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クライアントの無茶ぶりは、この6パターンで、華麗にかわそう〜ワンランク上のフリーランスになる!〜

外資系コンサルティング会社を経て、現在、「プレゼン」「資料作成」「聞き方・話し方」などビジネスに使えるノウハウを講師業や執筆業を通して、幅広く発信されている清水久三子さん。

「コンサルティング会社で学んだ考え方やビジネススキルは、独立後の自分の事業にも役立つことが多い」と語る清水さんは、実際、今まで仕事が途切れたことがなく、各方面で引っ張りだこだそう!

そんなプロフェッショナル・フリーランスの清水さんに、フリーランスとして一皮むけるための極意をご紹介いただくのが、新連載「ワンランク上のフリーランスになる!」です。

第1回目のテーマは「無茶振りを華麗にかわす術」。さて、どうすれば”華麗に”かわすことができるのでしょうか?


無茶ぶり対策は、フリーランスが長く幸せに働くための生存戦略

さて、よくありそうなクライアントからの無茶ぶりとフリーランスの心の声をあげてみましょう。

  • 「今週中に追加で一本、納品してもらえませんか?」(急に言われても・・・)

  • 「とりあえずいい感じでお願いします〜」(曖昧すぎる・・・)

  • 「これも当初の金額内で対応してください」(かなり時間がかかりますが・・・)

  • 「あれみたいな感じでお願いします」(この予算でできるわけないでしょ・・・)

  • 「こういう感じじゃなくて〜」(言うことがコロコロ変わってますけど・・・)

  • 「1週間前倒しでお願いできます?」(そんな短期間でできませんって・・・)

  • 「調査範囲もっと広げてもらえます?」(どこまで広げるの・・・)

フリーランスを不当な無茶ぶりから守る法律として、フリーランス新法が制定されつつありますが、これらが本当に無茶ぶりなのかどうかは、ふられる仕事の内容そのものだけではなく、関係性や受ける自分の状況(予算と工数が合うか)や能力・経験によって決まるので、何を持って無茶というかは一概には難しいでしょう。
ただし、ひとつ言えることは、状況に応じた対応をあらかじめ決めておいたほうがよいということです。

「こういう状況になったらこうする」ということを決めておけば、悶々と悩んだり、ストレスを感じたりすることも減りますし、しぶしぶ受けたものの気がついたらどうにもならない状況に陥っていたという事態も防げます

時間と心のすり減りを極力おさえることは、フリーランスが長く幸せに働くための生存戦略としてとても大切なことです。

どんな時に無茶ぶりは起きる?

では、無茶ぶりが起きがちな状況を洗い出してみましょう。
以下は問題の所在3パターンと対応難易度の高低で6パターンに分類したものです。

無茶ぶりの6つのパターン

大事なのは、この6つに対して、あらかじめ対応方針を決めておくこと。
事態が起こってから考えると、あれこれと迷ってしまったり、無理やり受けてしまったりして、心身ともにすり減る可能性があるためです。

私はコンサルティング会社に勤めていましたが、利害関係者との対応方法が「方法論」として体系化されており、そこから学んだハードなクライアントへの対応方法は、独立してから本当に役に立っています。

以下は私の対応例ですが、自分の場合はこうするといいかも、と考える際の参考にお役立てください。

パターン①意図していない無茶ぶり【相手の問題×対応難易度(低)】

対応策=主導権を握る

クライアント担当者がその仕事の経験が浅かったり、能力が低い場合、その仕事の大変さを理解していないため、意図せず無茶な要求になりがちです。

こういった場合には、一般的な進め方やアウトプット水準、条件や選択肢を提示したり、アドバイスなどをして主導権を握り、頼れるパートナーとしての地位を獲得するとよいでしょう。

・相手が進め方やスケジュール感を理解できていない場合
「通常〇〇日程度のリードタイムだとお考えください」、「御社側でやっていただきたいことはリストにしておきます」

・相手が要求を言語化できない場合
「他社さんではこういうご要望をよくいただきます」、いくつかパターンを出すので、どれが近いか検討してみてください」

・色々な人の意見に振り回されている場合
「関係者の方が〇〇とおっしゃることがよくあります。その場合、こう対応してくださいね」

パターン②関係が浅い【関係性の問題×対応難易度(低)】

対応策=相手の背景を理解する

初めて仕事をする人が相手の場合や、その企業や業界に馴染みがない場合、背景がよく理解できていなかったり、意思疎通しにくいことから、要求の意図が分からないので無茶ぶりに思えてしまうことがあります。

無茶ぶりと感じられる要求が出たら、できるできないの判断をする前に、なぜそういう要求が出たのか、背景を理解する必要があります。

背景を理解するための質問の例

  • 「どういう状態を目指しているのか、詳しくお聞かせください」

  • 「それをご希望する理由をもう少しお聞かせいただけますか?」

  • 「これまではどう対応されていたか、教えていただけますか?」

  • 「どういうことにお困りなのか、もう少し詳しく教えていただけますか?」

こういった質問をあらかじめ新規クライアント(案件)のヒヤリングシートとして準備しておくのも手です。

話しをうかがってみると、自分が知らないその業界特有の特徴などがあったり、以前お付き合いのあった企業やフリーランスの方の仕事に満足がいっていないとか、「なるほど。そういう状況だったら、こういう要求になるよね」と納得できることも多いのです。

無茶ぶりレッテルを貼る前に距離を縮めて相手の背景を理解することで、「だったらこうしてみませんか?」ともっとよいものを提案できる可能性もあります。

パターン③予算・工数オーバー【自分の問題×対応難易度(低)】

対応策=受ける前提で交渉する

自分の能力的には対応可能ではあるものの、予算範囲を超えていたり、仕事のボリュームやスケジュールなどに無理がある場合には、受ける前提での交渉をします。

  • 条件の引き下げ 「この予算であれば、このぐらいのレベルになりますが、よろしいでしょうか?」

  • 優先順位の変更「こちらを優先するのであれば、もともとの方は少し遅らせてもよいでしょうか?」

  • 別料金の提示「他社の仕事も入っているので、特急料金などご検討いただければ調整できます」、「対応にこれくらい時間がかかるのでカスタマイズ費用をいただければ対応できます」

これらは契約段階で修正や変更についての取り決めを交わしておくのが一番ですが、突然言われることもよくありますので、それに備えて交渉条件を整理しておくようにしましょう。

そして、ここからが対応が難しい3つのパターンです。

パターン④意図的な無茶ぶり【相手の問題×対応難易度(高い)】

対応策=断る前提で条件を提示する

いわゆる “モンスタークライアント”は、その要求に応えてきた人がいるために存在してしまっているとも言えます。

「ちょっと無茶かな?」と思ってたけど言ってみたらやってくれた・・・となると「ああ、これでいいんだ」と思い要求がエスカレートしていくわけです。

無理して対応すれば、いつかはよい条件で受注できると思いたくなりますが、それはあまり期待できません。中には悪い条件を無理強いしたり、安い価格で買い叩くことで利益が出ると考えている担当者もいるかもしれません。

断る際のやり方ですが、まずは無茶な要求が出た時点で、「えっ?こういう変更(またはこういう条件を)お受けになる方がいらっしゃるのですか。驚きました。可能かどうか一応検討してみますね」と普通の要求ではないことを伝え一旦持ち帰ります。

仕事の内容や条件を整理した上で、後日「こういう条件(追加料金、納期を遅らせる、品質を低めに設定するなど)なら対応できます。NGであれば残念ながらお受けできません」とお断りします。

前述の「予算・工数オーバー」の場合は、受けることを前提とした交渉ですが、この場合には断るための理由として条件を提示することが違いです。

切られるのが怖くてどうしても受けなければならないという状況だとしても、通常の条件を提示して今回は特別対応だと明示しておかないと、その対応が通常レベルとしてずっと続くことになってしまいます。

パターン⑤価値観に反する【関係性の問題×対応難易度(高い)】

対応策=リスクを説明したうえで断る

では、自分の価値観に反するような内容を無茶ぶりされたときはどうでしょう?
この場合、いくら担当者を理解しようと試みても、お互いの価値観や正義が反しているわけですので、お互いの思いが平行線状態のまま、一向に噛み合わないことがあります。
例えばどういった発言や要求にそれが表れるかあげてみましょう。

・仕事への価値観の違いを感じる発言
「真似していいからチャチャっとやって」、「効果とかどうせ分かんないんだから、とりあえず目立つ感じで」

・倫理的にNGな要求
他社の情報の開示を求められる、利用者の不利になるような仕様の実現を要求する

こういったクライアントからの無茶ぶりは能力やスケジュール的に対応可能だとしても、受けた場合の自分の心理的なすり減りというデメリットがありますし、実際にトラブルにつながるリスクもあります。どういうリスクがあるのかを説明したうえで、お断りしたほうがよいでしょう。

・リスクの説明と断り方
「以前、担当したお客様で、XXXというトラブルがあったので、〇〇さんがお困りになるようなことになるとまずいかと・・・」、「弁護士からXXXのリスクがあるというアドバイスを受けました。何かあったときにご迷惑になりますので・・・」

自分だけではなく、クライアントのことを考えてのリスクだという説明をすることがポイントです。

パターン⑥能力・経験不足【自分の問題×対応難易度(高い)】

対応策=ストレッチ体勢を整える

自分の能力や経験がない仕事を振られると尻込みしてしまいがちですが、これは実はチャンスとも考えられます。

私は外資系に勤めていましたが、「ストレッチアサインメント」と言ってその人を成長させるための仕事や役職のアサインがありました。

フリーランスは上司や会社からストレッチアサインメントをしてもらうことはありません。成長するには、自らコンフォートゾーンを出て、新領域のスキルや経験を積むストレッチゾーンに出ていくことも必要です。

とはいえ、その仕事に失敗してしまったり、どうにかできたとしても自分がつぶれてしまうようなパニックゾーンになってしまうのは本末顛倒です。
そんな時は一人で抱えこむのではなく、色々な人の知恵や力を借りてストレッチゾーンに耐えうるストレッチ体勢を作りましょう。

ストレッチゾーンは「ラーニングゾーン」とも呼ぶ

私も新しい領域の仕事を受ける場合には、講師や著者仲間、コンサルタント仲間に「こういう仕事を受けようと思ってるんだけど、何かアドバイスある?」と聞きます。みんな親身になって色々と教えてくれますし、私自身も聞かれたら出し惜しみせずに知ってることや経験から得たことは何でも伝えるようにしています。

ストレッチゾーンは別名「ラーニングゾーン」とも言われます。フリーランスは孤独だと思われがちですが、同志で助け合うことで学びが深まり、クライアントに出せる価値が高まれば、無茶ぶりを無茶とは感じなくなるのではないでしょうか。

6つのパターンと対応策


清水さん登場のフリパラの記事はこちら!

・フリーランスの「仕事の値付け」「値段交渉」……難しすぎませんか?【フリラン教習所2-1】

・ずっと同じ金額で仕事するの…?フリーランスの単価、どうすれば上がるの問題【フリラン教習所2-2】

清水久三子
大手アパレル企業を経て、外資系コンサルティング会社にて企業変革戦略チームや人材育成部門のリーダーを歴任し、2013年に独立。ビジネス書の執筆やメディアへの寄稿、講演、研修講師などの活動を行う。国内では20冊、海外翻訳で10冊の著書を出版し、年間登壇は140日を超える。(2022年現在) 
著書は、『プロの資料作成力』『一流の学び方』(東洋経済新報社)、『1時間の仕事を15分で終わらせる』『一生食えるプロのPDCA』(かんき出版)『働くママの成功する中学受験』(世界文化社)他多数。Official HP:https://andcreate-official.com

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