれ、学生時代は行政学のゼミを専攻し、「地域活性・まちづくり」を研究していたという佐藤さん。大学卒業後、地方をサポートする仕事に就きたいと考え、官公庁や自治体等をメイン顧客とする都内の人材ITベンチャー企業に就職しました。

新入社員研修を経た後、適性を考慮され、営業職ではなくバックオフィス部門に配属され、経理の仕事に携わることに。偶然の配属ではありましたが、元々数字を使うことが得意だったこともあり、「自分に向いている」ということに気づいたと言います。
そこから4年半の間、経理職をメインとしたバックオフィス業務に従事することになります。

ただ、経理の仕事にやりがいを感じながらも、自宅と職場を往復する生活には疑問を持っていました。「社会人2~3年目には、自分がどういう風に生きていきたいのか、本当に自分のやりたいことは何なのかを改めて見つめ直すようになりました」(佐藤さん)

そこで、仕事が終わった後は交流会などのイベントに参加して、会社以外の人と話したり、休日には登山やキャンプイベントなどに参加したりと、多様な価値観を持つ人や様々な仕事をしている人に出会う機会を増やしていきました。

そこでたくさんの人と出会い、対話を重ねていく中で、大学時代に研究していた「地方活性・まちづくり」にもう一度取り組んでみたいという思いが再燃していきました。そして、「そのために、まずは地方に移住したい」と考えるようになります。

念願の地方移住がスタート

たくさんの人とのつながりが増える中で、房総半島南部の富津市南端にある金谷地区の「金谷お試し移住プログラム」の存在を知り、プログラムを通しての地方移住を紹介されました。

そのプログラムは、金谷での居住地・住まいが提供され、週3日は地元の観光商業施設で働き、残りの4日を自分の選んだ仕事などに自由に使えるというものでした。つまり、このプログラムを使えば、地方移住のハードルとなる仕事・住まいがサポートされることになるわけです。

「これを活用すれば地方移住への一歩を踏むことができる」――こうして、佐藤さんは週3日間レストランのウエイターとして働きながら、残りの期間は東京で個人事業として経理業務を担うというパラレルワーク・二拠点生活をスタートしました。

金谷送別会

金谷時代の佐藤さん(前列左から2番目)

金谷には、同じように、新しい生き方や働き方を作ろうとしている人やコミュニティがあり、そんな友人たちとの生活を送る日々が続きます。振り返ると、当時はまだ「フリーランス」という働き方の存在もよく知らなかったと言います。

「正社員時代とは全く違う働き方になり、不安が全くなかったというわけではなかったのですが、若かったということもあり、どちらかというと期待やワクワク感の方が強かったですね」(佐藤さん)

そんな生活を1年半経たのち、ウエイターとして働いていた観光商業施設から、「正社員として経理業務をやらないか」という打診があり、本格的に金谷へ移住。そこから1年半は正社員としての経理職をこなしながら、東京にある自由大学のキュレーターをしたり、アウトドアイベントを開催したり、確定申告セミナーを開催したりと、色々な副業や活動を並行して行いました。

「金谷では小売・飲食業の経理業務や地方ならではの経理業務を経験することができました。東京のIT人材ベンチャー企業では、小口現金はあまり扱いませんし、請求書もPCで作成する場合がほとんどです。ところが、小売・飲食業では小口現金を多く扱いますし、田舎ということで手書きの請求書を受け取ることも多いです」

図らずも、経理の業務経験も広がっていきました

地方暮らしからの卒業

3年間の房総生活を経て、当初の目的だった「地方に住む」は実現できました。しかし、親しかった友人たちが金谷を卒業して離れていくことも多くなり、金谷に住み続けることを迷うようになります。

また、金谷で過ごした日々を経て、「地方に移住し、力強く活動や仕事をしていくためには、自分のライフスタイルのテーマのようなものを持つことが大切だ」という思いに至ります。佐藤さんにとっては、それは「アウトドア」と「コーヒー」だったそうです。

親しかった友人たちから、海外での旅や暮らしの経験話を聞いていたこともあり、「アウトドア」と「コーヒー」という切り口に、自身もさまざまな国で新しい文化に触れてみたいという思いが湧きあがりました。

そこで、「金谷でできることはやり切った」と感じたタイミングで、各地を転々とした日々を過ごしてみることに決めます。

標高3000メートルを超える山にある山小屋や長野のスキー場で働いてみたり、フィリピンのセブ留学やニュージーランドを旅してみたりと、1年くらい場所を転々とする生活を送りました。

ニュージーランド

ニュージーランド時代

アドレスホッパー生活ではたくさんの見聞を得られたものの、仕事や住む場所を転々とすることに、限界を感じるようになります。「地方移住で学んだ経験や、アドレスホッパー生活で得られた見聞を活かし、形にしていくためには、拠点を設け、継続できる仕事を得ることが必要だ」と思い至ります。

そこで、友人から誘われたこともあり、フリーランスコミュニティのある山梨県都留市に拠点を置くことに決めます。仕事については、今まで培ってきた経理の経験を活かしたいと、改めて考えるようになりました。

「自分の選んだ拠点に住む」「自分の強みである経理経験を活かす」という2つを軸に、場所にとらわれないリモートでの経理の仕事を探し始めます。そこで出会ったのが、ニットが運営するオンラインアシスタントサービス「HELP YOU」でした。

理想的な暮らしと仕事を実現 リモートワーカーに求められること

「HELP YOU」は、企業内の経理や総務、営業アシスタント業務をすべてオンラインで代行・サポートするというサービスで、仕事はリモートワークで完結する仕組みでした。

ニット・「HELP YOU」の掲げる「未来を自分で選択できる社会をつくる」というビジョンにも共感し、同社のスタッフ職へ応募。採用率1%という難関を突破し、2019年11月に「HELP YOU」スタッフとして採用され、フリーランス経理業を本格的に開始しました

コーヒー(自宅)

自宅でコーヒーを入れる佐藤さん

その後、2020年2月に佐藤さんはディレクター職となり、現在は「HELP YOU」が抱える約400名のスタッフとともに、案件ごとにチームを組成し、統括するディレクターとしての業務をこなしています。「HELP YOU」以外でも、フリーランスとして経理案件を請け負うなど、経理職をビジネスの基盤として活動されているそうです。

強みである経理経験を活かし、時間や場所にとらわれない働き方をしながら、自身のテーマである「アウトドア」や「コーヒー」のある暮らしを追求できているとのこと。

「現在は案件の立ち上げや、進行確認、クライアントとの案件調整業務を中心に行っています。これらはすべてオンラインで行っています。特に、経理案件を引き受けることが多いのですが、異なる業種や規模の企業、スタートアップから設立年数の長い企業など、さまざまな会社で仕事をしてきたからこそ、クライアントの課題を身近に感じながら対応できることも多いように思います」(佐藤さん)

コロナ禍によって進む在宅勤務やリモートワーク。「HELP YOU」の登録希望者数も過去最高数を更新し続けていると言います。リモートワーカーには基本的なスキルはもちろん、ビジョンを共感し、自律的に案件を進行していく力が求められています。

今後もプロフェッショナルな人材が、時間や場所にとらわれない働き方で活躍する社会が加速していくことが予想される今、佐藤さんのように「自分の強み」をビジネスの基盤として確立し、働く場所を問わず仕事へのマインドセットを持ち、パートナーとして自律的に高いクオリティを提供し続けることこそが、選ばれ続ける人材であると言えるのではないでしょうか。

ライター:山本エミ
県庁臨時職員、秘書専門サイト運営・推進、役員アシスタントなどを経て、
住宅系情報雑誌の編集を経験後、2017年長野県に移住。
現在はフリーランスとして、住宅・移住・マーケティング関連のライティングを行っている。
HP:ちこり舎

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