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「学習」=「知識やスキルのインプット」ではない!?未来が見えない今こそ必要な「アンラーニング論」

社会変化のスピードが早く、有効だった知見や経験がすぐに陳腐化してしまう時代、常に自分をアップデートしておくことが重要です。
特にフリーランスは自分をアップデートすることに敏感になっておく必要があると思っています。
アップデート、つまり「学ぶこと(学習)」はフリーランスの生命線と言えるのではないでしょうか。

入学式、入社式が行われる春。
新しく何かを始めたくなる春。

そんな季節に「学ぶこと(学習)」の本質に触れることができるこちらの本をお勧めします。

著者の長岡健さんは慶應義塾大学経済学部卒後、英国ランカスター大学大学院・博士課程を修了。
組織論、社会論、コミュニケーション論、学習論の視点から、多様なステークホールダーが織りなす関係の諸相を読み解き、創造的な活動としての「学習」を再構成していく研究活動に取り組んでいます。
現在、アンラーニング、サードプレイス、ワークショップ、エスノグラフィーといった概念を手掛かりとして、「創造的なコラボレーション」の新たな意味と可能性を探るプロジェクトを展開中です。

本書には「学ぶこと(学習)」を単なる「知識やスキルのインプット」ではなく、「創造的な活動」として意味づけ直すことで、自分らしい「働き方・生き方」を見つけることができるのではないかと書いてあります。

そして、働き方・生き方・学習の関係を再構築するキーワードとして「アンラーニング」という言葉が登場します。

著者は冒頭で、このキーワードを用いて以下のように綴っています。
「なぜ自分は学ぶのかを考えながら、進むべき方向や目指したい未来像を主体的に探索し、私たち自身が変わり続けた先にあるのが、古い価値観や慣習に捉われないワークスタイルや未来の常識を先取りしたライフスタイル。
このような働き方・生き方を『アンラーニングしながら働き、生きる』と表現する。」

新しいワークスタイルを切り開く先駆者の5人

「アンラーニングしながら働き、生きる」ということをイメージできるように5人の先駆者が紹介されています。

・神谷俊さん(株式会社エスノグラファー代表取締役)
・倉貫義人さん(株式会社ソニックガーデン代表取締役)
・青木純さん(株式会社まめくらし 代表取締役)
・吉岡マコさん(NPO法人Single Mothers’ Sisterhood代表)
・影山知明さん(クルミドコーヒー店主)

神谷さんは「仕事の報酬は学習機会」という考えを実践しながら公私のバランスを実現しています。
倉貫さんは先入観抜きの自由な対話を繰り返しながら「遊ぶように働くこと」を実践しています。
青木さんは「見返りを求めない人間関係」を構築し自由な発想で仕事を膨らませることを楽しんでいます。
吉岡さんは「仕事と仕事以外に境界線を引かず」常に変化し続けています。
影山さんは「独自の社会的ビジョンを発信」しながらビジネス実践者として新たな社会の可能性を追求しています。

活躍しているフィールドも活動内容も異なる5人だけれど、一つの共通点があります。
それは「古い価値観や習慣に縛られず、世間的な常識や狭い世界だけで通用するやり方から自由になって、独自の道を歩んでいる。」ということです。
まさに「アンラーニングしながら働き、生きる」を体現している人たちです。

また、5人が5人ともいつも楽しそうでイキイキしているそうです。
ここでの「楽しむ」という言葉もただ趣味や娯楽を消費することではなく仕事を「真面目に楽しむ」という意味です。
仕事を真剣に楽しむことができる働き方、生き方は最高だと思います。

続いてどうすれば先駆者の5人のようにアンラーニングしながら働き、生きることができるのかが書いてあります。

自分の価値観を疑う「越境」というスタイル

「アンラーニングしながら働き、生きる」を実現するために大切なのは「越境」だと長岡さんは言います。
この「越境」は、何かを学ぶために外の世界に行く、いわゆる「越境学習」の「越境」とは意味が異なります。

長岡さんの言う「越境」とは、例えば

・特に興味があるわけではないテーマの話を聴くこと。
・仕事と関係ない活動に参加すること。
・自分と異なる価値観を持つ人に出会うこと。

などです。

つまり「越境」とは自分をあえて不安定な状態に置き、自分の中の「正しい」考え方や物の見方を「揺さぶる」ことを意味しています。

自分の考え方やモノの見方を揺さぶる(越境)ことで、「このやり方を捨てたほうがいい」または「このままのやり方で進もう」という判断(アンラーニング)ができるようになると書いてあります。
つまり「アンラーニング」は「越境」というプロセスの結果なのです。「アンラーニングしながら働き、生きる」ためには「越境」というプロセスが欠かせないということです。

先駆者の5人は「越境」というプロセスを経ています。
人と出会う、人と対話する、新しいフィールドに飛び込む、安全地帯に留まらない、脱予定調和、こだわらない、など。
この「越境」があったからこそ、古い価値観や習慣に縛られず、世間的な常識や狭い世界だけで通用するやり方から自由になり独自の道を歩むことが出来ているのです。

さらにもう少し深く「アンラーニングしながら働き、生きる」ということを理解できるように、先駆者5人に共通している一つのあり方が説明してありました。

手段化しない働き方・生き方

先駆者である5人には「活動を手段化しない」という共通したスタンスがあるそうです。

それは5人の言葉から読み取ることができます。
「面白いし興味があるからやっているんです。」
「目の前に現れてきた好奇心をくすぐることに反応してとりあえずやってみようと~」
「成果や見返りを求めないコミニュケーションを重ねていきました。」
「仕事に関係あるなしを気にせず~」
「成果やゴール(目的)を最初に定義していかに最短距離で到着するかを追求し始めるとそこまでの道のりは『手段』になってしまう。」
「何が自分にとって意味ある事かはやってみないとわからない。」

これらの言葉から「自分の活動を目的達成の手段とは見なさない働き方・生き方」が立ち現れてきます。

先駆者の一人である影山さんはこのように言います。
「大切なのはやりたいという気持ちがどこまで強いかであって、どんな成果が見込めるかをやる前に明確にすることではない。」

先駆者の5人は誰かが決めた目的を無批判に受け入れその目的に向かって疾走するのではなく、あくまでも自分の中の「やりたい」を実現するために活動しているのです。

先駆者である5人の躍動する姿、「越境」というキーワードを通して「アンラーニングしながら働き、生きる」という言葉の全容が見えてきました。

目的をアンタッチャブルな与件とせず、
常に自分の中の「正しさ」を揺さぶりつづけ、
行動を縛られることなく、
判断を他者に依存しない心の自由さを醸成すること。

これが「手段化しない働き方・生き方」であり、つまり「アンラーニングしながら働き、生きること」なのです。

私も春から「越境」にトライしてみようと思っています。
いつもとは違う種類の本を読んだり、
仕事とは関係のないウェビナーに出てみたり、
新しい出会いを探したり。
自分を揺さぶることを楽しんで行きたいと思っています。

平井圭子
富山県出身。青山学院大学経営学部経営学科卒。
プロフェッショナルファームで10年以上人事業務に従事。妊娠・出産を経て人事系フリーランス&キャリアカウンセラーとして独立。現在はベンチャー企業の人事業務支援、大手法人のダイバーシティ&インクルージョン推進支援、大学・高校での相談業務に携わる。
仕事の目標は仕事が楽しいと思える人を増やすこと。
プライベートでやりたいことは全国の素敵な本屋さん巡りをすること。

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