<教えて!インボイス>㊤ 制度導入で何が変わる? 小規模事業者への影響はどうして?

2023年9月26日 06時00分
 消費税のインボイス(適格請求書)制度が10月に始まります。正確で公平な課税を実現するために導入されますが、一部の事業者には税負担が増えかねないとの懸念があります。制度が複雑で、十分に理解が進んでいるとも言えません。基本的な仕組みや政府の支援策、課題などを3回に分けて紹介します。
 Q インボイス制度とは。
 A 事業者間で取引した商品やサービスごとに消費税の税率や税額を記載した請求書をインボイスといい、売り手が買い手に対して交付します。2019年に始まった軽減税率で消費税が8%と10%の複数税率となり、どちらの税率を適用したか正確に税額を計算できるように採用された仕組みです。同じような制度が欧州など世界各国で定着しています。
 Q 制度の導入で変わる点は。
 A 消費税には商品を売って受け取った税額から、仕入れ時に支払った税額を差し引いて納める「仕入れ税額控除」という仕組みがあります。インボイスを受け取らないと買い手は控除を原則受けられないので、税負担が重くなってしまいます。納税義務のある「課税事業者」約300万の95%が制度への登録申請を済ませています。
 Q 小規模事業者への影響は。
 A 売上高が1000万円以下の零細事業者や個人事業主は、消費税が免除される「免税事業者」になることが可能で、この場合は納税が免除されるためインボイスの発行は認められません。このため控除が受けられず負担が増える買い手側から、免税事業者が取引停止や値下げを迫られる不安が高まっています。
 免税事業者がインボイスを発行するには課税事業者に変わる必要があり、新たに税負担が生じます。その分を販売価格に上乗せして取引できればいいのですが、立場が弱いと値上げを拒否される恐れもあります。適正な価格転嫁が重要です。課税事業者になりうる約160万の免税事業者のうち、6割超が8月末までに登録申請しています。
 Q ほかに制度の効果は。
 A 消費税の創設時は世論の反発が強く、税負担を軽くしようと零細事業者の免税などの特例が設けられました。ただ、免税事業者が受け取った消費税分が国庫に納められず、手元に残ってしまう「益税」の問題も長年指摘されてきました。インボイスの導入はその解消にもつながり、財務省は約2480億円の税収増になると試算しています。(近藤統義)

 消費税 納税者と負担者が異なる間接税の一つ。製造や卸売り、小売りなど各取引段階で事業者が納税し、商品価格に織り込まれた税額を最終的に消費者が負担する。1989年に3%の税率で導入され、現在の10%まで段階的に引き上げられてきた。特定の世代に負担が偏らないなどの利点の一方、所得にかかわらず税率が同じため、所得の低い人ほど負担感が強くなる傾向がある。22年度は23兆円の税収があり、所得税を上回る最大の税目となっている。

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