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政府は、組織に雇われずに個人として働くフリーランスの労働環境を整備するため、新たな法律を制定する方針を固めた。仕事の依頼主の企業に対し、業務内容や報酬額を明示するよう義務づけ、立場の弱い個人を保護する狙いがある。秋の臨時国会に法案を提出し、会期内成立を目指す。
政府の試算では、フリーランスとして働く人は462万人(2020年)で就業者全体の約7%にあたる。40歳代以上が7割を占め、情報技術(IT)やデザイン関連、配送、建設など業種も多岐にわたる。
新法では依頼主の企業などに対し、仕事を募集する際に報酬額や仕事の内容、納期などを明示し、契約の書面や電子データの交付を義務づける。口約束で仕事を発注し、後から一方的な仕事内容の変更をされないようにする。
契約後に業務を途中で解除するか契約を更新しない場合は、30日前までに予告する義務規定もつくる。フリーランス側に落ち度がないのに報酬を減額したり、納めた商品の受け取りを拒否したりすることも禁じる。違反した場合、公正取引委員会などが調査や勧告を行い、必要に応じて報告命令や立ち入り検査を行う。
フリーランスは働き方の多様化とともに人気が高まる一方、個人としての立場の弱さから、依頼主から不利な契約変更をされても泣き寝入りせざるを得ないケースが少なくない。内閣官房が20年に行った実態調査では、フリーランスの4割が「取引先とのトラブルを経験したことがある」と答えた。
現行でも企業側が資本金1000万円超の場合は下請法の対象になり、フリーランスを含む下請け業者への書面交付の義務などはある。だが、フリーランスに業務委託する企業は4割が資本金1000万円以下で同法の対象外だ。政府は保護の網を広げるため、新法を整備することにした。