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来年の3月14日に困らないため、今からやっておくべき「確定申告の準備」の準備。

コロナ禍の影響で延期された確定申告の期限、4月15日から2ヵ月ほど経ちました。

確定申告でヘトヘトになった人も、のど元過ぎれば熱さを忘れる……という状態かもしれません。納税は国民の義務、という当たり前の話が昨年ほど身に染みた年は無かったと思います。フリーランスで確定申告をしていなかった人は持続化給付金を貰えなかったからです※。

持続化給付金は法人なら最大200万円、個人なら最大100万円と、コロナで苦境に陥った人にとって生き延びることができるかどうかわかれ目となるほどの金額でした。今後もコロナの影響を考えると支援の対象から外れないためにも確定申告をキッチリやっておく必要があります。

そこで必要なことが確定申告以前の話、つまりお金の流れの正確な把握と記録です。メンドクセー!と思った人も、今では便利なソフトを使えば手間を大幅に削減することが可能です。むしろ手間をかけない方が正確に把握と記録ができます。その仕組みが「クラウド会計」です。

(副業の収入を事業所得として申告する場合、法人の確定申告をする場合も基本的に考え方は同じです)

※厳密には後から確定申告をすれば貰える状況でしたがとんでもなく手間がかかったと思います。

クラウド会計ってなんだ?

クラウド会計は、要するにネット上で動く会計ソフトです。従来のパソコンにインストールするタイプのソフトとの違いは、パソコンの中にソフトとデータがあるか、ネット上にソフトとデータがあるかの部分です。

クラウドで一番わかりやすいモノがGmailです。メールソフトもデータもパソコンの中ではなく、ネット上にあります。それと同じ仕組みがクラウド会計です。

有名なソフトはマネーフォワード・クラウドとfreeeの二つです。自分はマネーフォワード・クラウドを使っていますが、どちらでも問題ありません。

クラウド会計の最大のメリットは「放っておいてもデータを自動で入力してくれること」です。

クラウド会計ソフトを使ったことが無い人には難しそうに聞こえるかもしれませんが、この仕組みは家計簿アプリでも使われています。家計簿アプリとして有名な「マネーフォワードME」は会計ソフトの「マネーフォワード・クラウド」と基本的な仕組みは同じです。誰でも気軽に使っている家計簿アプリと同じ仕組みと聞けば安心できると思います。

もちろん、クラウド会計を導入するには必要な準備があります。それを今のうちにやっておいてください、というのがこの記事の趣旨です。

はじめにやるべき3つのこと

毎年確定申告の時期になると毎年一年以上前のレシートをひっくり返して苦労している人は、まず以下の3つから手をつけてください。

・仕事専用の銀行口座を作る。
・仕事専用のクレジットカードを作る。
・仕事専用のモバイルSuicaを準備する。

これがクラウド会計ソフトで極限まで手間を減らすために必要な準備です。

クラウド会計は反応が遅いから嫌いという人もいますが、これは使い方が間違っています。手動による入力が大量に必要な状況なら、いちいちブラウザ上でネットを通じてデータを入力するクラウド会計が遅いのは当たり前です。

そうならないために、ネットバンキング、クレジットカード、モバイルスイカ、これらの明細を自動的に取り込むこむ必要があります。これで入力の手間を9割以上減らせます。

そのためにプライベートのお金と仕事のお金は完全に分離しておく必要があります。なので元々あるクレカや銀行口座ではなく新しく作る必要がある、ということになります。

クラウド会計のコツ

第二段階としてやるべきことは以下の通りです。

・マネーフォワードやfreeeなど、クラウド会計ソフトを導入する。
・クラウド会計ソフトで銀行・クレカ・モバイルSuicaを連携してデータを自動で取り込めるように設定する。
・現金払いはできるだけしない(現金払いをした場合は手入力)。
・レシートは紛失しないように保管。
・ずっとフリーランスをやるなら簿記3級を取っておく。

これで準備は終わりです。

いざとなれば税理士に丸投げしてお願いすればいい、という考えは間違いです。ここに書いた程度は整えておかないと税理士も対応のしようが無いからです。

特に個人の確定申告は時期が決まっているので税理士も仕事が集中します。データもろくに揃えずやってきた飛び込み客を一番忙しいタイミングで相手にする税理士はいません。なので今のうちにまず最低限の準備をしておきましょう、ということになります。

もう一年も半分近く経過してる!!と焦った人も安心してください(一部だけ)。ネット上に履歴があれば過去の取引データも取り込めます。

すでにプライベートと仕事のお金がグチャグチャに混ざっている人は、今のうちに1月分から整理・入力をして、残り半年はクラウド会計にしてください。

ここまで読んで、当たり前の話を偉そうに語るなと思った人は基本的に問題の無い人です。こんな話は初めて聞いた、なにを言ってるのかさっぱりワカラン、という人はフリーランスとして相当ヤバイ人です。今のうちにクラウド会計に対応しておくべきとアドバイスしておきます。

細かいけど結構重要なポイント。

銀行とかクレカはなにかオススメはあるの? 普通のSuicaじゃダメなの?という人に追加のアドバイスです。

オススメの銀行は筆者も使っている旧ジャパンネット銀行、現在のPayPay銀行です。ネット専業銀行なので、条件無しで過去の明細を5年分さかのぼれるなど非常に便利です。唯一不便な部分は、公共料金やクレジットカードなど、引き落としで対応していないモノが多い点です。

筆者は以前事務所のあった地域の水道料金が引き落としに対応しておらず、コンビニで現金払いになってしまいました。

クレカについてはポイントがお得なモノなどを好きに選んで構いません。ネットバンクが引き落としに対応しているかどうかだけ注意してください。ポイントがたまるからプライベートも仕事も同じクレカを使いたいんだよなあ……という人は確定申告の時にグチャグチャになってもいいならお好きにどうぞ、という回答になります。

ただし、個人事業主として開設した銀行口座(営業性個人口座とも呼ぶ)の場合、一般的なクレジットカードは対応していません。これは銀行口座の名義に自分の名前と屋号(企業でいう会社名)の両方が入っている口座です。筆者の場合、会社設立前は「シェアーズカフェ ナカジマヨシフミ」という口座名義でした。

この場合は事業用のクレカが必要になりますので、個人事業主・クレジットカードでググって探してください(どのクレカがお得か?という話はキリが無いので省略します)。

営業性個人口座の開設には開業届が必要ですが、たまにフリーランスとして何年も活動しているのに確定申告どころか開業届すら出していない人もいます。そういう人もコロナを機に個人事業主としての「体裁」をしっかり整えることをオススメしておきます。

信用情報に問題があってクレカが作れない(泣)という人も、PayPay銀行のキャッシュカードなら(ある程度)は問題ありません。VISAデビットカードといって、銀行口座に直結したVISAのクレカとして使える機能がついているからです(一部の店舗・サービスでは利用できないので普通のクレカの方が良いことは言うまでもありませんが……)。

モバイルSuicaも必須!

Suicaについて、カード型のSuicaは明細の取り込みができないのでクラウド会計には使えません(厳密にいうとできなくは無いですが非常に面倒な上に自動化もできません)。

モバイルSuicaは昨年利用者が1000万人を越えた程度で使っていない人もまだたくさんいます。iPhoneかおサイフケータイ付きのAndroidで利用可能なので、まだ使っていない人はこれを機に使ってみてください。クレジットカードでいつでもチャージができる点も便利です。ビューカードのみといったカード型にある制限もモバイルSuicaにはありません。

注意点として、モバイルSuicaでモノを買ったらダメです。運賃専用にしてください。理由は交通費と他の支出が混ざって明細が極めて鬱陶しい状況になるからです。しかもクレジットカードと違って、どこで買ったのか履歴に残らず、「物販」という名目で金額と日にちしか表示されません。

したがってモバイルSuicaは電車やタクシー、バスなど交通費限定にするとわかりやすくなります(タクシーも物販と表示されますが、他に買い物をしなければ物販=タクシーとなるので問題はありません)。

プライベートでモバイルSuicaを使っている人はApple PayとかGoogle PayにSuicaを複数枚を登録すれば使い分けが可能です。全部Suicaにするとパっと見で仕事用かプライベート用かわかりにくくなってしまうため、どちらかをPASMOにするといった工夫もアリです。

……と、これらの準備をして可能な支払いはすべてクレジットカードや銀行振り込み、銀行引き落とし、モバイルSuicaにしておけば、どうしても現金でしか払えない費用や特殊な会計処理を除いてすべて自動で入力される事になります※。

※実際には明細の取り込みでたまにエラーが発生したり、取り込んだデータがおかしかったり、「特殊な会計処理」が決算時にある程度必要なことから、これらを実施したうえで税理士に任せてしまうのが一番楽な方法です。

本気なら簿記3級の資格取得を。

やるべきことの最後で、おまけのように「ずっとフリーランスをやるなら簿記3級を取っておく」と書きましたが、この話は非常に重要です。会計処理や確定申告で役立つというだけの話ではありません。

筆者は以前、日商簿記の資格試験を運営している商工会議所のインタビューを受けたのですが、簿記3級を取得しておけばビジネスが破綻する確率は大きく下がる、と答えました。これは冗談ではなく簿記の知識のおかげで首の皮一枚つながった実体験から出た話です。多くの経営者やビジネスマンが、ビジネスで簿記は必須、学校で教えてもいいくらい重要だと答えています。

その理由は、企業経営は「ヒト・モノ・カネ」が重要と言われる中で、カネの管理は簿記の知識が無いとできないからです。

例えば1万円の商品が売れた場合、通常は「売上が1万円」と考えますが、簿記では「売上が1万円発生して、現金が1万円増えた」と考えます。このような考え方を複式簿記(ふくしきぼき)といいます。

簿記なんて経理の人が知っていれば良いんでしょ? 経営者には関係ない、という考えは間違いです。複式簿記の考え方を知らないと金銭面で自分がどのような状況にあるか、把握すらできません。これはスモールビジネスでも、ベンチャーキャピタルから資金調達をして上場させたいといった場合でも同じです(いつか独立・起業をしたいと考えている人には、まず簿記3級の勉強からスタートすることをオススメします)。

MBA(経営学修士)でも会計は必修項目で、会計の基礎は簿記の知識です。簿記3級の取得は資格学校で学んでも2万~3万円程度、期間は2.3か月から長くて半年もあれば十分です。この程度の手間と費用で破綻リスクを劇的に下げられるなら安いものです。

口座開設から簿記の話までアチコチと話題が飛びましたが、来年の3月14日に困らないため、今からやっておくべき「確定申告の準備」の準備として参考にしてください。

※注 本稿は確定申告を行う前の準備として、スムーズな会計処理を行うために役立つ一般的な知識と情報を伝えることを目的とした内容です。個別・具体的な確定申告や税金に関する相談・質問は税務署及び税理士に確認をしてください。
中嶋よしふみ(なかじま・よしふみ)
ファイナンシャルプランナー シェアーズカフェ・オンライン編集長

2011年にファイナンシャルプランナー(FP)のお店、シェアーズカフェを開業。保険を売らないFPとして共働き世帯に有料相談を提供。「損得よりもリスク」がモットー。ITmediaビジネスオンライン、東洋経済、プレジデント等の経済メディアで執筆。TV、新聞、雑誌等で取材協力も多数。自社メディアと編プロの運営、執筆勉強会、社長専属の編集者など、FP業とメディア業を車の両輪として経営。著書に「しあわせな住宅ローンの借り方、返し方」(日経BP)。お金よりも料理が好きな1979年生まれ。

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