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確定申告は年末年始に準備しておけば楽になる!税理士に聞いた「3月に慌てないための3つのポイント」

「まだまだ時間はある」と思っていると、あっという間に来てしまうのが3月15日、確定申告書の申告期限です。毎年夏休みの宿題のように先送りにしては、間近になって「領収書がない」「控除証明書はどこに行ったっけ?」と大騒ぎする人も多いはず。さらに近年は、電子納税の登録や送信がスムーズにいかず、いらいらさせられるケースも……。

そこでフリーランスや副業・兼業を営む人の税金に詳しい税理士の宮﨑雅大さんに、年末年始を利用するなど、早いうちに済ませておいたほうがいい確定申告の準備について聞いてみました。

※この記事は、TOKYO創業ステーションTAMA Startup Hub Tokyoのオンラインイベント「税理士が教える確定申告のキホン もう直前で焦らない!困らない!」の内容を基に作成しました。


ポイント1:領収書をどんどん登録!資料の仕訳には「マイルール」を作ろう

申告作業の「第一歩」は、レシートや領収書など支出の情報を会計ソフトや帳簿に記載することです。お勧めはやはり会計ソフトの利用。「特に青色申告で65万円の税額控除を受けようとする場合、会計ソフトは不可欠と言っていいでしょう」と、宮﨑さん。

「コンスタントに登録できていたら、12月に入るころには10月分までのレシートの登録が可能だと思います。本来なら1カ月ずつ行うのが理想的ですが、今のうちから少しずつ入力を始めておくといいでしょう」

その際に気を付けなければいけないのが、文房具など備品の購入や飲食代などの場合、1つの支払いを2回登録してしまうこと。レシートだけでなく領収書やクレジットカード(以下、クレカ)の支払明細など、同一の支払いデータがさまざまな形で残っていることがあるため、こうしたミスが起こりがちです。

宮﨑さんは、銀行引き落とし、クレカ、現金など支払手段別にクリアファイルを用意し、レシートや支払い明細を分けて保存することを勧めます。

例えば、宮﨑さんは、1~2カ月に一度、レシートなどをまとめて入力。そのあと、「入力済み」の袋を用意して、そこに入れて保管しておくそうです。レシートは支払った月ごとにまとめてクリップで挟んで整理し、確定申告が済んだ後は、書類を収めたクリアファイルや保存袋を、一回り大きなB4ファイルに1年分まとめて入れておくようにしているとのこと。

宮崎流「マイルール」のイメージ

自分が分かりやすい「マイルール」を作ってみましょう!

ポイント2:必要書類と電子納税の手順を確認、節目ごとに入力チェックも

確定申告の際は、各種保険料の控除証明書やふるさと納税の納税通知書、医療費控除の対象となる人は医療費のレシートなども求められます。全部そろっているかを確認し、足りなければ早めに再発行の手続きを取っておきましょう。

また、「兼業・副業で働く人や、会社員として給与をもらっていた人で、年度途中で退職して個人事業主として独立した人は、退職以前の勤め先の源泉徴収票が必要なので、くれぐれも注意してください」と宮﨑さん。

給与所得の源泉徴収の処理は「勤め先がやっておいてくれる」と思いがちですが、確定申告でも申請しなければならない部分があります。漏れていると後日修正申告を求められることがあります。

また、郵送等ではなく、e-Taxを使った電子申告にするとメリットがたくさんあります。

まず、e-Taxを使うだけで控除額が10万円増えます。また、書類を郵送する手間が省けますし、ネットバンキングにリンクして納税もできるようになります。

ただ、e-Taxの準備に手間取る人は意外に多く、マイナンバーカードの紛失や、パスワード忘れも起こりがちだそう。「3月15日ぎりぎりになって『e-Taxができない』と慌てないよう、早めに動作確認をしておきましょう」

また、これまで入力した内容と預金残高をできるだけ早めに照らし合わせ、ずれがないか確認しておくことも大事だと宮﨑さんは言います。「口座残高がマイナス」など明らかに現実と乖離した申告書を提出してしまうことで、「税務署はもちろん、融資を申し込むときの窓口担当者も『この人は資金管理ができるのか心配だ……』と思われてしまったらもったいないです」(宮﨑さん)

「本来は1~2カ月おきにチェックするのが理想的です。節目節目で数字を突き合わせておけば、申請時に『数字が合わない!』と慌てて、1年分全部を調べなくてすみます」(宮崎さん)

もちろん途中のチェックで満足せず、申告時の最終確認も忘れずに。締め切り後に間違いが見つかると、訂正申告も必要になってしまいます。内容だけでなく、名前や住所なども含め、最終チェックをお忘れなく!

ポイント3:会計ソフトは全自動ではない!事前準備を忘れずに

確定申告の際に使うと便利なのがfreeeやマネーフォワードなどクラウドの会計ソフトです。記載漏れや重複入力に対するアラート機能なども搭載されているので、ミスを防ぎやすくなり、会計ソフトと銀行口座やクレカを連携すれば、取引明細や預金残高も自動で反映されます。

もしネットバンキングなどを使っていない現金商売が多い人は、連携したデータを登録するだけではなく、すべて手入力となります。弥生やソリマチなどパソコンにインストールして利用するソフトも検討してみるとよいでしょう。

とはいえ、宮﨑さんは「会計ソフトは知らないうちに申告書を作ってくれるものではありません」と強調。事前準備をきちんとやっておくことで、ソフトが十分に活用できるわけです。また、ソフト自体も2、3日で使いこなせるものではないため、ある程度は事前に使っておく必要があることは頭に留めておきましょう。

また、会計ソフトとネットバンキング、あるいはクレジットカードとを連携する際は、事業とプライベートの取引が混在すると公私混同やミスを招くこともあります。宮崎さんは、口座とクレカは事業用とプライベート用に分けたほうが無難という意見でした。

さらに、年度途中に口座を連携させても、直近数カ月分のデータしかソフトに反映されず、今年度分の申告には使えない恐れがあります。

「残念ですが、データ未連携の人や事業用の口座を分けていない人は、今年に関しては手入力でデータを作って申告し、来年度分から連携に取り組んでください」(宮﨑さん)

個人事業主が気を付けたい2つの注意点

宮﨑さんいわく、個人事業主が確定申告するときにやってしまいがちなことで、気を付けたい点が2つあるそうです。

①2023年から電子帳簿保存法が改正され、レシートなどをデータ化して保存できるようになりました。ただ書類に改ざんがないことを証明する「タイムスタンプ」が付与されず、データが無効になってしまうといったリスクもあります。当面は原本も保存しておいたほうがよさそうです。

②自宅で仕事をする場合、光熱費や通信費の一部を経費扱いにする「家事按分」の割合については過剰になりすぎないように注意が必要。「過剰に経費計上すると、数年後に修正申告のリスクを抱えることになるので、少しでも後ろめたさを感じるなら、個人事業の経費にする割合は減らしたほうがよいようです。仕事部屋の面積などの適切な割合に応じて光熱費を計算するなど、計算の根拠となるルールを決めておくといいでしょう」と宮崎さんからアドバイスがありました。

確定申告で信頼性を確保 早めの対応を

確定申告には納税額を決めるだけでなく、事業主の所得や実績を証明し、信頼性を担保する役割もあります。事業融資や住宅ローンなどの、返済能力を判断する材料としても使われます。

さらに青色申告にすれば、白色申告に比べて所得のうち課税対象外となる控除の額が大きく、利益が多く手元に残ります。

30万円未満の設備投資を購入して、その年のうちに利用した場合は、全額費用計上可能です(白色では10万円未満)。こうした恩恵もあり「資金に余裕のあるときにハイスペックなPCを購入し、将来の仕事に投資するといったこともしやすくなります」と、宮﨑さん。

一方で青色申告は、税務署への事前申請が必要ですし、複式簿記による帳簿付けなども求められ、手間がかかることも確か。作業を税理士に依頼するのも一つの手ですが、申告の時期が近いため受付を終了している税理士も多いそうです。「事業と並行しての作業は大変かもしれませんが、早め早めの対応が成功のポイントです」(宮﨑さん)

教えてくれた人
宮崎雅大(みやざき・まさひろ)
2016年10月に宮崎雅大税理士事務所を開業。スタートアップや起業まもない顧客が多く、個人事業主からの相談も多い。クラウド会計導入など、業務効率改善に関する提案にも定評がある。確定申告・決算へ向けてゆるく帳簿を付けるもくもく会「ゆるちょぼ」を不定期で開催。

(著者プロフィール)
有馬知子(ありま・ともこ)
フリージャーナリスト。共同通信社を経て独立。取材テーマはひきこもり、児童虐待、性暴力被害や労働問題、多様な働き方など。
HP: https://note.com/tomoko_arima/

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