コロナ下で起業・フリーランスへの道はますます身近になりました。「子育てと仕事のベストバランスを目指したい」「好きなこと・得意なことに特化して働きたい」「新サービスを世に出して、社会に貢献したい」…理由はさまざまだとしても、起業・フリーランスに挑戦してみたいとチラリとでも考えたことがない働く親は、むしろ少数派かもしれません。さらに、「フリーランス同士でチームを組む」「起業した後、会社員に戻る」など、従来のフリーランスや起業のイメージにとらわれない、柔軟な働き方も選択できるように。一方、ハードルが低くなったとはいえ、起業やフリーランスに一定のリスクが存在するのもまた事実です。家族の生活や子どもの教育費など守るべきものが多い共働き親が、起業・フリーランスを目指すとき、どう準備し、どんなマインドを持って挑めばいいのかを探っていきます。

 働く親が会社員から起業したりフリーランスへの転身を考えたりしたとき、そこにはどんなリスクがあるのでしょうか。リスクを最小限にし、「こんなはずじゃなかった」と後悔するのを防ぐためには、どう準備して進めればいいのでしょう。フリーランス協会で理事兼事務局長を務める中山綾子さんに聞きました。

日々、長時間保育園を利用する働き方に疑問があった

 「毎日、保育園に一番乗りして、迎えに行くのは一番最後。そんな働き方に疑問がありました」

 そう話すのは、フリーランス協会の理事兼事務局長を務める中山綾子さん。自身でもイベント企画や飲食店・コワーキングスペースの運営会社を経営するなど、パラレルキャリアを実践中の中山さんですが、2017年まではイベント企画の企業で働く会社員でした。

 「会社員としてイベント企画などを請け負う中で、『こんなイベントをやりたいんだけど』と直接ご相談をいただくことがあったんです。けれども小さいイベントだと、売り上げ規模の関係で会社として請け負うことができなくて。だったら会社員として働きながら、私個人でそういった案件を請け負うことができないだろうかと考えたのが、そもそもの始まりでした」

 まだ今のように副業解禁がなされてない時代、中山さんの会社でも前例がありませんでしたが、社長に掛け合って副業を認めてもらったそう。個人で仕事を請け負ってみると、「会社員じゃない個人の自分でも、クライアントに対して同等の価値を返せる」と実感したそうです。その頃、冒頭で述べたように自身の働き方に疑問を抱いていたこともあり、中山さんはフリーランスとして独立する決断をします。「会社の枠から出てより多くの経験を積んだほうが、結果としてクライアントに多くの価値を返せるようになるだろうとも考えました」

 「企業の副業解禁やフリーランスのためのプラットフォームの充実など、私が独立した頃に比べて、今は格段にフリーランスになりやすくなっています」と中山さん。一方で、準備や見極めが不十分なままフリーランスになってしまうと、「こんなはずじゃなかったのに」と後悔することになりかねないと中山さんは指摘します。

 「『子どもとの時間を大事にしたくて独立したのに、土日に仕事が入ることが多く家族との時間が取れなくなってしまった』『収入が思うように伸びず、子どもの塾をやめさせざるを得ない』『顧客獲得を焦るあまり、友人に無理な営業をして人間関係が破綻してしまった』……そんな話を聞くことは少なくありません」

 逆にリスクを恐れすぎると、フリーランスとしての一歩を踏み出すことができず、不満や不足があっても今の会社員としての働き方をずるずる続けるしかない……という状況になりかねません。リスクの存在はしっかり意識し、備えることが大切。ですが、恐れすぎるのもまたNGということです。

 ここからは、フリーランスとしての一歩の踏み出し方や、フリーランスになってから後悔することのないよう会社員時代にやっておくべきリスクへの備え方などについて、引き続き中山さんに聞いていきます。

見極めが不十分なままフリーランスになることはリスクを伴う
見極めが不十分なままフリーランスになることはリスクを伴う
この記事で読めること
・マトリクスでリスクを可視化。考えるべきは「環境の自由度」と「心理的な自由度」の2軸
・今の働き方の不満は「仕事と生活の調和」? それとも「チャレンジ性のなさ」? 自分軸の見つけ方
・会社員をしながら見込み客を集めると、「会社の敵」と見なされることも