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フリーランスでも住宅ローンは借りられます! 意外と知らない、8つの審査基準

フリーランスは住宅ローンが借りづらいという話を聞いたことはありませんか? 実は、フリーランスという働き方と、住宅ローンという金融商品は相性がとても悪いのです。なぜなら、前提として、住宅ローンは会社員や公務員向けの金融商品であって、フリーランス向けではないからです。

とはいえ、フリーランスであっても、住宅ローンの仕組みを理解して正しい対策を講じれば、借りることができます。
本連載では、金融機関を経てファイナンシャルプランナーとして活動してきた経験と、自身もフリーランスながら住宅ローンを組んだことがある実体験をもとに、フリーランスが住宅ローンを組むために知っておきたいことをお伝えします。1回目の今回は、住宅ローンの8つの審査基準について、です。

ローンは、借りたいという意志だけでは借りられない

一般的に預金、保険、株式や投資信託といった金融商品は、消費者の買いたいという意志と相応のお金があれば、購入することができます(※厳密には、保険は健康状態、株式はインサイダー情報に関する制約はあります)。

一方で、住宅ローンをはじめとするローンという金融商品は、買いたい(お金を借りたい)と考えたとしても、直ちにお金を借りられるわけではありません。それは、お金を借りると資金を受け取ることになり、受け取った資金はやがて返す必要があるという仕組みのためです。

もし、あなたがご家族から「お金を貸してほしい」と頼まれた場合、貸しますか? 断りますか? ある方は、返してもらえないなら貸さないと考えるかもしれませんが、ある方は「返ってこなくても貸す」と考えるかもしれません。

次に、仲の良い友人からお金の無心をされたらどうしますか? お金を借りる依頼をした時点で友達とは見なさないという人もいるでしょう。友達だから貸す、友達だから貸さない、いろいろな意見が出てきます。

では、日常生活ですれ違った人からお金を貸してほしいと頼まれた場合、あなたならどうしますか? スーパーで買い物途中、駅で電車を待っているさなか、突然赤の他人からお金を貸してほしいと頼まれて、お金を貸せるものでしょうか。金額にもよるかもしれませんね。

喉が渇いて150円、初乗り運賃200円程度なら貸せるかもしれません。災害で帰宅困難な状況なら1万円貸しても(あげても)いいかもしれません。でも、その金額が100万円、200万円ならどうですか? 検討の余地なく断るのではないでしょうか?

お金を貸す側の金融機関にとって、住宅ローンを借りたいあなたは、突然現れた赤の他人です。いきなりお金を借りたいと言われても、検討の余地なく断るしかありません。では、どのような情報が必要なのでしょうか?

住宅ローンの審査に必要な情報とは?

(1)個人情報
名前、生年月日、住所といった情報は金融機関にとって重要な意味があります。たとえば、金融機関は取引時に反社チェックといって、その人が反社会的勢力として認定されていないかをデータベースで確認しています。このチェックにひっかかるとそもそも金融機関と取引ができません。

ローンの審査は仮名や偽名ではできません。本人でない人や架空の人物にお金を貸すと、不正行為や犯罪に利用される恐れがあるからです。日本に住んでいると日本の金融機関は厳しいように思えますが、日本は世界の中でマネーロンダリングしやすい国だと言われています。ですから、日本の金融行政は今後ますます色々な意味でコンプライアンス体制を厳しくせざるを得ず、人物像が把握できない取引がしづらくなっていくでしょう。

住宅ローンを借りる手続きの際は、住民票、印鑑証明書なども必要になりますから、日本に住み続けていることや国籍や永住権があるかどうかも、審査上は重要なポイントになります。

(2)個人信用情報
既述の個人情報と混同される方多いのですが、信用情報とは借金の返済履歴のことです。借金にもいろいろな種類がありますが、一番身近な借金はクレジッドカードの利用です。クレジットカードで支払いを先延ばす行為は、支払いまでお金を借りていることと同じです。

従って、クレジットカードの返済履歴を中心に、携帯電話の本体代金の割賦払いや、自動車ローン、自身の奨学金の返済などが遅滞なく、すみやかに行われたかどうかを確認されます。

返済履歴に傷がついている状態をブラックリストに載っているという表現でご存知の方も多いのではないでしょうか。

過去の借り入れの返済履歴は有料ですが自分で調べることができます。個人信用情報を保有している機関は3つあります。株式会社日本信用情報機構、株式会社シー・アイ・シー、一般社団法人 全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センターです。

大きく分けて貸金業界の情報と銀行業界の情報となり、お金の貸し借りを登録するよう定められています。そのため、これらの機関は相互に連携しており、審査の際は過去の返済履歴をチェックされる仕組みとなります。自分の使用履歴を知りたい場合は、それぞれの機関に有料で情報開示を請求することができます。

一般的に開示請求する人は、審査に落ちた場合が多いですが、心配な方は事前に請求しておくと無用な心配を取り除くことができるでしょう。

なお、過去の信用情報では
・請求通りの入金(返済)があった
・請求額の一部が入金された
・利用者以外から入金があった(家族が返済、他から借金などの可能性)
・利用者の事情で入金がなかった
・利用者と無関係の事情で入金がなかった
・入金されなかったが原因がわからない
・請求がなかった(利用しなかったということで問題ありません)
・空欄(情報なし)
といったことが過去5年分確認できます。

なお、利用者とは借入なら借りた本人のこと。クレジットカードの場合も契約者となります。いずれも、情報開示請求するのは自分ですので、ご自身の利用歴と返済履歴となります。

信用情報に請求通りの入金以外の情報が掲載されている場合、審査の難易度が上昇します。場合によっては他の情報の審査の手前で借入申込を断られることになります。

(3)勤務先情報
健康保険証に記載のある会社を勤務先として審査を行います。フリーランスの場合はご自身の屋号や個人事業上の名前を記載します。一人社長の場合は会社の名称を記載します。経営状況を確認するために、決算書の提出を求められる場合が多いです。

(4)収入
前年の収入を資料として提出することが基本になります。会社員や公務員の場合は、源泉徴収票を提出すれば足りますが、フリーランスの場合は確定申告書が必要となります。確定申告書は金融機関によりますが、一般的に2年~3年分必要です。そのため、個人事業主になったばかりの人は、お金を借りる難易度が上がります。

(5)年齢
年齢も住宅ローン審査に影響します。住宅ローンは完済時年齢が決まっているため、年齢が上がるほど、返済のペースを早める必要があります。たとえば、35年のローンを借りた場合で、完済時年齢が79歳であれば、44歳までに住宅ローンを借りる必要があります。

また、ほぼ80歳まで住宅ローンを払い続けることは現実的でないため、借りる難易度が上がります。

(6)返済比率(返済額の対年収比)
いくら住宅ローンを借りるのかも大切な情報です。住宅ローンを借りた場合、毎月の返済が必要になります。その際、審査の基準となるのが、住宅ローンの返済額を年収で割り算して求めた返済比率です。金利水準、返済期間、年収など金融機関ごとに独自の査定基準があり、返済が可能か社内基準に照らして判断します。

返済比率の上限は35~40%と言われています。たとえば、年収500万円(フリーランスの方は確定申告書の所得金額の合計欄)の方であれば、500万円×35%=175万円(月額換算14.58万円)が返済比率から逆算した年間の支払総額となります。

毎月14.58万円の住宅ローン返済は、借入期間35年、金利1.5%の条件だとした場合、4700万円借りられることになります。

つまり、売上から経費を差し引いた営業所得が多いほど、多くの住宅ローンを借りることができる計算です。気をつけたいのは、フリーランスの場合は売上でなく所得の数字を問われますので、経費が多い場合は売上が多くとも借入可能額が増やせないことになります。

(7)物件の情報
どのような物件を購入するかも審査の対象となります。多くの金融機関では現在の法令に当てはめて物件の適法性を確認します。たとえば、既存不適格物件という言葉があるのですが、かつては当たり前のように建てられていた住宅であっても、いまの法律では建物を立て直すことのできない家屋がたくさんあります。道路に面する土地の幅(間口)が狭い家、他人の敷地を通らないと通行できない家などです。

現在の法律において正しいとみなされる物件への融資でなければ、違法建築物件や何らかの瑕疵がある物件への融資となる可能性があります。そのような物件に住宅ローンを貸して、住宅ローンの返済が滞った場合にはどうなるでしょう。金融機関は家を売却して住宅ローンを回収しようとするのですが、法令に違反している物件は買い手がつかない可能性もあり、売れたとしても格安になる恐れがあります。

つまり、銀行のコンプライアンス上も問題がありますし、債権回収の視点でも問題が出てくるのです。

(8)健康状態
関係なくない?と思うかもしれませんが、住宅ローンを借りるには身体が健康であることが大前提です。完済年齢までしっかりと働くことが前提にあるからです。

とはいえ、人生何が起こるか分からないもの。万が一亡くなったらと不安に思う人もいるでしょう。そんな不安をカバーするのが、住宅ローンを借りる際に一般的に加入が義務づけられている団体信用生命保険(団信)という生命保険です。もしもの場合は、保険金で住宅ローンを返す仕組みになっています。

ただ、団信は生命保険ですから、健康でないと加入できません。団信に入りたいがために、健康であると偽って加入する人も相応にいるようですが、健康状態の告知を偽って加入すると、最悪の場合住宅ローンの一括返済を求められ、対応できなければ自宅を売却させられるリスクもあります。

一方、連載2回目で後述する「フラット35」であれば、団体信用生命保険不要で住宅ローンを借りることもできます。場合によってはすでに加入している生命保険を団体信用生命保険の代わりに使うこともできます。意外にも生命保険が大切になってくるのが、住宅ローンの審査なのです。

攻略するには、まず相手を知ることから!

以上、8つの審査基準についてお伝えしました。こんな基準を満たせる自信がない!と思われた方もいるのではないでしょうか。でも、大丈夫です。
何事も攻略するには、まず相手を知る必要があります。2回目では、これら8つの基準を踏まえ、どのように対策すればいいかを解説します。

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高橋成壽(たかはし なるひさ)
慶応大学総合政策学部卒業後、金融系のキャリアを経て、2007年にファイナンシャルプランナー(FP)として独立。みなさんと同様にフリーランスとして10年以上働いてきました。現在は複数の事業に関係し、フリーランス、一人社長、零細企業経営など数足の草鞋で生計を成り立たせています。物心ついたころからお金が好きで、FPである以前に日々お金について研究しています。小学校、高校ではキャリア形成の一環でお金の講演を実施したり、大学ではお金の授業を受け持っています。私が企画運営している無料FP相談であるライフプランの窓口(https://lifeplannomadoguchi.com/)、住もうよ!マイホーム(https://sumou-myhome.org/)では、フリーランスの皆様からの相談も喜んでお伺いしております。2020年より東海大学非常勤講師。Yahoo!ニュース(個人)、東洋経済オンライン、SankeiBiz、会社四季報オンライン、BizSPA!フレッシュなどに記事を提供しています。

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