「オンライン普及でリアルの役割増大」芸術関係者ら討論
第26回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)で20日、「コロナ時代の文化交流」をテーマに日本とフィリピンの文化芸術の専門家がオンラインを交えたパネル討論に臨んだ。ニッセイ基礎研究所研究理事の吉本光宏氏は「オンラインでできることが広がり、オンラインが日常化するほど、リアルな国際文化交流の意義や役割が問い直される」との見解を示した。
新型コロナウイルス下での文化交流について、フィリピンの映画監督のブリランテ・メンドーサ氏は「様々な制約があっても、お互いの文化から学び、理解し合うことが必要なのは変わらない」と強調した。日本とフィリピンの合作映画「義足のボクサー(仮題)」の制作のため、両国で撮影を行ったエピソードを紹介した。
吉本氏は劇場や映画館などの休館が相次いでいることを巡り、「フリーランスのアーティスト、文化従事者へのダメージは深刻」と述べた。そのうえで「若い世代のアーティストたちが、芸術活動の継続を断念したとすれば、将来の文化的損失は計り知れない」との懸念を示した。
メールやアプリを駆使して海外の芸術家と調整し、コロナ下での開催にこぎ着けた事例として、現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2020」を挙げ、表現の場を確保する重要性を訴えた。
モデレーター(司会)を務めた東京大名誉教授の山内昌之氏は冒頭、過去の感染症のパンデミック(世界的大流行)にふれ「文化の創造を止めることはなく、文化の交流を新たな条件のもとで果たしてきた」と指摘。パンデミックが「デジタル化された文化交流を促進させる」との見方を示した。
日本経済新聞社は5月23、24日の両日、「揺れる世界とアジアのリーダーシップ」をテーマに日経フォーラム第29回「アジアの未来」を開催します。会場参加に加え、オンラインでの聴講も可能です。
第29回 開催概要