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脱「ひとりブラック企業」!時間に追われずに「じぶん時間」を取り戻すための一冊

「生産性が高いことは褒められることであり豊かさにつながる」と聞いて、違和感を感じる人は少ないのではないでしょうか。
生産性を上げて、短時間で仕事の成果を出して空いた時間を自分の趣味に使いたい、と考える人もいるかもしれません。

生産性とは仕事の成果と費やした時間の割合のことを指します。 同じ労働時間で成果が大きいほど生産性が高いといえます。

✔複数の仕事を掛け持ち時間を効率的に使って仕事をこなす
✔移動時間にはスマホやPCでメッセージに返信する
✔カレンダーに隙間があれば会議をパズルのピースを埋めるように詰め込む

このような働き方が生産性の高い働き方と言えます。

生産性の高い働き方をすれば自分の自由になる時間が作れそうですが、「一向に自由な時間が増えない」「逆に以前より忙しくなってしまった」という声を聞くこともあります。フリーランスの場合には「ひとりブラック企業」のような状態に陥っている人もいると聞きます。

なぜこのようなことが起こるのでしょう。

今回ご紹介する本、『じぶん時間を生きる』にその答えを見いだすことが出来ました。

この本にはコロナ禍が社会にもたらした変化、著者に起こった思考のリセット、そして著者自身の「軽井沢移住」について書いてあります。

著者は佐宗邦威さんです。佐宗さんは、米プロクター&ギャンブル(P&G)でマーケターとして数々のヒット商品を手掛けた後、ソニー クリエイティブセンターに参画。新規事業創出プログラムの立ち上げなどに携わった後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を設立しました。『直感と論理をつなぐ思考法』『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』『ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION』など著書も多数。多方面で活躍されています。

仕事の効率を上げれば上げるほど、仕事が増える

コロナ前、著者は「生産性の罠」にはまっていたそうです。

効率よく仕事をこなす
→余白時間を作る
→新しい案件が入ってくる
→効率よく仕事をこなす
→余白時間を作る
→新しい案件が入ってくる
→効率よく仕事をこなす
→余白時間を作る

「効率よく仕事をすればするほど結果的に仕事が増えていった」と書いてあります。

なぜこのようなことが起こるのか、そのメカニズムが書いてありました。

原因は「刺激」と「ドーパミン」でした。

我々は一日のうちのかなりの時間、スマホやPCと接続しています。そしてスマホやPCを通して、次々と新しい情報や新しい仕事に出会っています。とても刺激的な毎日です。

刺激を受けると我々の脳ではドーパミンが分泌されます。ドーパミンは別名やる気ホルモンです。

スマホやPCから情報は刺激そのものです。
常にスマホやPCがそばにある我々の脳は、常に刺激にさらされていると言えます。つまり常に脳の中でドーパミンが出続けている状態になっているのです。

刺激に慣れた我々の脳は情報のインプット(刺激)がないと退屈や不安を感じるようになります。この状態を「中毒状態」と表現してありました。

この刺激には「仕事」も含まれるのです。

様々な便利ツールを使いながら生産性を上げて仕事をすることで脳は刺激を受けます。刺激を受けた脳では、ドーパミン(やる気ホルモン)が分泌されます。

いわゆる「ハイな状態」に突入するのです。すると仕事をしていないと不安と退屈を感じ始めます。その不安や退屈を避けるためにまた新たな刺激である仕事を入れてしまうのです。

本には「ドーパミンによって動かされている」と書いてありました。

その結果、効率よく仕事をすればするほど結果的に仕事が増えてしまうメカニズムが生まれるそうです。

私自身、効率よく仕事をしてうまくいくと、満足感、高揚感、達成感を覚えることがあります。なんだか楽しくなってしまい、疲れているのに休みをとらず、仕事をし続けてしまうことがあります。

仕事を一生懸命することはよいことですが、「中毒状態」になってはいけません。気が付かないうちに自分の健康状態や大切なものを犠牲にしてしまう可能性が出てきます。

「中毒状態になっていないか」、自分に問いかけることを忘れないようにしたいものです。

じぶん時間を生きる生き方とは?

著者は生産性を追いかける生活をする中で「情報に反応するだけの生活を続けるといつか病気になってしまうのではないか」と感じるようになったそうです。

そこで、以下の生活にシフトすることを決めます。

「外の情報に反応する生活ではなく自分の気持ちを大切にする生活へ」
「他人を主語にした生き方ではなく自分を主語にした生き方へ」

このような生き方を「じぶん時間を生きる生き方」と表現してあります。

著者は「じぶん時間を生きる生き方」として東京から軽井沢への「移住」を選択しました。移住後は家族との時間や自然との触れ合いを大切にするようになり「じぶん時間を生きる」ことができるようになったそうです。

「じぶん時間を生きる」ために移住が必須なのではありません。移住は一例です。
「じぶん時間を生きる」とは自分らしい生き方をすることを指します。
他人や社会の期待に縛られずに、自分の本当の欲求や価値観に基づいて生きる生き方のことです。

移住しなくても、自分のペースで自分の欲求や価値観に沿って、自分のやりたいことが出来ていれば、いまここでじぶん時間を生きることができるのです。
本には「誰にでもできることだ」と書いてありました。

「じぶんの時間の生き方」は100人いたら100通り、人数分あるのかもしれません。

じぶん時間を有効に使うためのアドバイス

コロナ禍で在宅ワークが主流になり自分の「好き」や「やりたい」に向き合う余白が生まれた人も多いのではないでしょうか。やりたいことをやるために、違う仕事をはじめたり著者のように移住した人もいるかもしれません。

本には「在宅ワークはじぶん時間を作り出すことができる」と書いてありました。ただ一方で過ごし方次第では時間を持て余してしまう可能性もあるとも。
そこで本には「じぶん時間をより有効に使うための7つのアドバイス」が書いてありました。

①スマホ・PCの通知を全て切る。
②ゆっくり深呼吸して周囲の景色を見つめる。
③ボディ・スキャニングする。
④ビジョン瞑想する。
⑤時計から離れる時間を決める。
⑥ゆっくり歩いて散歩に行く。
⑦自然の変化に意識を向ける。

日々の過ごし方のちょっとした工夫だけでも、より質の高い「じぶん時間」をつくることができるそうです。
せっかく作り出した「じぶん時間」、少しの工夫でより有効に使いたいものです。

「選択と集中」、「いい人をやめる勇気」

しかし、在宅ワークが広がって「じぶん時間」が作りやすくなったと言っても、「忙しくてそれどころではない」「仕事をどのようにコントロールしたらよいのかわからない」と悩んでいる人もいるかもしれません。

じぶん時間を作るために望ましいことは
「自分が夢中になれることに集中し「やらされ仕事」をできるだけ排除すること」
と書いてあります。

そして

✔いい人をやめること
✔勇気をもって断ること
✔優先順位の高いことにフォーカスさせてもらうこと

このようなことをしないといつまでたっても時間は自分のものにはならないそうです。

ただ、「やらされ仕事」を断るだけでは不十分だそうです。

「自分が熱中してやりたいことを伝えた上で、だから優先順位が低いという形で自分が熱中できない仕事を排除していく必要がある」
と書いています。どうやら、「熱中」が大きなポイントのようです。

自分の気持ちを軸に仕事を大きく分類すると「やらされ仕事(やりたくない仕事)」「熱中できない仕事(やってもやらなくてもどちらでもよい仕事)」「熱中できる仕事(やりたい仕事)」に分けられるのではないでしょうか。

著者は「じぶん時間」を増やすには、「やらされ仕事(やりたくない仕事)」を断るだけでなく「熱中できない仕事(やってもやらなくてもどちらでもよい仕事)」も排除する必要があると考えています。

「やらされ仕事(やりたくない仕事)」と「熱中できない仕事(やってもやらなくてもどちらでもよい仕事)」の両方を排除し、自分の時間を「熱中できる仕事(やりたい仕事)」だけで埋めることができたとき、ようやく「じぶん時間」が増えていくのです。まさに「選択と集中」です。

「仕事というのはほっといても膨れ上がってくる。自分が熱中できるものに集中し、それ以外の仕事は勇気をもって断る」
とも書いてありました。

「じぶん時間」を増やすには仕事を断る勇気、つまりいい人をやめる勇気も必要ということです。
「頼まれたから…」「嫌じゃないし…」「断りにくいし…」と仕事を引き受けてしまうことありませんか?

選択と集中、そしていい人をやめる勇気、なかなか難しいことですが、「じぶん時間」を増やすために、私自身もトライしてみようと思いました!

予定表を活用し、空白の時間をブロックする

最後に「じぶん時間」を有意義に過ごすための行動のヒントが4つ書いてありました。
予定表の活用です。

①3か月~半年前に1~2週間の空白の時間をブロックしておく。
旅行やワーケーションなど、やりたいことに時間を使えるように前もって余白を作っておくということです。

②1週間に半日程度の時間を定期的にブロックする。
振り返りや思考をめぐらす時間を確保するということです。

③料理や子育てなどで自分が積極的に時間を使いたいものを優先してブロックする。
自分を大切にする時間です。優先順位をじっくり考えるよい機会にもなりそうです。

④趣味の時間をブロックする。
つい後回しにしがちな自分の趣味の時間。これも自分を大切にする時間です。

この4つの行動は「自分で自分の時間をどう使うかを決める練習」のようです。簡単に見えてなかなか難しそうですが、これもトライしてみようと思っています。

「じぶん時間へのシフト」は、誰でもできることです。
しかし、それにはいい人をやめたり、仕事を断るなど勇気や決断が必要です。
また自分の本当の欲求や価値観を見つけるためには、自分と向き合うことも必要になります。

フリーランスは自分で自分の時間や働き方をマネジメントしなければなりません。
自分で自分をコントロールすることは簡単なようで非常に難しいものです。
なぜなら「まだやれるだろう」とアクセルを踏む人と「これ以上は止めたほうがいい」とブレーキをかける人が同じだからです。
アクセルばかり踏まないように、ブレーキばかりかけないように、自分にとっての「いい塩梅」を知っておくことはとても大切なことだと感じています。

平井圭子
富山県出身。青山学院大学経営学部経営学科卒。
プロフェッショナルファームで10年以上人事業務に従事。妊娠・出産を経て人事系フリーランス&キャリアカウンセラーとして独立。現在はベンチャー企業の人事業務支援、大手法人のダイバーシティ&インクルージョン推進支援、大学・高校での相談業務に携わる。
仕事の目標は仕事が楽しいと思える人を増やすこと。
プライベートでやりたいことは全国の素敵な本屋さん巡りをすること。


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