フリーランスが仕事を獲得して、収入を上げていくにはどうすればよいのでしょうか。さまざまな分野で活躍するフリーランス5人が集まり、そのためのノウハウを語り合いました。日経ムック『 フリーランス&副業で働く!実践ガイド 』(プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会監修)の出版記念イベントの模様をお届けします。今回は前編。司会は、フリーランス協会代表理事の平田麻莉さんです。

さまざまな分野で活躍するフリーランス

平田麻莉さん(プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事)(以下、平田) 今日は日経ムック『フリーランス&副業で働く!実践ガイド』にも登場されている、本当に行列の絶えないほど活躍されているフリーランスのみなさんにお話を伺いたいと思います。

宮本恵理子さん(ライター・インタビュアー・編集者)(以下、宮本) 私は普段はインタビュアー、ライター、ときどき本の編集もしています。もともとは日経ホーム出版社(現・日経BP)で雑誌記者をしていて、2009年に独立してフリーランスになりました。いろんなお仕事をいただくなかで、「人に話を聞いて書く」という、シンプルながら奧深い営みに面白さを感じています。ご縁をいただくうちに本を執筆したり、スタートアップの創業にも参加したり、自分の領域を狭めずにいろんなことに関わってきました。今は活動が広がり、ちょっと一言では言い表せない状況になっています。

宮本恵理子さん(ライター・インタビュアー・編集者) 働き方、生き方、夫婦・家族関係などをテーマに人物インタビューを中心に執筆。編集者として、書籍、雑誌なども制作する。2021年からは、ビジネス映像メディア「PIVOT」のエグゼクティブ・ライターとしても活動。主な著書に『行列のできるインタビュアーの聞く技術』
宮本恵理子さん(ライター・インタビュアー・編集者) 働き方、生き方、夫婦・家族関係などをテーマに人物インタビューを中心に執筆。編集者として、書籍、雑誌なども制作する。2021年からは、ビジネス映像メディア「PIVOT」のエグゼクティブ・ライターとしても活動。主な著書に『行列のできるインタビュアーの聞く技術』
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日比谷尚武さん(kipples代表)(以下、日比谷) 僕は学生時代からフリーランスとしてWeb構築などに関わり、最近は広報やマーケティングで、新規事業やNPO(非営利組織)創設の応援をすることが増えています。今までに27回ぐらいジョブチェンジしていて、ビールバーやロックバーもやるなど活動の幅を広げてきました。今はその時々にやりたいこと、応援したいチームに対して、自分の持てる力を出して役に立ちたいと思っています。

日比谷尚武さん(kipples代表) 学生時代より、フリーランスとしてWebサイト構築などに携わり、新卒でNTTグループへ。2003年、KBMJ(現・アピリッツ)に転職。09年よりSansanに参画し、16年に独立。セクターを横断する「コネクタ」として広報、マーケティング、新規事業の支援、コミュニティづくり、官民連携促進を中心に活動する
日比谷尚武さん(kipples代表) 学生時代より、フリーランスとしてWebサイト構築などに携わり、新卒でNTTグループへ。2003年、KBMJ(現・アピリッツ)に転職。09年よりSansanに参画し、16年に独立。セクターを横断する「コネクタ」として広報、マーケティング、新規事業の支援、コミュニティづくり、官民連携促進を中心に活動する
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関口照輝さん(ハイライト代表/コルク人事企画/烏森珈琲店主)(以下、関口) 私は今のメインは人事領域支援で、採用や制度作りのサポート、企業の人事、飲食店運営をしています。私もいろいろとやっていくうちに、何をしているのか理解してもらうのが難しく、自己紹介をするのが面倒になってしまったので(笑)、「喫茶店の店主をやっています」と一番シンプルに伝えていたりします。

関口照輝さん(ハイライト代表/コルク人事企画/烏森珈琲店主) 大学卒業後、ファーストリテイリングに入社。その後リクルート、力の源ホールディングスを経て、2020年にフリーランスの人事コンサルタントとして独立。現在は、ハイライトの代表として人事領域事業、コルクの人事、烏森珈琲の店主を兼務している
関口照輝さん(ハイライト代表/コルク人事企画/烏森珈琲店主) 大学卒業後、ファーストリテイリングに入社。その後リクルート、力の源ホールディングスを経て、2020年にフリーランスの人事コンサルタントとして独立。現在は、ハイライトの代表として人事領域事業、コルクの人事、烏森珈琲の店主を兼務している
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清水久三子さん(AND CREATE代表取締役)(以下、清水) 私はもともと外資系コンサルティング会社に勤め、戦略事業や人材育成部門のリーダーをしていました。10年ぐらい前に独立し、現在はビジネス書の執筆、講演、研修の講師などをしています。

清水久三子さん(AND CREATE代表取締役) 外資系コンサルティング会社で企業変革戦略チームや人材育成部門のリーダーを歴任し、2013年に独立。研修講師や人材育成のコンサルティング、プレゼン指導のほか、フリーランスの値付け交渉のアドバイスを行っている。主な著書に『知識とスキルを最速で稼ぎにつなげる 大人の学び直し』
清水久三子さん(AND CREATE代表取締役) 外資系コンサルティング会社で企業変革戦略チームや人材育成部門のリーダーを歴任し、2013年に独立。研修講師や人材育成のコンサルティング、プレゼン指導のほか、フリーランスの値付け交渉のアドバイスを行っている。主な著書に『知識とスキルを最速で稼ぎにつなげる 大人の学び直し』
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どのように仕事を獲得するか

平田 ありがとうございます。みなさん、幅広くお仕事をされていますが、どういったところから仕事につながるのでしょうか。フリーランスというと、やはり仕事の獲得方法が気になる方が多いですし、収入を安定させるのが難しいイメージもあります。何か戦略があれば、ぜひ教えてください。

日比谷 僕はこの数年間、問い合わせや仕事の依頼を「見込み客管理」として、全部リストにしています。仕事がどこを経由してきたかを見ると、知人が60%、知人の紹介が23%。知人が8割と圧倒的に多いですね。みなさんのように本を書いたり、実績を発信されたりしていると、また違うのでしょうか。

清水 私も知人経由はありますが、私の著書や登場している記事を読んだ方が半分ぐらいです。セミナー会社や研修会社から引き合いがあることも多いですね。飛び込みの依頼はホームページで受け付けるようにしています。

関口 やはり知人やクライアントの紹介が多いのですが、面白いのは「旅経由」。1泊2日ぐらいで同じ釜の飯を食べ、寝食を共にすると、お互いに「ああ、この人はこういう人なんだろうな」と分かります。旅から帰って「ちょっと真面目な話でお茶しませんか」と誘われたりすると、そこからの仕事の展開が速いんです。旅の途中のプライベートな面と、隙間時間にオンラインで社員と話すといったビジネス面の両方を見ると、その人の人柄や大切にしている価値観などが分かるからだと思います。

平田 旅が相互理解につながっていると。

宮本 私も「仕事が仕事を生む」と感じています。インタビューをしたとき、その場では取材相手のA面を聞いたけれども、話が盛り上がってB面がチラッと見えることがあるんです。そしてその人から、「実はB面を発信していきたいんです」という希望があったとき、「では、次はB面を発信する場でご一緒できませんか」とつながっていくことが多いですね。

 やはり人の紹介でつながっていくことが多いので、もし、これからフリーランスで新規開拓する人は、「ここで働きたい!」と思うところに連絡するといいと思います。私も最初に独立したときは、「ここで書きたい!」と思うメディアの問い合わせ先を調べて、「info@×××」のようなアドレスに直メールをしていました。

平田 宮本さんにも、そんな時代が!

宮本 そうなんです。そうしたら、そこでたまたまメールを受け取ってくれたのが、当時「AERA」の副編集長だった浜田敬子さんで、そこからご縁がずっと続いています。自らアクションを起こした人を応援してくれる人は、きっといますよ。

平田 日比谷さんも日頃から、携わっているお仕事や行った場所などをSNS(交流サイト)に投稿して、自分のケイパビリティーの幅を見せていますよね。「こういうことをしました」というCANや「こういうことをやりたい」というWILLを発信し続けるのが大事ですね。

平田麻莉さん(プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事) 大学在学中にビルコムの創業期に参画。広報の戦略・企画・実働を担い、戦略的PR手法の体系化に尽力。現在はフリーランスとして広報や出版プロデュースなどを行う傍ら、2017年にフリーランス協会を設立。政府検討会の委員・有識者経験多数。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」受賞
平田麻莉さん(プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事) 大学在学中にビルコムの創業期に参画。広報の戦略・企画・実働を担い、戦略的PR手法の体系化に尽力。現在はフリーランスとして広報や出版プロデュースなどを行う傍ら、2017年にフリーランス協会を設立。政府検討会の委員・有識者経験多数。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」受賞
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清水 私も研修や講演後に、「実はこういうことも話せます」と明かすパターンが多いですね。前職の外資系コンサルで言われたのは「セールスはするな」ということです。自分が良いアウトプットを出せば、それが最高のセールスマンの役割をしてくれる、「成果のデリバリーが最高のセールスだ」と。良い仕事をすれば次につながるので、一つの仕事が終わったときに少し違う面をお見せすることが多いです。

収入&キャリアのアップを果たすには?

平田 フリーランスが収入アップを目指すとき、どうしても24時間・365日と時間が限られています。どういう方向性で収入を増やしていくのがいいと思いますか?

 立場上たくさんのフリーランスにお会いするのですが、私なりに観察して分析しているフリーランスの収入アップの方向性は3つです。1つは時間単価を上げていくこと。これには付加価値を増やしていくことが大事ですね。2つ目はチームを作り、1人ではさばききれない量の仕事をチームで対応する方法。この場合、自分は上流の企画やディレクション業務にフォーカスして、後輩を育てていくような意味合いもあります。3つ目は本や動画など、独り歩きして勝手に売れていってくれるコンテンツを作ることです。

宮本 私も3年ぐらい前から「インタビュー&ライティング講座『THE INTERVIEW』」を始め、そこに集まってくれた人々で、緩やかなコミュニティーを作っています。チャンスを探している人と、私がチャレンジしたくて手伝ってほしい仕事とがマッチしたときは、プロジェクトごとに一緒に動いています。

日比谷 僕のチームはその広報バージョンですね。売り上げを青天井に伸ばしたいというよりは、助けたいスタートアップやソーシャルセクターがいるのに、時間がなくてお断りしなきゃいけなくなるのが嫌なんですよね。とはいえ、全部自分で打席に立つとつぶれそうになるので、「どうしたら人に頼れるのか」と考えた答えが、「仲間をつくること」でした。ただ売り上げを上げていきたいだけなら、単価を上げる、商材を作る、講座を動画にするという方法のほうが効率的かもしれませんね。

平田 やはり、フリーランスにとって一番勉強になるのは実践ですからね。仲間をつくって多くの案件をこなせるようになる人側のメリットだけではなく、これからステップアップしたい人たちにとっても、チームを組むことで一流の先輩たちと一緒に仕事ができる。みんながハッピーな仕組みかもしれないですね。

関口 単価を上げていくことを意識するだけではなく、時には自分が苦手というか、考えたこともない業界・業種の人に、単価を下げてでも一緒にチャレンジさせてもらうことも重要です。フリーランスや副業をしている人にとって、「好きな人や得意な分野でしか働かない」というのも選択肢の一つですが、そればかりだと「成長速度が遅くなっているな」と不安を感じる時期が来ます。自分のスキルアップのためには、自分の得意ではないところにどれだけ手を伸ばしていくかも考えたほうがいいですね。

イベントでは活躍するフリーランス5人がさまざまなノウハウを明かした
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平田 ストレッチ案件ですね。成長するための自己投資となる仕事は、単価にこだわらず受けていったほうがいいこともありますね。清水さんは本書の中で価格交渉の解説をされていますが、どうですか。

清水 はい。私は自分の稼働を減らしつつ、クライアントの期待に応えるためには動画の存在が大きいです。昔は何台もカメラが必要でしたが、今はZoomの録画だけで講座が1本作れます。ただ、私もやはり対面でお会いしたいので、動画で効率化する部分と、対面で一緒にする部分とを分けたほうがクライアントの期待に応えられると感じています。

平田 なるほど。そこはうまく使い分けというか、目的に応じてというところも大事ですね。

(後編「 フリーランスの仕事相手の選び方、値付けの方法は? 」に続く)

構成・文/三浦香代子 写真/鈴木愛子

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プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会監修/日本経済新聞出版/1430円(税込み)