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ベテランフリーランスは何が違う?〜データで読み解くフリーランス歴別の満足度〜

経験を積むと何が変わるのか?

フリーランス協会では、毎年フリーランスの現状を調査し、その結果を『フリーランス白書』として発表しています。

本コラム「データ小噺 はくしょのじかん」では、毎回テーマを設定し、『フリーランス白書』を解説しています。

第1回は「フリーランスと年齢」の話として、30代、40代、50代の回答者ごとの違いについて考えました。今回の第2回で考えたいテーマは、「フリーランスと経験」の話です。

2020年6月に公表した『フリーランス白書2020~第6章 コロナ禍でのフリーランス・会社員の意識変容調査』のデータを年齢や開業年数などで分析し、以下のセグメントに分けて、紐解きました。

①「~2年未満(422名)」
②「2~5年未満(426名)」
③「5~10年未満(347名)」
④「10年以上(416名)」

4つのセグメントの中でも、とくに開業2年未満のビギナーフリーランスと、10年以上のベテランフリーランスに注目することで、フリーランスとして経験を積んだ人は何が違うのかについて考えたいと思います。

『フリーランス白書』のデータは、政策提言に使用しています!
本題から逸れますが、『フリーランス白書』で明らかになったデータは、フリーランスの増加に合わせて法律や制度をアップデートするための検討材料として、各所で利用されています。

実際に調査結果に基づき政策提言を行ってきた結果、実現した例としては、下記のようなものがあります。
✔「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」の策定(独禁法、下請法に関連する取引ルール整備)
✔「フリーランス・トラブル110番」(公的な無料弁護士相談窓口)の実現
✔労災保険の特別加入枠の対象拡大
✔企業の講ずべきハラスメント防止措置の対象へのフリーランスの追加
✔保育園入園審査における不利の是正
✔フリーランス向けコロナ支援策(持続化給付金、小学校休業対応支援金、企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置など)の実現

現在『フリーランス白書2021』のためのアンケートを実施中ですので、ぜひご協力をお願いします。政策提言のためのアンケートデータは、回答数が多いほど多様な分析が可能となります。

▼フリーランス白書2021 回答フォーム
https://creativesurvey.com/ng/answers/80bfcd3d2fd1bc82a88694ac1d0e83/
▼フリーランス白書2021 調査趣旨
https://blog.freelance-jp.org/20201223-11398/

ベテランフリーランスほど、達成感・充実感への満足度が高い

では『フリーランス白書2020~第6章 コロナ禍でのフリーランス・会社員の意識変容調査』から、「今の働き方に対する満足度」について各開業期間のフリーランスがどう感じているのか見てみましょう。

開業期間10年以上のベテランフリーランスと2年未満のビギナーフリーランスについて、「今の働き方に対する満足度」を掛け合わせて集計したのが、表1となります。

「今の働き方に対する満足度」は就業環境、仕事上の人間関係、達成感・充実度など11項目について、5段階(非常に満足~非常に不満)で答えてもらい、非常に満足・満足を「満足」、非常に不満・不満を「不満」、どちらでもないは「どちらでもない」として集計しています。

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<表1 開業期間別今の働き方に対する満足度>

プラス方向に最も大きく差があらわれたのは「達成感/充実感」の項目で、ビギナーフリーランスの満足度が66.6%だったのに対し、ベテランフリーランスの同じ項目に対する満足度は77.9%となっています。

この「達成感/充実感」の項目は、11項目のうちベテランフリーランスの満足度が最も高い項目でもあります。

ベテランフリーランスは、ビギナーフリーランスが満足度を感じている「就業環境」や「仕事の上の人間関係」よりも「達成感/充実感」に満足しているということがわかります。
フリーランスとして長く活動出来ている人は、働く場所や時間の制約が少なくなる、人間関係のストレスが減るということよりも、何かを成し遂げることへの喜びを大きく感じていると言えるのかもしれません。

ちなみに、働き方の満足度については、同項目の「2~5年未満」と「5~10年未満」のフリーランスも、ビギナーフリーランスより満足度が高いことがわかりました(図1)。

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<図1 開業年数別今の働き方に対する満足度_達成感/充実感>

しかし一方で、フリーランス歴が長い人ほど満足度が低い項目もあります。

「自分のスキルアップや能力開発のための時間」「自分の休息・リフレッシュ、趣味のための時間」の2つの項目では、ビギナーフリーランスの満足度に比べ、ベテランフリーランスの満足度が低いことがわかります。(図2)

「自分のスキルアップや能力開発のための時間」では、ビギナーフリーランスの満足度が64.5%であるのに対し、ベテランフリーランスの満足度は51.9%となっています。

また「自分の休息・リフレッシュ、趣味のための時間」についても、ビギナーフリーランスの満足度が69.4%であるのに対し、ベテランフリーランスの満足度は55.3%となっています。

これはフリーランス歴が長くなり、事業が軌道に載ってくることで、業務の遂行が最優先になり、スキル面・健康面での自分自身への未来投資が犠牲になりやすいことを示唆しているのかもしれません。

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<図2 開業年数別今の働き方に対する満足度_自分のために使う時間>

さらに自分の時間だけではなく、ベテランフリーランスはビギナーフリーランスに比べ「家族のために使う時間」についても同様に満足度が低いことがわかりました。(図3)

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<図3 開業年数別今の働き方に対する満足度_家族のために使う時間>

時間と場所を問わない働き方であり、いつでも仕事ができてしまうフリーランスだからこそ、自分自身に使う時間や家族のために使う時間を自分で管理することが必要になると言えるのかもしれません。

ビギナーフリーランスが未来のために、”今”からできること

ビギナーフリーランスの方は、どうしたら事業を軌道に乗せることができるのかと焦ることがあるかもしれません。でもそんな時は、今あるものを有効活用することを考えてみてはいかがでしょうか。

ベテランフリーランスが持っていなくて、ビギナーフリーランスが持っているもの。それが【自分や家族のために使える時間】です。

【自分や家族のために使える時間】のある今だからこそ、未来のために時間を使ってみてはいかがでしょうか。

スキルアップでもいい、新たな人との出会いでもいい。リフレッシュや趣味で行っていること、家族のケアで経験していることが、あなたの個性として認識され、事業の複合力となる日がくるかもしれません。

今積み重ねる経験が、あなたの5年後、10年後を助ける資産となるのではないでしょうか。

調査概要
調査期間:2020 年 4 月 22日~5 月 9 日
調査方法:インターネット調査(フリーランス協会のメルマガ、SNS を通じた呼びかけ)

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有効回答数:1,723名 (内 フリーランス・パラレルキャリ活動者 1,611名)
分析方法:調査対象者1,611名を、「~2年未満(422名)」「2~5年未満(426名)」「5~10年未満(347名)」「10年以上(416名)」に分けてクロス集計。
※以下図表のパーセンテージはすべて小数点以下第二位四捨五入しています。

寄稿者プロフィール
後藤 潤子(フリーランス協会 調査・白書プロジェクトリーダー)
化粧品メーカー・インターネットメディアでオフライン&オンラインのマーケティング活動に従事。会社員歴22年を経て起業し、フリーランスのマーケターとして活動しています。2019年春よりフリーランス協会事務局にて、調査業務に従事。地域の学習支援NPOの代表も務める5児(4~19歳)の母。https://www.facebook.com/n1marketing2018

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