兼業・副業を認める制度を導入する企業が増える中、現場ではどこまで進んでいるのでしょうか。ここでは、パラレルキャリアに詳しいプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の代表理事・平田麻莉さんと、2023年1月から都内の企業で働きつつ、長野県の成長企業で副業を始めた小股美穂さんにお話をうかがいました。

兼業・副業で磨かれる「個」の時代。いま求められるキャリアの自律

<b>平田麻莉(ひらた・まり)</b>さん<br> プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事<br> 1982年生まれ、福岡県出身。慶應義塾大学卒業後、創業間もないPR会社ビルコムで50社以上の広報活動に携わる。退社後、同大学大学院を経てフリーランスのPRプランナーに。17年にプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会を設立。フリーランスに関する実態調査や啓発・支援活動などを行う。政府検討会の委員・有識者経験多数。目指すのは、「誰もが自律的なキャリアを築ける社会」
平田麻莉(ひらた・まり)さん
プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事
1982年生まれ、福岡県出身。慶應義塾大学卒業後、創業間もないPR会社ビルコムで50社以上の広報活動に携わる。退社後、同大学大学院を経てフリーランスのPRプランナーに。17年にプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会を設立。フリーランスに関する実態調査や啓発・支援活動などを行う。政府検討会の委員・有識者経験多数。目指すのは、「誰もが自律的なキャリアを築ける社会」

「兼業や副業を考えているのであれば、一刻も早くスタートさせることをお勧めします」

 こう語る平田麻莉さんは、自身もフリーランスのPRプランナーとして働き、パラレルワーク事情に精通。「副業元年といわれた18年を経て今、兼業・副業の人口は増えている」と語ります。その背景には、コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)化が急速に進んだことがあるようです。

「コロナ禍でリモートワークのためのインフラが整い、遠方の企業ともオンラインで仕事を進められるようになりました。そうした環境の整備が、都市部の企業で本業をしつつ、地方の成長企業で副業をするといったパラレルワークにつながる大きな後押しになっています」と平田さん。

「さらに、コロナ禍でそれまでと同じようには働けなくなり、経済的な打撃を受けた、多くの働く人のマインドセットが、“1本足打法の働き方ではリスクがある”と変化しました。もともとあった働き方改革への機運も後押しとなり、兼業や副業を推奨する企業は増え、転職志望者も“副業を認めていること”を企業選びで重視するポイントの1つに挙げるほどになりました。

 片や、地方に拠点のあるスタートアップ企業などでは、人材がまだまだ不足している状態。DX化や新規事業開発を推し進めたい企業を筆頭に、立ち上げから軌道に乗せるまでの期間限定で手を借りたいという企業も多数あります」

 しかし、「自分はDXの専門家でもないし、経験はあるものの分かりやすい専門的なスキルがない」という人はどうすればいいのでしょうか。平田さんは、そんな人こそ地方企業での副業にチャンスがあるといいます。

「実は、都市部の大企業においてさまざまな部署で経験を積んできたゼネラリストは、地方で重宝されるんです。例えば、地域の中小企業やスタートアップでは事業開発に取り組んでいても、社長の右腕となるような伴走役が不在であることも多い傾向にあります。その穴を埋めてくれるのが、都市部の大企業で営業、マーケティング、経理、人事などでの経験を積んできたゼネラリストなのです」

「都市部の大企業で働きながら、副業として地域企業で活躍するチャンスは広がっています。せっかくこの副業の波に乗るのであれば、少しでも早いほうがいいと思います」と平田さん
「都市部の大企業で働きながら、副業として地域企業で活躍するチャンスは広がっています。せっかくこの副業の波に乗るのであれば、少しでも早いほうがいいと思います」と平田さん