定年延長が義務化され、継続雇用が努力義務の時代、どのタイミングで新しいことを始めたらいいか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「60歳を間近に会社に残るか辞めるかを決めるのでは遅い。なるべく早く会社にいることのメリット・デメリットを1枚の紙に書き出して状況を把握しておくべきだ」という――。

※本稿は、荻原博子『知らないと大損する老後の「お金」の裏ワザ』(SB新書)の一部を再編集したものです。

手帳に挟んだ退職願と横に置いた社員証と老眼鏡
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20代、30代が簡単に正社員を辞めてしまう理由

今の年金受給者の中には、戦後の高度成長期からバブル期にかけて、日本経済が右肩上がりの中で生きてきた方が多くいらっしゃいます。

入社した時には給料は低かったものの、高度成長の波に乗って給料も右肩上がりに上がり、役職定年などもなかったので高い給料を基準に退職金をもらい、年金ももらっているので、悠々自適な生活を楽しんでいるという方も多いことでしょう。

しかも、まだ地価も安かったので、買ったマイホームが値上がりして資産になったという方もいるかもしれません。

ところが、バブルの頃に就職した今の50代は、バブルがはじけて給料が右肩下がりになっただけでなく、年功序列で上がつかえているのでなかなか出世できない。やっと出世したと思ったら、50歳を過ぎると役職定年の嵐が吹き荒れて給料が下がる。

60歳で定年になると、下がった額を基準に退職金が支給され、60歳から雇用延長を申し込むと、その時点でさらに給料が下がる。そして、下がった給料をベースに年金が支給される。

しかも、まだ地価の高い時に長期のローンを組んでマイホームを購入しているので、人によっては年金生活をしながら、住宅ローンを支払わなくてはならない人もいます。

かなり大変な50代に比べて、その子供たちはどうかといえば、すでに年功序列も終身雇用もない世代で、雇用の流動化も進んでいます。

あまり固定観念に縛られず、正社員で就職しても、辞めて派遣社員として働く、フリーランスで働くという人も多くなっています。

しかも、20代、30代は、インターネットなどのスキルを持っている人が多いので、自分1人食べていくならなんとかなりそうだと思っている人は多い。

また、女性がかなりしっかりと働いていることでダブルインカムになっているので、父親が1人で稼ぐ親世代よりも余裕がある人たちもいます。

ただ、だからといって、親を養うゆとりまではない。内閣府の「高齢者の現状及び今後の動向分析についての調査報告書」(平成22年)では、親への仕送りをしている人は、全体の約1.4%と、かなり少数派でした。