投資の確定申告で得するポイント もうけと損は相殺する
投資家のための確定申告ガイド(1)
確定申告とは、1年間の収入の合計から経費や各種控除を差し引いて課税所得を確定し、納税する手続きのことを指す。会社員は勤務先の年末調整でこうした手続きを行うため、本来申告は不要だ。
しかし、会社員の中にも「申告しなければならない」人がいる。2000万円を超える給与収入を得ている人、副業で年間20万円を超える所得があった人などだ。
これに対し、払い過ぎた税金を取り戻すために「申告した方がいい」人もいる。例えば、医療費控除や寄付金控除は申告しないと受けられない。住宅ローン控除も、会社員の場合は初年度だけ申告する必要がある。
同様に投資でも「申告しなければならない」人と「申告した方がいい」人がいる。
会社員が少額投資非課税制度(NISA)や特定口座(源泉徴収あり)以外の口座で取引した株式や投資信託の利益が20万円を超えていたら申告が必要。一方で申告すれば、異なる口座や金融商品の間で損益通算をしたり、2023年の損失を24年以降に繰り越したりできるようになる。
「申告しなければならない」「申告した方がいい」に相当する人は、下図の該当する項目を参考に申告の準備を進めよう。
e‐Tax申告が便利に!
申告書の提出方法は大きく2通りある。お勧めは、スマートフォンやパソコンで国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスして申告データを作成し、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を使ってデータをそのまま送信(提出)する方法だ。
特に「マイナンバーカード方式」はカードの交付を受けている人なら税務署に出向く必要もなく、自宅にいながら好きなタイミングで申告の手続きを完了できる。
マイナポータル連携を設定すれば、生命保険料や地震保険料の控除証明書、特定口座年間取引報告書、ふるさと納税の寄付金控除に関する証明書、医療費などのデータが一括取得できる。申告書にも反映されるので手間が大きく省ける。今回の申告から給与所得の源泉徴収票(勤務先の対応が必要)や個人型確定拠出年金(iDeCo)なども新たに連携の対象となる。
損益通算・繰り越し控除のポイント
自分は2023年の株式投資に関して「申告しなければならない」のか、あるいは「申告した方がいい」のか。まずは下のチャートで確認してみよう。
少額投資非課税制度(NISA)や特定口座(源泉徴収あり)の利用者や、年間の利益が20万円以下の投資家に申告義務はない。特定口座(源泉徴収あり)の場合、上場株式などの売買で得た利益からは20.315%の税金(所得税・復興特別所得税・住民税)が差し引かれている。
とはいえ、複数の証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば、ある会社の損益はプラスでも、別の会社はマイナスということもあるだろう。こうした場合は申告して損益通算をすることで課税所得を減らし、プラスの口座から徴収された税金を取り戻せる可能性がある。
同様に、23年に株式投資で大儲けした投資家が同じ「株式グループ」の金融商品で損を出していたら、申告して損益通算を行い、利益を圧縮することも可能だ。
逆に23年に株式や投資信託で大損をした人なら、今回申告しておけば、確定した損失を24〜26年に生じる利益から差し引くことができる。
「株式グループ」とは損益通算NG
東芝やケーヨーへのTOB(株式公開買い付け)は記憶に新しいところだが、2023年はTOBが多い年だった。保有銘柄がTOBの対象となった時、TOBに応じて売却する場合と、応じないでTOB成立後スクイーズアウト(強制買い取り)で上場廃止後に金銭交付を受ける場合とでは、税務上の区分が違ってくるので注意が必要だ。後者だと「非上場株式の譲渡(申告分離課税)」となり、繰り越し控除や、「株式グループ」の金融商品との損益通算ができない。
監修者
NHB税理士法人 福田浩彦さん
SMBC日興証券 ソリューション・アドバイザリー部
税制・制度調査課 下野充代さん、高橋勉さん
(ライター 森田聡子)
[日経マネー2024年3月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
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