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「国際協力×ウェディング」で発展途上国を支援。エシカルウェディングをけん引するWalk in Beauty代表 加唐 花子さん

こんにちは。フリパラ編集部のライター佐藤 梢です。

フリーランス・パラレルキャリアの多様な暮らし・働き方を、取材を通してご紹介する「働き方の挑戦者たち」ですが、今回出会ったのは「七代先を生きる世代まで、美しさの中を歩めますように」という言葉を大切に人生を歩んでいる加唐 花子(かから はなこ)さん。

加唐さんは、まだ小さなお子さん2人の子育てをしながら、“エシカル”をテーマにしたウェディングを実行するプロジェクト「Walk in Beauty」の代表を務めています。

みなさんは「エシカル」という言葉は知っていますか?直訳すると「倫理的」という意味。環境を大切にして、人に地球にやさしい生活を送ろうという考え方のことです。
加唐さんは「Walk in Beauty」というプロジェクトを立ち上げ、エシカルの概念を取り入れたウェディングをプロデュースしています。そこには、彼女の地球、世界、人生、次の世代への強い信念がぎゅっと詰め込まれていました。

walk in beaury_加唐花子さん

<オフィシャル>
https://www.instagram.com/walkinbeauty_ethicalwedding/
https://www.facebook.com/walkinbeautybridal
http://walkinbeautybridal.com/
http://walkinbeauty.sblo.jp/

<ピープル・ツリー>
https://www.peopletree.co.jp/index.html

高校生の時に見た、地雷廃絶の女性活動家によるノーベル平和賞受賞。国際協力が人生のテーマに。

©️知花 加唐花子さん

©️知花

――加唐さんが代表を務める「Walk in Beauty」は、エシカル(地球環境や人に優しい生活を送るという考え方。発展途上国支援とも密接な関係がある取り組み)の考え方を取り入れたウェディングを提案するプロジェクトです。この「Walk in Beauty」という屋号、プロジェクト名の由来についてお聞かせください。

 これはコンセプトでもあるのですが、もともとはネイティブアメリカンの言葉に由来しています。ネイティブアメリカンが使う「こんにちは」とか「アロハ」のように交わす言葉があって、それを英訳した言葉が「Walk in Beauty」。気軽な挨拶なのですが、そこには「七代先を生きる世代まで、美しさの中を歩めますように」という意味が込められています。

ネイティブアメリカンって「七代先の子どもたちの幸せまで考えて、今の自分たちの生き方を選択する信念を持つ」という教えがあるそうなんです。
自分たちの幸せは、七代前のおじいちゃんおばあちゃんがつないできてくれたもの。そのバトンがあったからこそ今の幸せが存在するし、私たちが地球を大切に生きていくことで、七代先の子孫も美しい世界を歩んでいくことができる。

ウェディングは、これから二人がどんな風に生きていくかを周りの人たちに伝える場でもあると思うんです。そんなスタートの時を、過去に感謝したり未来に思いをはせる機会にできたら…そんなウェディングを作れたらいいなという思いから、Walk in Beautyという名前にしました。

――加唐さんの信念やお人柄を感じる由来ですね。「Walk in Beauty」は、エシカルウェディングとしてエシカルの考えに基づいた結婚式を執り行っています。エシカルとは地球環境の保護や、発展途上国支援につながる活動ですが、加唐さんはなぜその分野に関心を持つようになったのでしょうか?

 私の人生の大きなテーマは「国際協力」。国際協力に関心を持ったきっかけは、高校2年生の頃に見た「女性とNGO団体が世界で初めてノーベル平和賞を受賞した」というニュースでした。
ジョディ・ウィリアムズという地雷廃絶の活動家の女性なのですが、そのニュースを見て一気に憧れの存在になりました。
私もボランティア活動はしていましたが、仕事として国際協力ができると知り、人生の方向性を決める大きなきっかけになったんです。大学在学中には国際協力の研究室に所属し、バングラデシュなどの途上国と呼ばれる国の、社会の仕組みについて学んでいました。

――大学卒業後は国際協力の方面へ進まれたのでしょうか?

 いえ、大学卒業後、最初は民間の経営コンサルティング会社に入社しました。
自分はどんな形で国際協力ができるだろう?と自問自答した結果、私は日本から支援する道を選びました。ゆくゆくは自分でNGO団体を立ち上げて…とも考えていたのですが、大学時代の私は「組織って何?」「働くって何?」と。途上国の状況は知っていても、国際協力するための仕事を興すにはまだ何もできない学生だったんです。
そこで、組織を動かすことや目標が達成できる事業の在り方など経営について学ぶため、民間の経営コンサル会社に就職しました。

その後、フェアトレードの老舗であるピープルツリーに転職しました。業務内容が国内での営業活動やフェアトレードの普及と商品販売だったので「これは日本にいる私の役割!」と強く感じましたね。2003年に入社し、2012年まで約10年間在籍しました。

――ピープルツリーで印象的だったのはどのような活動でしたか?

バングラデシュでウェディングドレスを作るプロジェクトが立ち上がり、商品開発を見守り、販売を行ったことですね。本当に美しい手織りと手刺繍でできたウェディングドレス。とてもかわいらしいものが出来上がりました。このプロジェクトが、私の中でエシカルとウェディングが繋がるきっかけになったんです。

――エシカルの考えに基づいた結婚式を執り行う、発想の元になったのですね。

はい、営業としてそのドレスを売るのにはどうしていけばよいかを考えていた時に、ウェディングはなんてフェアトレードの商品を広めるのに最適な場所なのだろうと思ったんです。

結婚式は、販促コストをかけて集客する場と違って、お祝いのために人が集まります。その方々へのギフトがフェアトレード商品だったとしたら…。幸せな空間の中で、フェアトレード商品が人の手に渡っていくとはなんて素敵なことだろうと、ウェディングはフェアトレードを広める理想的な環境だと思いました。

一方で、ウェディングには「裏側」もあることも知っていて、それを解決したいという思いもありました。

――「裏側」とは?

 学生時代に披露宴会場での給仕係のアルバイトをしていたのですが、披露宴終了後にはビール瓶を何本も抱えてザーッと中身を捨てたり、残飯も大皿に集めて捨てていたんです。きらびやかな世界を作るためのお花も同様ですね。
学校にいる時は環境問題や貧困・飢餓について勉強しているのに、アルバイトでは楽しく忙しく働きながらも最後には大量の残飯を捨てている…。
とはいえ、当時はギャップを感じつつも解決策を考えるには至らず、その後その違和感を思い出すこともありませんでした。

それが、エシカルウェディングを仕事にしようと思い立った時に、鮮明によみがえったんです。「ウェディングの裏側を知っているからこそ語れることがある」と思いました。

会社所属時にはなかったプレッシャー。しかしそれと引き換えに得た充実感は何にも代えがたいもの

加唐花子さん_walk in beaury

――現在、Walk in Beautyではどのようにお仕事をされているのか教えてください。

  Walk in Beautyの活動は、エシカルウェディングを広めること、エシカルウェディングをプランニングして実施することです。プランニング等はすべて私一人で行うのですが、ウェディングを行うごとに毎回プロジェクトチームを立ち上げて、当日は10人弱のチームで実施しています。Walk in Beautyの本体としては現時点では私一人ですね。

――プロジェクトチームのメンバーはどんな人たちなのですか。

 最初はピープルツリー時代の元同僚など元々の知り合いによる限りある人材でやっていたのが、だんだんエシカルウェディングを知ってくださる方が増え、「手伝いたい」「参加したい」と声をかけてくださる方が増えました。
ウェディングを挙げるには装飾やカメラマン、ヘアメイクなど多くのアーティストの協力が不可欠ですが、最近ではアーティストの方からお問い合わせくださることも増えました。

エシカルに興味があって個人で活動している方もたくさんいらっしゃるので、エシカルウェディングに共感くださり、そこから「一緒にエシカルを広げていこう」と繋がることもあります。もちろん、こちらから直接オファーすることもあります。あと特徴的なのは、元花嫁さんも手伝ってくださっていることですね。これまで実施したウェディングには、必ず元新婦さんが手を貸してくれています。

――元新婦さんがウェディングをお手伝いするとは初めて聞きました!Walk in Beautyでは、どのようなウェディングプランをご用意されているのですか?

 毎回完全にオリジナルですが、会場探しからすべて行うフルプロデュースの他、ギフトだけ、衣装だけという部分的なプロデュースまでさまざま対応しています。

――カップルに合わせたウェディングを実施されているのですね。さて、加唐さんは二児の母でもありますが、仕事と家庭のバランスはどのようにとっていますか。

子ども中心に仕事と生活のバランスをとっています。昼間、子どもたちが小学校と保育園に行っている時間を使い、自宅オフィスでプランニングをしたり、アーティストの方や業者さんとお会いして打ち合わせしたりしています。あるいは、世の中に発信するためのイメージ画像の撮影、会場との食事の打ち合わせなどもありますね。

©︎ainowa photography 加唐花子さん

©︎ainowa photography

――両立のために気を付けていることは。

 私はすぐに自身のキャパシティを超えるほど仕事をしてしまうので、よく友人にも叱られるんです(笑)。でも今の私にとって最優先は子どもであり、そこは変わりません。子どもとの時間を優先した結果できた時間内で、集中して仕事をするように心掛けています。
ただ、新郎新婦との打ち合わせも土日が多いので、そこは事前に夫と相談して、柔軟に対応できるようにしています。

――会社勤めしていた時と比べて、働きやすさという点ではいかがですか?

 「自分で時間の調整ができる」という点はよいですね。でもその反面、会社勤めしていた時よりも責任の大きさや心のプレッシャーという面で、逃げ出したくなる気持ちと闘わなければならない時間が増えました。そのあたりで「働きやすい」と感じるかどうかが分かれるかもしれませんね。
私の場合はプレッシャーと引き換えに、充実感など何にも代えがたいものを得られている実感があります。友人から「今のほうが圧倒的にクリエイティブ」と言われることもあり、私には今の働き方が合っているのではないかなと思います。

ウェディングという場が、新郎新婦や発展途上国、未来の子どもたちの幸せにつながりますように。

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――Walk in Beautyで結婚式をプロデュースされてきた中で、特に印象的だったエピソードがあれば聞かせてください。

 一つ挙げるとしたら、新郎が青年海外協力隊の隊員になって、日本を離れる直前に実施したウェディングですね。もともとフェアトレードに関心があり、ライフスタイルにもそれが根付いているご夫婦だったので、フェアトレードのものを取り入れた式を挙げたいというご希望をお持ちでした。

このご夫婦がWalk in Beautyにとってフルプロデュースを行った初めてのお客様であることに加え、当時私が0歳の子どもを抱えていたということも印象に残っている理由の一つです。私は神奈川県在住なのですが、ウェディングは静岡県での実施。今となっては0歳児を抱えながらどうやってことを進めたのか思い出せません(笑)。

それ以外にも、食材の調達や会場への食事の相談や交渉など、私にとっても初めてのことが多く、とても勉強になるウェディングとなりました。

――加唐さんの、穏やかな中にもパワフルさを感じさせる雰囲気にぴったりのエピソードですね! 加唐さんにとって、ウェディングとはどういった存在でしょうか?

 これから人生を共にすると決めた新郎新婦が、どんな風に人生を歩んでいきたいかを確認し合い、それを表現する場だと思っています。だから、ウェディングそのものの話をする前に、お二人の生き方や大切にしていることについて聞かせていただくことにすごく時間をかけています。その結果がエシカルにつながることもあるんですよね。

その上で、それをゲストに伝えるにはどんな演出をしたらいいか、どんなアイテムを使ったらいいかなどを話して、お二人らしいウェディングの形を作っています。

――エシカルはウェディング以外でも表現の場があるかと思いますが、今後他の領域にも活動の幅を広げるお考えはありますか?

 先々はあるかもしれませんが、今はまだウェディングでエシカルを取り入れて「こんなことができた!」といった新しい発見や喜びを毎回感じているので、このクオリティをもっと高めていきたいと思っています。ウェディングの件数を増やすのもそうですし、アーティストの方とのつながりももっと広げたいですね。選択肢が広がれば、もっともっとそれぞれの新郎新婦らしい結婚式を挙げることができますから。

それに、現在日本ではホテルや結婚式場のプランにプロデュース料金など全て含まれているケースがほとんどですが、これからは企業ではなく個人が社会を動かす時代。フリーのウェディングプランナーの仕事は増えてくると思います。

自分のこの活動がその方々の参考になり、エシカルウェディングがもっと広まっていったら嬉しいですね。もはやエシカルという表現を使わなくてもいいくらい、当たり前になっていってほしいです。

――子どもの頃に思い描いた国際協力を仕事にすること、ウェディングのアルバイトでの経験、これからやっていきたいことのすべてが繋がっていて、強い信念を感じます。素晴らしいことだと思います。

 国際協力が私が働く理由の大きなテーマのひとつ。フェアトレードの生産者さんにお仕事がいくように、もっと注文が増えるよう世の中に働きかけていきたいですね。人権や環境が守られるようなアイテムがもっとメジャーになって市場に出回り、それを提案する人が増えてほしいと思っています。

その信念は会社に所属していた頃からずっと変わりませんが、独立してからのほうがフェアトレードや国際協力というものをもっと好きになれました。自分が本当に良いと思うもの、その世界感や信念を誰のフィルターも通さず直接的に伝えられることに大きな幸せを感じたり、充実感を得ているのだと思います。

あと、仕事を始めてから充実したことと言えば、自分の生活もそうですね。自分がエシカルウェディングを広めているので、子どもたちにも本質的な幸せや大切にしたいものを自信をもって話すことができます。プラスチックの話をしたり、フェアトレードの生産者さんの絵本を一緒に読んだり…。そういう時間を本当に幸せと感じるようになりました。

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「大変だし、やめたいなって思っても、この仕事はやめちゃいけないといつも立ち返ります。この活動は、大切にして生きていきたいと思っていることだから」と朗らかな笑顔で語る加唐さん。優しい雰囲気の中にも一貫した信念を持ち「フェアトレードやエシカルが当たり前の世の中にしたい」という、伝道師としての強い使命感をお持ちであると感じさせられました。
フリーランスになり、その気持ちはさらに強く、そして透明度を増したようです。その思いに心を打たれ、活動に賛同する人も増え続けていくのではないでしょうか。そして新郎新婦の笑顔とともに、フェアトレードが世の中に広がっていく。幸せな連鎖が続いていくことでしょう。


<プロフィール>
加唐 花子(かから はなこ)
エシカルを取り入れたウェディング(結婚式)の企画・運営を行うプロジェクト「Walk in Beauty」の代表を務める。高校生の頃、平和活動家の女性 ジョディ・ウィリアムズのノーベル平和賞受賞のニュースをきっかけに、国際協力を仕事にすることに関心を抱くようになった。大学在学中は国際協力の研究室に所属し、バングラデシュを始めとする発展途上国について学ぶ。卒業後、民間のコンサル会社で経営について学んだのち、フェアトレードブランド「ピープルツリー」を展開するフェアトレードカンパニー(株)に中途入社。同社にて約10年間、国内の営業やフェアトレード普及、商品販売に従事。その経験を通してウェディングとエシカルの優れた親和性に気づき、Walk in Beautyの立ち上げに至る。現在は、三浦半島の豊かな自然に抱かれたSYOKU-YABO農園を拠点に、有機農法で丁寧に育てた野菜と各地の伝統調味料を使う農園レストランでのアウトドアウェディングのプロデュースをメインに活躍中。
<SYOKU-YABO農園>
syoku-yabo.com
https://www.instagram.com/syokuyabo/
ライター:kozue sato
正社員で会社勤めをしながら、フリーライターとしても活動しているパラレルワーカー。年間パスポート所持歴もあるほど、某テーマパークを愛している。生粋の日本人ながら日本語好きが高じて日本語教師の学校に通うなど、好きなことはトコトン突き詰めたくなる性格。趣味は海外旅行。お気に入りはカナダ、イタリア。

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