見出し画像

新生活で疲れた心に。 ホッとできる時間をくれる絵本3選

春は新しい仕事がはじまったり、新しい出会いがあったり、心躍ることが多い季節です。
一方で、環境の変化や新しい仕事などで疲れを感じる人が増え、脳も心も休まらない時期でもあります。
そんな日々だからこそ、脳も心もお休みさせてあげる時間を持つことが大切なのかもしれません。

ちょっとでもホッとできる時間を作るために、オススメなのが「絵本」です。
大人だからこそ、深く味わうことのできる絵本を3冊紹介します。

【1冊目】人生を支えてくれる言葉がたくさん詰まった素敵な一冊

1冊目は、『ぼく モグラ キツネ 馬』(飛鳥新社)です。

コロナ禍で、本書のイラストや名言はSNSでシェアされ、イギリス、アメリカでは「人々の希望をつなぐ本」として社会現象にもなりました。
2020年にイギリスで「最も売れた本」になり、アメリカでも「2020年のベストブック」にも選ばれたほど! 今では、累計550万部突破の世界的ベストセラーです。

この本は少年(ぼく)がモグラ、キツネ、馬と出会い、対話をしながら旅をする物語です。
旅の間に交わされる一言一言が心に響いてきます。

少年(ぼく)はモグラと出会い、旅が始まります。

モグラは少年に「大きくなったら何になりたいか」と聞きます。
少年(ぼく)はこう答えます。

「やさしくなりたい」

一般的に、「将来何になりたいか」と聞かれたとき、職業名を答えることが多いのではないでしょうか。
でも、この本の主人公である少年(ぼく)は、職業ではなく「やさしくなりたい」と答えた。こんなふうに答えることが許される社会が本当に成熟した豊かな社会かもしれません。

少年(ぼく)がモグラに「一番の時間の無駄は何か」と聞きます。
モグラはこう答えます。

「じぶんをだれかとくらべることだね」

ラッセルの「幸福論」にも、「他人と比較してものを考える習慣は致命的な習慣である」と書いてあります。
いまの社会はSNSの拡がりに伴い、自分と他者を比較しやすくなっています。だからこそ、「時間の無駄遣い」について意識して過ごしたいものです。

次に少年(ぼく)とモグラはキツネに出会います。

モグラを脅し牙をむくキツネ。そのキツネの首にはハリガネが絡みついています。このままだとキツネは死んでしまいます。脅されているにもかかわらずモグラはキツネのハリガネを歯で嚙み切り、キツネを助けました。

キツネを 助けた後、モグラはこう言います。

「なにかがおきたときにどうふるまうか。
それこそが、オイラたちにあたえられているさいこうのじゆうってもんさ」

モグラの言う本当の自由とは「自分で考えて自分で行動すること」です。
仕事でもプライベートでも「自由なはずなのに、なぜか心からの自由を感じられない」ということがあります。その答えはこのモグラの言葉にあるのかもしれません。

次に少年(ぼく)とモグラとキツネは馬に出会います。
心に響く対話が続きます。

「いままでにあなたがいったなかでいちばんゆうかんだったことばは?」
「たすけて」
「いちばん強かったのはいつ?」
「弱さをみせることができたとき」
「いちばんのおもいちがいは?」
「かんぺきじゃないといけないと思うことだ。」

助けてって言っていい。
弱いところがあっていい。
パーフェクトじゃなくてベストでいい。
一人一人がそう思えたら、いまよりもう少し寛容でやさしい社会になるような気がします。

旅の最後にモグラが少年(ぼく)にこの旅でみつけたことは何かと聞きます。
少年(ぼく)の答えは、

「ぼくはぼくのままでいいってこと」

「自分は自分のままでよくて別の誰かになる必要はない」、とてもシンプルな言葉ですがとても勇気を貰える言葉です。

美しいイラストとともに、人生を支えてくれる言葉がたくさん詰まった素敵な一冊でした。

【2冊目】「私たちはどう生きるべきか」ということを考えさせてくれる一冊

2冊目は『大きなパンダと小さなドラゴン』(サンマーク出版)です。

著者はジェームズ・ノーブリーさん。作家でありアーティストでもあり活動家でもあるパラレルワーカーです。動物と自然を愛し、長年にわたってヴィーガン(ピュアベジタリアン)のライフスタイルを実践しており、ネコに特化した動物保護団体「キャット・プロテクション」でボランティア活動にも携わっています。

本書は、パンダとドラゴンが、春夏秋冬そしてまた春と、季節を味わいながら旅をするお話です。旅をしながら本当に大切なことや美しいものをたくさん見つけていきます
世界33か国で刊行されており、こちらも世界的なベストセラーです。

春。
パンダはドラゴンと出会い、旅が始まります。

パンダはドラゴンに、旅に出かけるのと行き先を決めるのはどちらが大事かと聞きます。
ドラゴンはこう答えます。

「だいじなのはだれといっしょにいくか じゃないかな」

「早く行きたければ、ひとりで行け。遠くまで行きたければ、みんなで行け。」というアフリカのことわざを思い出しました。

「何をするか」と同じくらい、もしかしたらそれ以上に「誰とするか」は大切なのかもしれません。自分が「誰と行きたいのか」を考えるだけでなく、自分が「一緒に行きたい」と思ってもらえる人になりたいなと思わせてくれます。

自分の未熟さを憂うドラゴン。
桜の木の下でパンダはこう言います。

「サクラの木はじぶんをほかの木とくらべたりしない ただ満開の花を咲かせるだけ」

先に紹介した『ぼく モグラ キツネ 馬』にもこの言葉に近い意味の言葉が書いてありました。それぞれの木にそれぞれの美しさがあるように、人ぞれぞれ違う魅力があります。歌にもありますが、自分の花を咲かせることだけに懸命になれば良いのだと思います。

道に迷ったパンダとドラゴン。
地図を見ても「どこにいけばいいのかわからない」と言って途方に暮れているドラゴンをみて、パンダはこう言います。

「地図には行き先はかかれていないからね 道はじぶんでみつけるものだよ」

自分の人生の行き先を決め、未知なる道を歩むことは不安や恐れが伴います。
でも自分の人生を自分らしく生きるには、自分で行き先を決め、勇気を出して一歩踏み出すしかありません。自分で決めることや未知なることを過度に恐れることなく、出来れば楽しむくらいの気持ちの余裕を持ちたいものです。

夏。
道に迷いながら、ときに休みながら、パンダとドラゴンの旅は続きます。

すごくきれいな庭を見つけたパンダとドラゴン。
パンダはこう言います。

「なんども なんども 道に迷ったから みつけられたんだ」

目的地に最短距離、最短時間でたどり着くことは効率的です。でも道に迷ったからこそ出会えた景色もあるはずです。目的地にたどり着くことも大切ですが、その道中を楽しむことができたら人生は豊かなものになるような気がします。

秋。
落ち葉に冬の気配を感じながらパンダとドラゴンの旅は続きます。

ドラゴンは照り葉の木に腰掛けながら、みんなにやさしくすることは難しいと言います。
パンダはこう言います。

「そうだね でもいちばんむずかしいのは じぶんにやさしくすること。とにかくやってみよう」

疲れたなあと感じるとき、もしかしたらそれは「自分に優しくできていない」というサインなのかもしれません。
頑張り屋さんで真面目で常に周囲を気遣いみんなに優しい人ほど自分に優しくできていないことが多いような気がします。他者に向ける優しさと同じくらいの優しさを自分にも向けてみてもいいのかもしれません。

冬。
凍てつく寒さの中、パンダとドラゴンの旅は続きます。

「新年の願い事を考えるのを忘れてしまった」と言ったドラゴンに、パンダはこう言います。

「だいじょうぶ なにかを変えたいとおもったら いますぐ はじめればいい」

何かをやってみたいと思っても「もう遅いかな」「まだ早いかな」と迷いがでてしまうことがあります。そして結局やらずじまいになることもあります。
やってしまった後悔は段々小さくなるけれど、やらなかった後悔は段々大きくなるとも言われます。何かを変えたい、何かを始めたいと思ったその時に動きだせる軽やかさと勇気を備えておきたいものです。

そしてまた春が巡ってきます。
物語は終わりますが、パンダとドラゴンの旅はまだ続いていきます。

可愛らしいパンダとドラゴンのイラストと共に「私たちはどう生きるべきか」ということを考えさせてくれる一冊でした。水墨画を思わせる風景画も印象的です。

【3冊目】一人一人が世界で唯一無二の存在だと気づかせてくれる一冊

3冊目は、『12の贈り物』(ポプラ社)です。

このお話は1987年に著者であるシャーリーン・コスタンゾさんが、ご自身のお子さんたちのために書いたものです。お子さんたちが巣立ったあと、「さらに多くの子どもたちへ希望と愛のメッセージを届けたい」と考え、私家版として出版した本です。

本書は、誕生の瞬間にだれもが平等に授かっていた「12の贈り物」について書いてあります。

12の贈り物とは
「力」「美しさ」「勇気」「信じる心」「希望」「よろこび」「才能」「想像力」「敬う心」「知恵」「相」「誠実」です。

12個すべてがとても美しい贈り物です。

中でも7番目の贈り物についての説明が印象的でした。

「才能」についてです。

才能というと、特別な人が持っている特別な能力のように捉えがちです。
しかしこの本に出てくる「才能」は少し違っていました。

「あなたがあなたらしくあることのすべてがかけがえのない特別な力となるのです。あなたがあなたらしく生きたあかしをみて、人はそれを才能とよぶでしょう」

誰もが「自分」という特別な才能を持っているということです。
自分らしくあること、そのこと自体が特別な力であり、それこそが才能なのです。
他者と比較して特別秀でた能力がないからと落ち込む必要はなく、「自分」という才能を開花させればいいのだ、ということを教えられます。

「12の贈り物」の説明の後、もうひとつの「贈り物」について書いてありました。
それはただの贈り物ではなく「最高の贈り物」です。

「そして、最高の贈り物がもうひとつあります。それはあなた自身です」

一人一人が世界で唯一無二の存在だということを思い出させてくれます。
そしてかけがえのないギフトをすでにたくさん手にしていることを教えられました。
この本をいつも手元に置いて自分に授けられた12個+1個の素晴らしい贈り物に感謝していきたいと思います。

思いがけない「ギフト」に出会える

大人になってから読む絵本は格別です。
文字が少ないからこそ、自分流に本の世界観を味わうことができます。

疲れた時、
優しい気持ちになりたい時、
新しい自分に出会いたい時、
勇気を出したい時など、
絵本を開くと思いがけない「ギフト」に出会えるかもしれません。


平井圭子
富山県出身。青山学院大学経営学部経営学科卒。
プロフェッショナルファームで10年以上人事業務に従事。妊娠・出産を経て人事系フリーランス&キャリアカウンセラーとして独立。現在はベンチャー企業の人事業務支援、大手法人のダイバーシティ&インクルージョン推進支援、大学・高校での相談業務に携わる。
仕事の目標は仕事が楽しいと思える人を増やすこと。
プライベートでやりたいことは全国の素敵な本屋さん巡りをすること。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?