<教えて!インボイス>㊥ 課税業者になったら税金の軽減策はある?使える補助金は?

2023年9月27日 06時00分
 10月から始まる消費税のインボイス(適格請求書)制度では、一部の事業者には納税や事務処理で新たな負担が生じます。負担軽減策についてまとめました。

◆控除ができなくなり税負担は増…

 Q 税の負担増にはどんなものがありますか。
 A 企業Aが10月以降、インボイスを発行できない免税事業者Bから製品を仕入れた場合、Aは支払った消費税の全額を、間接的に納める消費税から差し引くこと(控除)ができなくなるので、税負担が増えます。そのため、AがBにインボイスを発行できるよう課税事業者に転換を求める可能性もあります。
 Q 企業が免税事業者に支払った消費税は一切、控除できないのですか。
 A 課税事業者がインボイスを発行できない免税事業者と取引をしても、最初の3年間(2026年9月まで)は、ほかの取引で受け取った消費税から、免税事業者に支払った消費税額の8割分を控除できます。次の3年間(29年9月まで)も優遇は減りますが、5割分の控除は可能です。1万円未満の取引については6年間は、事務負担軽減のためインボイスは不要という特例もあります。ただし、これらの負担軽減策は29年9月までの時限措置で、事業者らの不安が完全になくなるものではありません。

◆「2割特例」に「簡易課税」も利用可能

 Q 課税事業者に変わることでどんな軽減策を受けられますか。
 A 課税事業者になると消費税の全額納付をいきなり求められるわけではありません。売り上げで得た税額の2割だけを納めればよいという「2割特例」を使えます。ただ、この特例も制度開始から3年間のみです。売り上げの税額から差し引く仕入れ税額の計算が大変な場合は、「製造業は70%」のように一定の割合(みなし仕入れ率)を使って納税額を少なくできる「簡易課税」という仕組みも利用できます。
 Q 税以外での対策はありますか。
 A 10月1日が迫るに連れ、税理士の温井徳子さんは「制度に加え会計ソフトやレジ対応の相談も増えている」と話します。企業などが必要なシステム変更を効率的に行えるよう、免税事業者が課税事業者に転換した場合には国からの補助金を受けられます。中小企業庁のIT導入補助金では、インボイス対応として会計ソフトを導入した場合も支給対象となりました。また、中小企業などの販路拡大などで支給される同庁の「持続化補助金」では、税理士への相談費用などに補助金が50万円上乗せされます。

 課税事業者と免税事業者 インボイス制度の開始後、消費税の納税義務があるのは「課税事業者」だ。年間の売り上げが1000万円以下の企業やフリーランスは「免税事業者」としてこれまで通り、消費税を納税する必要がない。免税事業者が課税事業者に転換するかどうかは任意だ。財務省によると8月末時点で、課税事業者約300万者の約95%に当たる約285万者、企業と取引をする免税事業者160万者のうち64%の103万者程度が課税事業者に変わり、インボイスの登録申請を終えている。

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