見出し画像

新たな土地でイチから「仕事でつながるご縁」をつくるために知っておきたいこと〜徳島県3企業の事例から〜

今住んでいる地域以外の企業とつながって、一緒にお仕事をしてみたい!そう思う方もいらっしゃるのでは?

かくいう、フリーランスライターの私、近藤もその一人。最近、子連れでワーケーションに挑戦するなど、関係人口や地方創生といったキーワードに興味津々。「他の地域と仕事でつながる」ことへの関心が日々、高まっています。

そこで、2023年1月26日に、徳島県とフリーランス協会主催のオンラインイベント「縁もゆかりもない徳島県と、仕事でつながる“ご縁”をつくろう!」に参加。
イベントには、実際に「フリーランスと仕事でつながりたい」と思っている徳島県の事業者からお話があったり、「仕事でつながる」ために知っておきたい心得が紹介されたり……。地方と仕事で関わることに、ワクワクする内容でした!


フリーランスに、こんな仕事をお願いしたい!

では、具体的に徳島県の事業者は、どのような仕事をフリーランスにお願いしたいと思っているのでしょうか。順番にご紹介します。

事例①徳島県の観光を一緒に盛り上げてくれる人とつながりたい!

最初に登壇したのは、(一社)イーストとくしま観光推進機構の井内泰さん。

イーストとくしま観光推進機構とは、「観光地域づくり」を目的とした法人で、データなどの科学的アプローチから導き出された潜在ニーズをもとに、地域のさまざまな事業者と協働して、新たな観光資源を生み出すことをミッションにしているとのこと。

たとえば、徳島市周辺はビジネス客が多いものの観光客が増えていないという課題がデータで浮き彫りになったため、出張の前後に徳島を楽しんでもらう、ビジネスとレジャーをか掛け合わせた「ブレジャー」の推進を企画。

そのほか、お遍路に興味があっても宗教的理由で実践できない外国人観光客がいると分かり、トレッキングルートとしてお遍路の魅力を紹介しているそうです。

新しい観光のスタイルを次々と生み出している「イーストとくしま」ですが、自社のロゴマークをお願いしたのはフリーランスの方だったとか。
そのほか、記事制作、プロモーション、登山ガイド、写真撮影、パンフレットデザインなどの依頼をしたことがあるそうです。

また、今後は、以下の3つをお願いできるフリーランスの皆さんとつながりたいと思っているそうです。
  ・ DXを活用した観光地の高付加価値化や利便性向上
  ・ YouTuberやTikTokerと連携した動画制作・情報発信
  ・ リーサスやオープンデータを活用したDMP構築・活用業務
 

「せっかく動画を作っても、発信力がなければ再生数が低いままです。そこで、すでに発信力があるインフルエンサーの方々に徳島の魅力を発信してもらう。そんな取り組みが今後できたら嬉しいですね」と話されていました。

事例②自然染料「阿波あかね」の販売やブランディングに協力してくれる人とつながりたい!

続いて、徳島県三好市で活動する「阿波あかね会」会長の西村耕世さんを紹介します。ご自身も大阪からの移住者で、東京に本社がある企業が三好市に置くサテライトオフィスで働いたのち独立。ご自身の会社を経営しながら、2022年から阿波あかね会会長を務めています。

「茜(あかね)」とは日本の伝統的な染料で、三好市に自生する希少な日本茜が原料。阿波あかね会では、シルクや綿に「茜」で染色して、ストールやネクタイ、バッグに仕立て、オンラインショップなどで販売したり、観光客向けに「あかね染め体験」を事業化すべく、モニターツアーを行っているそうです。

すでに何社も経営されている西村さんが、「阿波あかね会」を立ち上げたきっかけは、ご両親がきっかけとのこと。西村さんに続いて三好市に移住したご両親が「地域のために何かしたい」という思いを持っており、西村さんのお母様が染め物を趣味にされていたため「茜」に着目されたそう。

今後は、観光客向けの染め体験の実施や、染色のプロ「染師」の育成のほか、阿波あかね学院の運営などを通して、日本茜の栽培量アップなどに取り組んでいきたいと話す西村さん。既存事業だけではなく、新事業の伴走をしてくれるようなフリーランス・複業人材を求めているそうです。

阿波あかねという地域資源を活かしながら、三好市の良さを再認識できる事業へと拡大したいと意気込む西村さん。オンラインながら、熱量を感じるプレゼンでした。

事例③カフェやコワーキングスペースを起点に何かできる人とつながりたい!

3社目に登壇されたのは、(株)C Landmark代表の藤田梢さんです。高知県出身で、結婚を機に徳島県三好市に移住した藤田さんは、子育てで地域の課題に触れたことをきっかけに起業しました。
今まで、子ども向けのイベントや、親子が安心して集えるカフェ、児童クラブ、チアダンスチームなど、さまざまなことにチャレンジ。

吉野川が一望できる「吉野川ハイウェイオアシス」にオープンした「cafe culcul(カフェクルクル)」では、にし阿波地域のさまざまな食材を使ったメニューを展開。地元では食べられなかったエスニック料理も加えるなど、「ないなら作ろう!」を合言葉に、関わる一人ひとりの自己実現につながるプラットフォームを目指して活動しています。

また、2021年度からは、同じハイウェイオアシス内に設けられた「吉野川テレワークオフィス」の運営を受託。都会からのインターン生の受入れや、親子ワーケーションの実施などにも取り組んでいるそうです。

「地方だからこその自己実現がある」という藤田さんは「この場所を地域の方々がフリーランス・複業人材とつながるためのハブにしたい」と話します。場づくりが得意で、子育て経験がある人が共感しそうな事業ですね。

地域と仕事でつながるために、知っておきたい3ステップ

最後に登壇したのは、フリーランス協会事務局メンバーの葛谷美里さん。葛谷さんご自身も、十数年ほど前に”縁もゆかりもない”福岡県に結婚を機に転居し、イチから仕事のつながりを作ってきた当事者。

首都圏で人材会社で働いてきた経験があり、都市部と地方の「仕事のご縁づくり」、「複業や兼業で関わるうえで重要なこと」の違いを体感しているそうです。

そんな葛谷さんがおすすめする、「地域と仕事でつながるために、知っておきたい3ステップ」は以下の通り。


①報酬をイメージする

まず大切なのは、地方と関わることで得たい具体的な報酬をイメージすること。「報酬」とは必ずしもお金だけではありません。
金銭的報酬以外にも、その土地ならではの特産品などの現物報酬、普段の仕事では得られない経験報酬、信頼して次のお仕事を任せていただけるような関係性が築ける信頼報酬、役に立っている実感を得られる心理報酬などがあります。

これらの報酬は、必ずしもひとつに絞る必要はありません
たとえば、「金銭的報酬は普段の仕事単価よりは低いけれど、そのぶん、役に立っている喜びを感じられて心理的報酬を得られたらいいな」と、いくつか期待する報酬をイメージしておくことで、満足度が高まります。

STEP2 相手が「期待すること」を受け取る

とはいえ、自分の報酬のことだけを考えてしまうのもNG。ひとりよがりになってしまっては、良い関係は築けません。大事なのは、相手企業の事業内容や事業に対する思い、今後のありたい姿をお伺いして理解することです。

STEP3 自分が何を提供できるかを言語化する

相手企業のことを理解したら、次に大事なのは相手のために自分が提供できることを言語化することです。

たとえば、相手の方が広報の強化を希望されていらっしゃる場合に、自分がイラストが得意だったとしましょう。
その際、ただ「私はイラストが得意です!」と伝えるよりも「私はイラストで表現することが得意なので、貴社の商品について分かりやすく表現することができると思います」
と伝える方が相手にとって分かりやすく、あなたの価値が伝わることになります。

このように相手の文脈に合わせて、提供できることを分かりやすく、具体的に伝えることがポイントです。
たとえ、自分は分かりやすく伝えているつもりでも、地域性や会社の規模によってビジネス慣習は異なるもの。
違いがあることを前提に据えて、伝わっているかを確認しながら、コミュニケーションを丁寧にとっていくことが大切です。


スキルや経験だけじゃない!求められているのは、人柄とコミュニケーション能力

実際、フリーランス協会が以前行ったマッチング事業者へのアンケートでも、「“売れる人材”の能力や特徴」の第1位は「人柄やコミュニケーション能力」だったとのこと。

地域性やビジネス規模の違いがあるからこそ、スムーズな意思疎通と相互理解が求められているのでしょう。

イベント内でも「相互理解とWin-Winな関係づくりが大切」と強調されていた葛谷さん。専門知識や経験が豊富な「ハイスキル人材」でないとお役に立てない!と思いがちですが、地方の中小企業で求められている視点を知ることができて、とても参考になりました。

地方の仕事を探せるマッチングサービスの紹介

ここまで、具体例として徳島県の企業3社をご紹介しましたが、他の地域でもフリーランスや複業人材とつながりたい企業は、たくさんあるそうです。「そうした企業とつながるには、マッチングサービスを利用するのも一案」とフリーランス協会の葛谷さん。

マッチングサービスにはさまざまなタイプがあるため、自身のニーズに合わせて活用すると良いそうです。

ちなみに、地域とつながれる案件を紹介してくれる主なマッチング事業者は以下の4サービス(JOB HUB、Skill Shift、ふるさと兼業、JOINS)なのだとか。

サイトを見るだけでも、世界が広がりワクワクしそうですね。
本記事を読み、縁もゆかりもない場所で仕事とつながるご縁を作りたいと思った方は、ご覧になってみてはいかがでしょうか?


【参考】こんなにある!企業でのフリーランス活用の成功事例

執筆:近藤 圭子
ライター。大学卒業後、人材サービス会社やNPOでの勤務を経て、フリーランスに。多様性、働き方、地域づくり、エシカルなどをテーマに、Webメディアや雑誌で執筆するほか、企業広報・NGO広報もご支援しています。趣味が高じて、ハーブやアロマセラピーに関する取材ライティングも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?