立場が弱いフリーランス 新法で救うことはできるのか

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フリーライターの女性に出版社から送られてきた原稿料の支払通知書。支払額が単価の8割に減らされていた=2019年6月13日午後2時23分、小川祐希撮影
フリーライターの女性に出版社から送られてきた原稿料の支払通知書。支払額が単価の8割に減らされていた=2019年6月13日午後2時23分、小川祐希撮影

 組織に属さず働くフリーランスを守る「フリーランス保護新法」。政府は昨年の臨時国会での法案提出を目指していたが見送った。岸田文雄首相の肝いりで「新しい資本主義」とも関連が深いものだったが、自民党内の審議で「もっと時間をかけるべきだ」などの声が出たためだ。フリーランスで働く人は現在、どのような立場に置かれ、どのような困難があるのだろうか。法案が目指していたものを改めて考えた。

4割のフリーランスは泣き寝入り

 「著作権は放棄してください――」

 大阪市に住む40代の漫画家の女性は2021年5月、口約束で仕事の依頼を受けた企業から、イラストの著作権を放棄するよう強要された。「企業から、費用も払わずに著作権を譲渡するよう高圧的に求められた」と振り返る。

 その後、女性は企業の担当者と協議したが難航し、知り合いの助けを借りて何とか解決した。

 女性の場合、契約を取り交わしていたが、書面ではなく口約束だった。「周囲にも口約束で仕事の契約をする人が多い。いざ書面での契約を求めるとなると、事業者側も及び腰になってしまうケースが多く、こちらから契約書を交わしてほしいと求めることは難しい」と漏らす。

 このような例は特別ではない。

 内閣官房による推計では「フリーランス」で仕事をする人は462万人(20年時点)に達した。近年は、時間や場所にとらわれない自由な働き方が可能になったことや、業務委託型の人材紹介サービスの浸透もあり、職種は講師やデザイナー、配送などに広がっている。

 その一方、政府がフリーランスを対象に21年に実施した調査によると「取引条件や業務内容が書面やメールなどで十分に示されていない。または全く示されていない」との回答が4割以上だった。直近3年間の取引で「依頼者から納得できない行為を受けた経験がある」との回答は39・2%に上っている。

 フリーランスで働く人を支援する「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」が18年12月~19年1月に実施したアンケートによると、回答者の約7割が報酬未払いを経験していた。契約条件を記した文書がないことや、高額な弁護士費用などを理由に、トラブルを抱えても約4割のフリーランスは泣き寝入りをしていたという。

新法の内容は?

 政府が今回、フリーランス新法を策定しようと考えたのもこのような問題意識からだ。岸田首相は22年10月、有識者でつくる「新しい資本主義実現会議」のなかで、「フリーランスの方が報酬の支払い遅延などでトラブルに直面しないよう、取引適正化のための法案を今国会に…

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