<教えて!インボイス>㊦ 取引先から価格見直し・取引停止の可能性 公取委が監視、問題あれば相談を

2023年9月28日 06時00分
 インボイス(適格請求書)の制度開始後に最も影響を受けると言われているのが、年間の売り上げが1000万円以下の免税事業者や個人事業主らです。影響についてまとめました。
 Q 個人事業主らの不安は何ですか。
 A 「消費税を支払えば減収、支払わなければ取引を打ち切られるリスクがある」。インボイス制度を考えるフリーランスの会発起人の小泉なつみさんは、制度の問題を指摘し、中止・延期を求めています。
 免税事業者が課税事業者への変更を選ぶと、取引で受け取った消費税を納税しなければならず負担は増えます。一方、免税事業者のままでいることも可能ですが、インボイスを発行できないので、取引先の税負担が増えます。取引の見直しを迫られる不安があるため、小泉さんは「どちらを選んでも地獄の選択」といいます。
 Q 取引見直しは本当に起こるのですか。
 A 東京商工リサーチが8月に行った調査では、インボイス開始後の免税事業者との取引について「取引価格を引き下げる」や「取引しない」と回答した企業は11.7%に上りました。見直しがないとは言えない数字です。
 Q 取引見直しへの対応策はありますか?
 A 免税事業者が課税事業者への転換を取引先から強要されたり、一方的な値下げや取引停止を求められたりすることは、独占禁止法や下請法違反になる可能性があります。公正取引委員会(公取)は、免税事業者のままの葉タバコ農家に一方的に取引価格の引き下げを通告していたとして、日本たばこ産業(JT)を注意。独禁法に違反する恐れのある事例がほかにも確認され、7月末までに注意を受けた事業者は計18に上りました。公取は監視を強めており、問題が生じたら相談するのも手です。
 Q 取引先からの配慮はないのですか。
 A 住宅メーカーで構成する住宅生産団体連合会は、免税事業者に対して「消費税の不払いや発注取りやめをしない」などの指針を出しています。また、従来の取引継続を表明する企業もあります。
 Q インボイス反対以外の、個人事業主らによる対策はありますか。
 A フリーランス協会は、取引先の企業に報酬引き上げ交渉「インボイス2%~アクション」を行っています。「2%」とは、免税事業者が課税事業者に変更した際、税軽減策を適用後に必要な納税額である売上高の2%を指しています。報酬が2%以上引き上げられれば、新たな税負担を相殺できるので、同協会は「良い人材と取引するには適正な報酬を支払う必要がある」として取引先に働きかけています。(市川千晴)

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