広がるフリーランス、請け負う自分の価値に自信を
奔流eビジネス(流通ウオッチャー 村山らむね氏)
ネット業界は多くのフリーランスに支えられている。私もその1人だ。政府はフリーランスの定義について、①自身で事業等を営んでいる②従業員を雇用していない③実店舗を持たない④農林漁業従業者ではない者とし、法人の経営者を含むとしている。その数は462万人で、就業者全体の約7%とされている。
国も多様な働き方を後押しする立場で、今年4月にフリーランス新法を成立させ、来年の秋には施行される予定だ。従来の労働法ではカバーできないフリーランスの契約などの就労環境の整備を目的としており、大きな第一歩と言える。
その原動力の一つになったであろう組織が、「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」だ。2016年に厚生労働省で『「雇用関係によらない働き方」に関する研究会』が立ち上げられたが、肝心のフリーランス当事者がメンバーに選ばれていなかったことに危機感を覚えた平田麻莉さんが仲間と立ち上げたのが、この協会。17年の1月のことだ。
現在は政府の委員会での提言活動ともに、会員へのアンケートやデータを元にした情報発信、フリーランスへの啓発活動など多様な働き方をサポートするための活動を行っている。年間1万円の有料会員が1万6000人で、登録だけの無料会員やSNSのフォロワーも合わせると現在総数は10万人を超える。
「声を届けることが重要なミッションなので、アンケートの母数を増やしデータとしての説得力を増すためにも無料会員の増加を最重要視している」と平田さん。「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中へ」というビジョンを掲げて活動している。
現在も協会の代表理事を務める平田さんが挙げるフリーランスの課題としては3つあるという。まずは社会保障の面。会社員らの働き方を元にした社会保障制度の網からもれてしまったり、また企業からの負担がないために、過大な健康保険料がかかったりする。
2つ目には「偽装フリーランス」問題がある。働き方は社員と同じなのに業務委託契約を結ばされている。軽貨物配達業や講師、エステシャンなどにこのようなケースが多いという。
3つ目は報酬の適正化。どうしても立場が弱いために従順にならざるを得ず、なかなか報酬アップを言い出せない。インボイス制度が開始されたが、消費税分を実質値引きしないといけないというような場面も予想されるという。
これら課題はありながらも、コロナ禍で場所の制約なく働くことが可能になり、フリーランスで稼ぐ生き方を謳歌する人々ももちろん多く、課題も徐々に解決されていくべきだろう。
例えばネット業界でも、常にすさまじいコストカットと直面している。そのなかでフリーランスにしわ寄せが行きやすい。この機会にフリーランスが無理な仕事を安く請ける都合のいい存在となりやすい環境は改善されるべきだし、仕事を請ける側も自分の値付けに勇気をもってもらいたい。
曖昧で先が見えない時代には大企業の正社員であったとしても、フリーランスマインドを持っていることが重要だろう。平田さんの言う「自律」に対するアンテナを磨いていきたい。
[日経MJ2023年12月8日付]