自分の強みを把握し、セルフブランディングで市場価値を高める秘訣

最近、よく耳にする「セルフブランディング」というワード。「自分の強みをブランドとして確立する」と言われても、自分がブランドにできるほどの強みなんてあるのかと悩む人も少なくないのではないでしょうか。
プレゼンの神として知られる澤円さんに聞いてみたところ、案外身近にあることでできることがあるそうです。そこで今回は、自分の方向性が見えて、毎日がちょっとワクワクしてくるという澤さん流秘訣を皆さんに伝授します。

セルフブランディングイメージ画像
Photo by Adobe Stock

そもそもセルフブランディングとは

セルフブランディングを端的に言えば、「自分はこうなれたら幸せ」=「自分のブランド」という定義を一致させることで、幸せな情報が入ってきやすくなる、ということです。

では、「自分のブランドって何だ?」という話ですが、それに気づくのに効果的なのが他者の視点。よく「自分探しの旅」っていうでしょう。あれは頭の上にメガネを置いたまま、「メガネ、メガネ……」って探しているようなものなのです。

自分のことは、案外自分では見えていないもの。自分にしかわからない良さもあるかもしれませんが、人からのフィードバックで気づかされることは、社会を生きていく上での強みにもなりやすいわけです。

あなたのブランドとなる可能性のあるものは?

そこで、お勧めしているのが、人から「ありがとう」って言われる回数が多いことは何か、改めて考えてみること。それがあなたのブランドとなる可能性が高いのです。

何でもいいんですよ。「急な頼み事も、チャチャっと対応してくれる」「面倒だと言われがちな経費精算が得意」「Excelのシートをまとめるのが速い」「あなたがいると場がなごむとか」など。もっと簡単なことでいうと、「挨拶の仕方が清々しくて褒められる」とかでも。

その「ありがとう」って言われることが、自分にとって望ましいものであるなら、それを自分の「ブランド」にして強固にしていけばいいのです。それが「ブランディング」ということ。別に特別なことじゃなくて構いません。

例えば、Microsoft 365のマイページという機能やGoogleのアカウントに付随情報で自己紹介を書いてみると、検索に引っかかりますよね。誰かが見つけてくれるというのは、その時点でブランディングが強固になるわけです。そうやって一つ一つ試しながら進んでいけばいいのです。

セルフブランディングに注意点はある?

そうやって進めているうちに、何か無理やストレスを感じるとしたら、それは「ありがとう」って言われることでも、自分にとってはあまりうれしくないことなのかもしれません。やりたくないことで、自分のタグが一度ついてしまうと、なかなかそこから抜け出せなくなるからです。

わかりやすい例でいうと、ハリウッド俳優のハリソン・フォード。彼は本来、演技派路線を目指して、演技派俳優としてブランディングしたかったのに、若い頃に『スター・ウォーズ』で演じたハン・ソロ役が当たりすぎたため、アクションスター路線を歩むことを余儀なくされた。これは、セルフブランディングで結構よくある注意点です。

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8,568通り、あなたはどのタイプ?

セルフブランディングをやる上で大事にしたいこと

自分のブランドを把握して、強固にしていく、つまり「セルフブランディング」していく過程で、自分が望む方向性とは少し違う仕事が来たとします。そういう時は自分に舞い込んだチャンスと捉えて、その仕事を受けるべきなのか。それとも自分の路線と違うからと断るべきなのか、私の考えをお伝えします。

「お金」「時間」「体力」で考える

セルフブランディングしていく上で、自分を不幸にしないためにやってほしいのが、今の自分は何にゆとりがあるのか、3つの要素で考えること。3つの要素とは「お金」「時間」「体力」です。

例えば、「時間」はまあまあある。「体力」はあり余っているというなら、体力勝負になりますね。ならば、自分がやりたい方面の仕事でなくても、そこに費やす体力は余っているわけだから、受けてみてもいいでしょう。それこそ何かのチャンスになるかもしれないからです。

ところが、フリーランスで「お金」のために受けるというなら要注意。「お金」のために、やりたくない仕事を受け続けていると、自分のモチベーションも下がるし、相手にも足元を見られやすい。そもそも自分が確立したい「ブランド」ともズレてしまいます。

そういう時は、他に余裕のある「時間」や「体力」を使って、カバーしていく方法を考えればいいのです。

自分のゆとりのバランスを知ること

この3つの要素は、常に把握しておくことをお勧めします。例えば、「体力」はないけれど、「時間」と「お金」はあるのなら、ITスキルを身に付けて、在宅ワークするブランディングをするなど。疲れたら、いつでもソファーに寝転んで体力回復できますから(笑)。

この3要素の棚卸しで自分のゆとりのバランスを知ると、「心のゆとり」が生まれます。これが一番大事なことです。「心のゆとりを持つこと」の大切さは当たり前に皆が知っていることですが、実際にどうしたらいいのか、わかりにくい。実は心のゆとりがない状態が、一番キケンです。

わかりやすいのが「お金」にゆとりがないと、やりたくない仕事でも断れなくなってしまう。ゆとりがないと、そういう判断ミスがおきやすいんですね。

「疲れてはいないけれど、心のゆとりがないな」という時は、時間に追われているときなど、好きなことをやる自分の時間が使えていないことが多い。そうすると一見、仕事上はうまくいっているようでも、ある時ポキンと心が折れてしまう。だから、セルフブランディングをやる際は、心にゆとりがあることが前提となります。

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セルフブランディングで見返りを求めない

何にゆとりがあるのか、わかったら、自分の中に溜め込まず、そのゆとりで周りの人に何ができるか、考えてみましょう。何かを常に発信していると、自ずとそのリターンが返ってくるようになります。何かを発信することで、周りも発信を返してくれるようになり、楽しい循環が生まれます。

その時に大事なのが、見返りを求めないこと。ギブ・アンド・テイクを前提にする考え方も否定はしませんが、他者に貢献するっていう思いに、自分へのリターンありきの考えが混ざると、ギブの質が下がってしまうことが多いからです。

自分が周囲にギブできるものは何か。それを考える時、さっきの3要素を思い出してください。自分にゆとりがあるものは何か。リターンを考えず、自分にゆとりがあることで、他者に貢献する。そうやってギブしていくことで生まれる好循環を味わうと、その楽しさが癖になってやめられなくなります。

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澤さんのセルフブランディングとは?

僕の場合は、好奇心のあることに馬鹿正直に、自分が諦めたくないこと負けたくないことに愚直に、ひたすら「時間」を使いました。若い頃は「お金」はないけど、「時間」はありましたから。

「体力」については、30代の前半に、狂ったように空手にはまりまして(笑)。土日まで道場に出かけて、そのおかげでついた「体力」で、今もなんとかやれています。だから、「時間」少しの「お金」で「体力」を作っていった感じですね。

エンジニアとしてスタートしましたが、文系出身でテクノロジー音痴だったこともあり、「体力」を元手に、仕事にかけられる「時間」を作っていきました。

「お金」をかけてパソコンを買ったら、他の人の倍以上、時間をかけて取り組みました。得意じゃないから、一般的なエンジニアの30%くらいしかできないんですよ。でも、その30%はしっかり身につけようと思いました。

先程の「ありがとう」の話で言えば、僕はプレゼンテーションやマネジメント、セキュリティの分野で一応、タグがついているわけですが、そこにプラスする「ブランド」として、周りの人たちのおかげで、「あいつは話が面白い」と思ってもらえたんです。

すると、「プレゼン×それを面白く話す人」とか「セキュリティ×それを面白く話す人」という評価を受けるようになりました。僕よりセキュリティに詳しい人はいると思いますが、僕のところにお話をいただけるようになっていて。独立して3年ですけど、営業ってしたことないんですよ。

ただ、その間、何をしたかと言われれば、目の前の仕事を一生懸命やってきただけ。ブランディングするために何かをしたわけではないので、自分のやりたいことで、なおかつ仕事として成立することを必死にやっていくと、セルフブランディングというのは、それで自動的に確立することなんだと思います。

おまけ:自己肯定感を高めるには?

セルフブランディングを考えてみたい。その興味の背景には、自己肯定感を高めたいという思いがある人も多いようです。若いビジネスパーソンが自分に自信を持つのは、なかなか難しいこと。これについても澤さんからヒントを伺いました。

自分の短所は把握しておくこと

視力検査の「C」みたいな形をした「○」が欠けているやつ、ありますよね。あれを「ランドルト環」っていうのですが、ほとんどの部分が○ですよね。「自分なんて」と思っている時というのは、欠けている部分に目がいっている状態だといえます。

だから、欠けている方が目についたら、○の方に目を向けましょうと、アドバイスしています。○の方をいかに大きくできるかが、人生の面白さだと思うからです。

僕自身、挫折もいっぱいしてきたし、コンプレックスだってたくさんあります。だけど、自分の短所は把握しておけばいい。そうすることで、短所じゃない方をどうしたら伸ばせるか、考えることができるじゃないですか。人から「ありがとう」って言われる部分を強化していくと、「自分なんて」はどんどん小さくなっていきますから。

僕の場合、「面白い話をする人」っていうブランディングができているので、自分から探しにいかなくても、周りが面白い話を教えてくれるんです。「澤さん、こんな話知ってる?」って。一度そうやってブランドが強固になると、自然と面白い話が入ってくる。だから、セルフブランディングって、自分の楽しいことがさらに楽しくなる好循環のことだと思っています。

今いる環境で、若いうちは裁量がないから、行動するのは難しいと思っている人も多いかもしれません。でも、それは案外、自分がそう思っているだけかもしれない。とりあえず1歩踏み出すだけで成長していくことって、結構多いんじゃないかと思います。

株式会社圓窓代表取締役 澤 円(さわ まどか)氏

澤円氏立教大学経済学部卒業後、生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。最新のITテクノロジーに関する情報発信の役割を担う。2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター・センター長に就任。業務執行役員を経て、2020年に退社。メディア出演も多く、『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)など著書多数。

取材・文:多賀谷浩子 編集:馬場美由紀
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