画一的な人材活用からの脱却を図る企業に焦点を当てる本連載。目まぐるしく変化する時代を生き抜かなければならない企業は、自社にある役割だけでは社員に十分な経験を積ませられないとの危機感を持ち始めた。前回は、規模も文化も異なるスタートアップ企業への出向で社員を「武者修行」させるパナソニックを取り上げた(「毎週末、泣いていた」 パナソニックはスタートアップで武者修行)。今回は重工業大手のIHI。「重厚長大」とされる産業も、社員の経験の幅を広げようと動き出した。

(写真:西村尚己/アフロ)
(写真:西村尚己/アフロ)

 「兼業や副業はまず認められないと思っていた。社外から(兼業の)依頼を受けたときも、ほとんど無理だろうと思っていた」

 こう話すのは、IHI戦略技術統括本部の大依仁プログラムディレクターだ。現在はIHIで働く傍ら、社外兼業として秋田大学と秋田県立大学で大学改革や産学連携のアドバイザーを務めている。

 大依氏をはじめ、IHIでは現在、若手からシニアまで50人ほどが社外兼業をしている。転機となったのは2021年1月。社外兼業制度を新設し、国内の全従業員約8000人の兼業を容認したのだ。社員ですら認められないと思っていた社外兼業。人材の硬直性が高い印象が強い「重厚長大」な産業も殻を破り、社員のキャリア選択の幅を広げ始めた。

IHI戦略技術統括本部の大依仁プログラムディレクター
IHI戦略技術統括本部の大依仁プログラムディレクター

 実際、19年度のIHIの総離職率は3.5%だった。国内の平均離職率が15%程度なのに比べれば低い水準だ。新卒で採用した社員が定年まで勤め上げるといったキャリアパスが社内ではまだまだ一般的だ。

 そのIHIが新設した社外兼業制度は、社会保険などの関係から「週20時間以上IHIで勤務する」という条件以外に大きな制限はない。他社の従業員として雇用される、フリーランスでコンサルティングを請け負う、スタートアップに参加するなど働き方は様々だ。

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