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イラストも言葉も、結局はコミュニケーションの手段。“いらんこと”しないように気をつけてます【イラスト・メルマガ担当/たくまのりこ】

フリーランス協会で働く人を紹介する「突撃!フリーランス協会の中の人」。

今回は、この「中の人」シリーズのアイキャッチ画像の作者でもある、たくまのりこをご紹介します。

イラスト・メルマガ担当のたくまのりこ

大阪生まれ大阪育ち。大学院修了後、語学学校・通販会社・工務店と業種の違う企業3社にて勤務。しかし同僚達と比べ著しく体力がないことを悟り、週5日勤務を諦める。Webデザインやライティングを勉強してフリーランスに。
現在はイラストの仕事を中心に「どのような働き方であれば生きていけるのか」を模索しながら、虚弱な体力を振り絞って息も絶え絶えに活動中。リモートで仕事してた人にリアルで会うと「意外と大きい」と言われるタイプ。

フリーランス協会メルマガの出だしでお馴染みの読者もいるかもしれません。そう、たくまは、お盆や年末年始を除き、もう5年近くも毎週欠かさず会員の皆様へのお便りを書いている「メルマガの中の人」なんです。クスッと笑えるゆるいイラストのファンが結構いるとかいないとか。

いろんな立場の人の気持ちに繊細な想像力で思いを馳せる優しさと、必要に応じて核心を突いた発言をしてくれる聡明さとで、事務局内でも一目置かれています。一見、控えめな人見知りのように見えて、仲良くなるとめちゃめちゃ人懐っこいところがギャップ萌え(?)なたくまに、外部ライターが突撃インタビュー!


イラストレーターと画家や作家は役割が違う

──はじめまして! のりこさんは毎回この「中の人」連載のアイキャッチ画像も描かれているとか。ついにお話できて嬉しいです。

たくま:そうなんですよ〜。今回、私が取材されているということは、アイキャッチ画像を自分で描くってことなので、「どうしよう!」って今、めっちゃ思ってます(笑)。

──ふふふ、どんなアイキャッチになるのか、記事の公開を楽しみにしていますね。ところで、のりこさんは、普段はどんなお仕事をされているのでしょうか?

たくま:それが色々やっておりまして(笑)。イラストの他に、WebデザインやSNS運用、ライティングなどの仕事など……。最近は、イラスト・SNS運用代行・フリーランス協会のメルマガを書く仕事の3つを、ちょうど1/3ずつやっている感じですね。

──そうなんですね。イラストやSNSだけではなく、メルマガのライティングまで! 幅広いですね。

たくま:気づいたら幅広くなっていました(笑)。基本的に、これまでは「お声がけいただいたことにお応えしたい!」というスタイルでやってきました。
ただ、その「なんでもやります」スタイルですと、依頼された“ボール”が来てから、どのバットがいいか考えたり、振り方を考えてきたところがあったので、空振りをしてしまい、ご迷惑をおかけしてしまったこともあります。

今後は、ご迷惑おかけしないために、ありがたいことに方々で褒めていただく機会が多い、イラストのお仕事メインで増やしていきたいなと考えているところです。

──今後はイラストのお仕事に注力していきたいとのこと。のりこさんの考える「イラストレーターの心得とは?」を聞いてみたいです。

たくま:私がイラストレーターの職を語るだなんて大変おこがましいのですが、ひとつ思うのは、イラストレーターは画家や作家とは違う、ということ。画家や作家は、自分の表現があり、「社会に対してこういうものを発信したい」といった思いのある方々だと思うんです。

対してイラストはもっと商業寄りで、コミュニケーション手段だと私は思います。伝えたいことが先にあり、それを伝わりやすくする手段としての絵という関係です。その手段が言葉ならコピーだし、ビジュアルならイラストやデザイン、という感覚ですね。

たとえば「小説」の表紙絵は、表紙を見た読者にいろいろなイメージを“膨らませてもらう”ような絵が多いはず。一方で伝えたいメッセージが明確に決まっている「ビジネス書」に添えられるイラストはその逆で、読者のイメージをバシッと1つに“固める”役割のものが多いと思います。

「見ている人の横に立ち、同じ景色を見る」

──伝えたいメッセージを届けるためのイラストを描く際、どのような点を意識しているのでしょうか?

たくま:抽象的になってしまうのですが、「見ている人の横に行って、同じ景色を見る」ような立ち位置で描くことを大事にしています。
なぜなら、見る側の視点に立ち、伝わっているかを確認するプロセスを大事にしているということだと思います。
一方で、美術館に飾られる絵画は、同じ目線ではなく、「作品と向き合って対話する」ための絵なのかな、と。

──「伝えるために描く」といえば、冒頭で話題にした、「中の人」連載のアイキャッチのイラストも毎回、その方の“人となり”が立ち上がってくるような特徴の描き方が絶妙!と感じています。どんなふうに描いているのでしょう?

たくま:最初に写真を見ながら描きはじめるのですが、その後、人柄に合わせた顔のパーツに変更していきます。いうならば、写実的な絵から、概念の絵に移行させていくようなプロセスです。だから実は、アイキャッチに描かれているイラストは、ご本人の見た目とは違うんですよ。「この人ってこうだよね」と私が思うイメージ(=概念)を、イラストに落とし込んでいるので。

連載2回目に登場した鈴木敬三さんは、アメリカンフットボールをしていることもあり、ご本人はもっと雄々しい外見をしてらっしゃるんです。でも、フリーランス協会で皆が思う敬三さんは、無茶ぶりにも対応してくれる癒やしキャラであり、いじられキャラでもあり、皆のマスコットのような存在

そのお人柄を絵にしたら、眉毛は下がるし、目はつぶらだし、なんかちょっと小動物みたいになっていました(笑)。

連載2回目に登場した鈴木敬三さんのアイキャッチ画像

──手描きのセリフも、毎回、シンプルなのにクスッとする切り取り方が楽しくて。ここはどうやって考えていますか?

たくま:考え方で一番近いのは、ものまね芸人さんかもしれません。ものまね芸人さんのセリフって、“ご本人”が本当に言うセリフじゃなくて、「その人が言いそうなセリフ」だったりするので。こちらも概念から発想して、「この人ならこう言ってそう」という感覚を大事にしていますね。

その感覚はやっぱり「見ている人」の横に立って、その目線を想像して、“どうしたらその人にもっと興味を持ってもらえるか?”を考えるうちに出てきたものかなと思います。結局、イラストも言葉も、「他人とコミュニケーションをどうとるか」だと思っているんです。私が絵を描くのも、昔からそこが理由だったので。

ネタで作ったもう一つのアイキャッチ

今回、自分自身のアイキャッチを描いた際、実はネタでこんな美化バージョンも作ってみました(笑)。イラストを通して、こういうコミュニケーションを取るのが好きなんですよね。

絵は好きだけど、仕事にする気はなかった

──昔から絵を描くのはコミュニケーション手段だった、というお話がありました。いつごろから絵をよく描かれていたんでしょう?

たくま:小学生のとき、私の机、めっちゃ黒かったんですよ。落書きしすぎて。先生に「そろそろ消そうな」とか言われていました(笑)。描いていたのは漫画のキャラクターなどいろいろです。ぐるぐるぐる……って、ひたすら螺旋模様で埋めていた時期もあったり。

そのころから、言葉で話すのが苦手だなという意識がありました。言葉にできないから、足りないことを絵で補う。絵を描くのが好きな子たちで集まってノートを回して、絵とストーリー付きの交換日記をしたりもしましたね。絵を描くのは自分にとって、友達としゃべるのと同じ感覚でした。

──そのころから、「将来は絵を仕事に」と考えていた?

たくま:いや、むしろその逆で、自分の力で勝負する仕事は避けたいなと思っていたんです。うちは両親が高校教諭で、父が書道、母が音楽でした。部活の教え子にはその業界に進む人もいて、食べていくのは厳しい世界なんだなと感じていて。中学生のころには「クリエイティブな仕事はやめよう」と決めていましたね。

会社と自分のペースが噛み合わず、生き方を模索

──大学院卒業後は、語学学校で運営スタッフをされていたとか?

たくま:高校が国際課で、留学経験などもあったことから、国際会議の企画運営をするコンベンション業界に就職したんです。

そこで配属されたのが、翻訳者の養成スクール。語学学校の運営スタッフとして3年弱働きました。大阪で入社して、3年目には東京転勤になったんですが、東京の生活スピードや仕事量に体がついていけなくなり、自分には難しい環境だと思って辞めたんです。

その後、縁あって輸入楽譜を扱う通販会社に入りましたが、1年ほど働いたら、また体調を崩して働けなくなってしまいました。1社目、2社目の経験を通して、「自分は体力的に会社勤めは無理」だと悟ったんです。

今振り返ると、体力の面ももちろん大きいですが、加えてメンタル面でも追いついていなかったんだと思います。「会社」というものの性質や働き方自体が、自分には向いていなかったな、と。そこから生き方モヤモヤ期に入っていきました。

──生き方モヤモヤ期?! そんな時代を経て、どんな経緯で今の働き方につながっていくのでしょう?

たくま:当時お世話になった病院でたまたま治験を行っていて、運よく半年ほど、認知行動療法を体験させてもらったんです。そのトレーニングを通して、「自分が今こうである」状態と、「その状態は、外からどう見えるか」を客観的に捉えることを教えてもらいました。メタ認知に近いものですね。

そうやって、過去の自分を客観的に捉え直してみると、私は1社目でも2社目でもパニックに陥っていたことが分かりました。このトレーニングを通して、当時のことを「パニックだった私がいた」と捉えられるようになったんですね。それからは仕事で落ち込んでも、「ああ、落ち込んでいる私がいるな」と捉えて、落ち着くことができるようになりました。これは今でも役立っていることのひとつですね。

体調が落ち着いたころ、1社目の会社から、「アルバイトとして働かないか」と声をかけてもらいました。それがきっかけで社会復帰して、他にもいろいろなアルバイトや業務委託を点々としながら、自分に合った仕事を模索していました。モヤモヤ期から模索期へ移行したんです。

夜間スクール受講を経て、そのままフリーランスに

──イラストやデザインのお仕事につながったきっかけは?

たくま:アルバイトで、チラシ作りの機会があったんです。デザインソフトは大学でも扱っていましたが、いざやってみると「ソフトが使えても、デザインの知識がないといいものが作れない」と感じましたね。一からデザインについて学びたくなり、職業訓練校と夜間のオンラインスクールで、Webデザインを学び始めました

──スクール修了後は、いきなりフリーランスになったとか。

たくま:そうなんです。もともとは就職しようと思ってたんですよ。ただ、実は職業訓練校のほうは途中で辞めてしまった経緯があり……。職業訓練校の、スケジュールがカチッと決まった週5日のスタイルが自分には合わなかった。だから、会社勤めのような働き方は自分には到底無理だと再認識して、「じゃあフリーランスかな」と(笑)。

「フリーランスになろう!」と目指したわけではなくて、自分ができない選択肢を消していった結果、その状態になったんです。

他に選択肢がない状況でフリーランスになった分、やれることがあるならなんでもチャレンジしようという気持ちはありました。Webデザインをやるならライティングやコーディングの知識も学ぼうとか、昔は仕事にしないと決めていた絵も描こうとか。そのかいもあり、ありがたいことに今日の仕事まで全部、誰かのご紹介だけで続けられています。

メルマガ冒頭文に込めているもの

──フリーランス協会との出会いは?

たくま:知り合いがフリーランス協会の事務局メンバーで、関西の交流会に誘ってくれたのがきっかけです。交流会で最後まで残っていたら「最後までおるんならもうメンバーやで」と言われて(笑)。「はい、なります〜」って。

私、いつも判断基準が「人」なんですよ。自分が心から信頼している人からの誘いなら、内容がよくわからなくても信じて進むと決めています。

──協会では、どんなお仕事を担当されていますか?

たくま:フリーランス協会の会員の皆さんに配信しているメルマガの担当と、フリパラで掲載する記事のアイキャッチ画像や記事内画像の作成などをしています。
あとは「みんなのお昼休み」といって、週に1度、ランチタイムに、事務局メンバー向けのオンライン雑談スペースを運営したりもしていますね。これはプロジェクトを超えた交流の場があればいいなと思って、1年ほど前に発案して始めたものです。

──協会内でもイラストからメルマガの執筆、コミュニケーションの場づくりまで広く携わられているんですね。ところで「メルマガの開封率がなかなかすごいらしい」と聞きました!メルマガについてもう少し教えてください。

たくま:2019年に私が協会に入ったときは、メルマガ配信数が8千件くらい、開封率も30%くらいでした。それが2023年の今は、配信数が約6万件、平均40%超えの開封率になりました。一般に、企業に興味を持つユーザーを対象とした場合でも約20%が平均だと言われているので、「皆さん、めっちゃメール開いてくださるやん!」と嬉しく思っています。

──協会事務局メンバー内からも、冒頭文が好評なのだとか。冒頭文を考えるときにはどんなことを意識していますか?

たくま:協会のメルマガって、もともとの情報量が多いんですよね。しかも内容には政策や税務法務の解説など、固めのニュースも入ってきたりする。だからまず、冒頭文はなるべく身近な雰囲気で、圧を出さず、ゆるい温度で入っていくことを意識しています。

事務局で好評だったメルマガの冒頭文

メルマガで伝えたいのは「一人じゃないよ」

もう1つ、コロナ禍から一貫して込めている大きなテーマとして、「一人じゃないよ」もあります。会社員みたいに、“ちょっと横向いたときに相談する人”はいないけれど、メルマガ読んでいるこの瞬間、フリーランス仲間が集う場にいるよ、と感じてもらえたらいいなと思っていて。

特にコロナ禍当初、フリーランスは孤独だったと思うんですよ。協会のメルマガでもイベント情報が一切無くなってしまって……。でも、しばらくしてイベント情報を再開したときのメルマガの開封率は、50%を超えたんです。「皆さん、情報を待ってたんだ!」と感じて。「一人じゃないよ」というテーマを意識し始めたのはそこからでしたね。

「最小限の要素」がいい

──子どものころは「言葉が苦手で絵を描いていた」とおっしゃっていましたが、今はメルマガ冒頭文やSNS投稿など、言葉もお仕事で扱われているご縁はおもしろいですね。

たくま:実は、今も苦手なんですよ(笑)。ただWebデザインを学んだ時にも言語化は大事だと教わったので、できるようになりたいとは思っています。最近はようやく、言葉とちょっと和解し始めたかなと思っています。イラストも言葉も、私にとってはコミュニケーションの手段だと気づいたことが大きいですね。

その意味ではもうひとつ、「いらんことしない」もすごく気をつけてますね。もともとのいい素材に対して、必要以上に触りすぎない。過度にしすぎない。

SNSの文章でも、「ちょっと足りない」を目指しています。「読んだ人がひと言ツッコみたくなる」くらいがちょうどいい。相手からのレスポンスがあってはじめて100%になる感覚です。

──確かに、のりこさんの表現はイラストも言葉も、“削ぎ落とされている”からこそ際立つ魅力があるような気がします。

たくま:最小限の要素がいいなと思っているんです。「そのシーンでその目的を伝えるために、必要な要素」だけを抽出して届けたいというか。そういう意味で、「ミニチュアもの」とかも好きです。

言葉もイラストも、伝わり方には特徴があるので、状況によって適切な手段を自在に使い分けられるようになれたらいいですね。そこを目指して、これからも変化を楽しみながらやっていきたいです。

 【 私の道しるべ 】 「生きている間は、ずっと不確定」

私の人生って、「その時々の興味でいろいろチャレンジしては、いろいろダメだったね」を繰り返してきていると思うんです。でもそれって言い換えれば、生きているうちは何度でも、次のチャレンジができるということ。

新しいことにチャレンジしてもいいし、時を経て同じことに再チャレンジしたっていい。何かにチャレンジして一度ダメでも、生きている間はまたチャンスがあるから、「挫折終了!」しなくていい。熟成させておけばいいんです。今年ダメだったことも、5年後だったらいけるかもしれないし。

「今の自分には何もない」と悩んでいる人がいたら、「それでいいんだよ」と声をかけたいです。生きている限りは、更新し続けられるから。「死んだら確定」だと思ってるんですよ、「この人はこういう人生でした」って。でも逆に言えば、「生きている間はずっと不確定」なんです。

たとえば60歳から始めた仕事が、後世に語り継がれるキャリアになるかもしれない。だから、「今の自分」を嘆かなくていい。その間に、生きているからこそ感じられる“不確かさ”を楽しみながら、いろいろと次のチャレンジをしたほうが、人生楽しいんじゃない?って思います。

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時折挟まれる関西弁がキュートなのりこさん。「ふわっと生きてきたから」と言いつつ、お話を伺ううちに浮かび上がってきたのは、子ども時代から一貫して相手とのコミュニケーションを大切に、また自分の興味関心を大切に、一歩一歩積み重ねてきたのりこさんの生き方でした。

「生きている間はずっと不確定」の名言には、励まされる人も多いはず。年齢を重ねるごとに新たな扉をひらくことに腰が重くなることもあるけれど、まだまだ変化し続けたいな〜と、私も勇気をもらいました。

ライター:渡邉雅子
PR会社勤務、フィジー留学を経て豪州ワーホリ中にライターに。帰国後ITベンチャー等々を経て、2014年に独立。2016年より福岡在住。現在は糸島界隈を拠点にフリーライターとして活動。2023年は絵本、日本茶、写真、旅、ZINEなどを少しずつ深めたい。とりあえず日本茶検定1級取ってみました。海辺とおいしい野菜が好き。
Web: https://masakowatanabe.themedia.jp/


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