映画業界の性暴力撲滅を 女性作家らが声明
映画業界で監督や俳優から性暴力を受けたとする訴えが相次ぐなか、映画原作者の女性作家らが12日、暴力撲滅を求める声明を出した。山内マリコ、柚木麻子の2人が文章をまとめ、賛同者として小川糸、窪美澄、西加奈子、湊かなえら16人が名を連ねている。
声明を出した柚木麻子は「映像化作品の制作に、原作者である作家はほとんどタッチしない。だが自分たちの物語が映像化される際に契約書をしっかり読み、見直し、性加害が生まれそうなことに対して条項を設ければ抑止力になるのではないかと考えた」と語る。さらに「映画制作は大きな船のようなもので、俳優さんたちひとりひとりに声を上げる意思があっても連携が難しい面があるのではないか」と指摘する。
映画界では3月に是枝裕和監督らが性暴力撲滅を訴える声明を出している。家族内の性被害を描いた映画「蜜月」の榊英雄監督から、複数の女性が過去に性的関係を強要されたとの報道を受けたものだ。「蜜月」は3月25日に公開予定だったが、直前に公開が中止された。声明では是枝監督のほか、諏訪敦彦、西川美和ら6人の監督が連名で「立場を利用したあらゆる暴力に反対します」と宣言。賛同者は約280人にのぼっているという。
映画制作の現場における性暴力の問題では、被害を訴える関係者の多くがフリーランスであることも無視できない。組織に属さないため相談できる手段が身近に見つからず、泣き寝入りせざるを得ないこともあるという。自治体などの相談窓口の存在が周知されていない場合も多い。また、トラブルになっても仕事に影響があるのではと心配し、声を上げるのをためらう心理も働きやすい。今後、映画業界がどういった対策を打ち出すのか注目される。
(木原まゆみ、桂星子)